相貌失認と発達障害の関わりは?

自閉症スペクトラムがある人の中には、顔を認識することが難しい人がいます。自閉症スペクトラム以外にも、ウィリアムズ症候群やターナー症候群などの疾患がある人々にも相貌失認のような症状が現れることがあります。

しかし、発達障害のある人すべてが顔認識に困難を抱えているわけではありませんし、相貌失認の人が必ず発達障害であるということでもありません。

自閉症スペクトラムと相貌失認には、顔を認識する際に細かいパーツは認識できるが、全体として見ることができない傾向があるという共通点があります。

私たちの目や鼻、あるいは輪郭などは一つだけ取り出して見れば、個人差はあまりありません。そのため、顔を認識するときには細かい部分を見るのではなく、顔を構成しているパーツの組み合わせを見ることになります。おそらく、目だけを見て、それが誰かを認識することは、ほとんどの人にとって不可能だと思います。

顔認識に困難がある人であっても、顔を見た時には、目があり、鼻や口があるということから、今見ているものが顔であることを理解できます。しかし、その顔が誰の顔なのか認識する時に、目や鼻などの細かい部分に注目しすぎてしまい、全体の組み合わせから判断することができないのです。

このように、相貌失認と自閉症スペクトラムには共通した特徴も見られます。現在、相貌失認と発達障害になぜ関連が見られるのかについては、諸説ありますがいまだに解明されていません。
自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?
熊谷高幸 (著)
新曜社
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参考:Information About Prosopagnosia|Prosopagnosia Research at Bournemouth University
https://prosopagnosiaresearch.org/index/information
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相貌失認かどうか調べる方法

相貌失認なのか、単に人の顔を覚えるのが苦手なのかを確かめるにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、相貌失認かどうか確かめるために使われる相貌認知課題について紹介します。

相貌認知課題は、大きく分けると次の3種類の項目を調べるものになります。
・見たことある人の顔を覚えられているか
・見たことない人の顔を区別できるか
・顔から性別や年令を推測することができるか

それぞれもう少し詳しく見ていきます。

見たことある人の顔を覚えられているか

見たことのある人の顔を覚えられているか確かめる課題では、誰でも知っているような有名人や家族の写真を用いて行われます。有名人や家族の写真を見せて、その人が誰か答えてもらう中で、その正答率や思い出すまでにかかった時間を測ります。

この課題では、写真に写っている人の名前を答えてもらうことが多いですが、名前を思い出せなくても、それが誰なのか分かっていれば正解したとみなします。例えば、イチロー選手の写真を見て、名前がでてこなくても、「野球選手で、いまメジャーで活躍していて…」と答えることができれば顔を覚えているとみなされます。

見たことない人の顔を区別できるか

この課題では、2枚の写真を見せて、それが同じ人であるかどうか答えてもらったり、見本の写真と同一人物の写真を6枚の写真から選択してもらったりして行われます。

この課題でも、正答率や答えるまでにかかった時間などを測ります。

顔から性別や年齢を推測できるか

2枚の写真を見せて、どちらが男性か答えてもらったり、どちらのほうが若いか答えてもらったりすることで、正しく推測できているか確かめます。
参考:近藤実知「後天性および先天性相貌失認 症例検討をふまえて」
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027748316-00

相貌失認の対処法

私たちは目の前にいる人が、誰なのか認知するとき、顔の情報のみで判断しているわけではありません。例えば、特徴的な髪型、声や話し方、歩き方あるいは服装なども参考にしながら、記憶と照らし合わせています。

相貌失認の人の場合は、相手のことを顔から判断することは困難ですが、顔以外の情報から判断することができます。生まれつき相貌失認であると、独自の工夫をして、社会生活をそれほど支障なく過ごしている場合もあります。

現在、残念ながら相貌失認を根本的に治療する方法は見つかっていません。相貌失認を抱えながら生活していくには、顔以外の情報にできるだけ注意して相手が誰か判断しなければいけません。

相貌失認によるトラブルを減らすために、自分が相貌失認であることを周囲に明言しておく方法もあります。

例えば、『レナードの朝』などの著作で知られる神経科医オリヴァー・サックスも相貌失認であることを告白しています。

サックスの助手は、サックスのもとを訪れる人に対して次のように伝えていたそうです。
「あなたのことを覚えているかどうか、先生に訊かないでください。覚えてないって言いますから。お名前を名乗って、自分が誰かを先生に教えてあげてください」
出典:『心の視力ー脳神経科医と失われた知覚の世界』p104
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4152092556
また、サックスにもこのように言っていたそうです。
「ただ覚えていないと言うのはだめですよ――失礼ですし、人は気を悪くします。『申し訳ありませんが、私は人の顔をちっとも覚えられないんです。自分の母親の顔さえわからないんですよ』って言ってください」
出典:『心の視力―脳神経科医と失われた知覚の世界』p104
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4152092556
相貌失認でありながら、なんとか工夫してトラブルを起こすことなく生活し続けることは難しいことです。また仮に生活できたとしても、常に過度に気を張っていなければいけないため本人の負担がどうしても大きくなってしまいがちです。

相貌失認で困っている人は、周囲に正しく理解してもらえるように、相貌失認であることを周りの人に伝えるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。
心の視力―脳神経科医と失われた知覚の世界
オリヴァー・サックス (著), 大田 直子 (翻訳)
早川書房
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