ADHD(注意欠如多動症)の治療薬にはどんな種類があるの?それぞれの用法・用量や副作用は?【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
Sponsored
シミックヘルスケア - 電子お薬手帳harmo
ADHD(注意欠如多動症)の治療薬にはどんな種類があるの?それぞれの用法・用量や副作用は?【医師監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)の治療薬はメチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)の4種類が使用できます。リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)以外は成人の使用も承認されています。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果の持続時間や副作用などが異なっており、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使い分けられます。

監修者岡田俊のアイコン
監修: 岡田俊
奈良県立医科大学精神医学講座教授
博士(医学)
特別支援学校学校医
知的障害者施設非常勤医師
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、トゥレット症などの発達障害(神経発達症)および、その併存症に対する医療、その他の多角的支援にかかわっている。
目次

ADHD治療における薬物療法の目的

ADHD(注意欠如多動症)は、発達水準からみて不相応な多動性-衝動性、不注意のいずれか、あるいは、両方がみられる発達障害です。12歳以前から、学校、家庭、職場などの複数の場面で症状がみられる場合に診断されます。具体的には、落ち着きがない、待てない、ちょっかいをだしてしまう、注意が持続しにくい、ミスが多い、やっかいなことは先延ばしにしてしまうなどがあります。

年齢とともに多動性—衝動性は軽減することが多いですが、感情のコントロールの難しさやリスクを伴う行動が避けられない、などの困りごとが現れる場合があります。不注意症状は比較的長きにわたって持続するといわれています。困りごとの例としては、優先順位を踏まえた計画的な行動や、課題の管理ができない、などがあります。

成人になっても、ADHD(注意欠如多動症)の症状が持続する患者はかつて考えられていたよりも多いと考えられています。ADHD(注意欠如多動症)の治療薬は、ADHD(注意欠如多動症)の中核症状を軽減させる薬剤ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。それぞれの薬剤を見ていきましょう。

メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)

メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)とは

メチルフェニデート徐放錠は、ADHD(注意欠如多動症)の治療薬の一つで”コンサータ®”という薬剤名で処方されます。徐放剤とは、成分が錠剤からゆっくりと放出されるよう製剤設計されている薬のことで、メチルフェニデート徐放錠の場合、効果はおよそ12時間続きます。

メチルフェニデート塩酸塩は、脳の中のドパミントランスポーターやノルアドレナリントランスポーターを阻害することで、前頭前野のドパミンやノルアドレナリンの濃度を高めて前頭前野の働きを高めたり、側坐核のドパミン濃度を高めて報酬系の機能の改善をはかることで、ADHD(注意欠如多動症)の多動ー衝動性、不注意の症状を改善する効果があります。

ADHD(注意欠如多動症)の治療薬の中では中枢刺激薬という分類に入り、脳の報酬系を刺激します。報酬系は動機付けを高め、ADHD(注意欠如多動症)の症状を改善しますが、同時に報酬系を刺激することは薬剤そのもののもつ依存リスクと関連します。そのため、流通規制が敷かれており、処方できる医師、処方できる薬局が限定されています。しかし、メチルフェニデート塩酸塩の速放錠(成分が早く放出されるように設計されている製剤)であるリタリン(ナルコレプシーのみに処方可能)と比べると、血中濃度の変化が緩やかであったり、製剤設計上も乱用のリスクが低減されているなど、依存リスクは最小化されています。
ADHD(注意欠如多動症)のある人に処方される薬コンサータの効果や副作用、コンサータとストラテラ違いも解説【精神科医監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)のある人に処方される薬コンサータの効果や副作用、コンサータとストラテラ違いも解説【精神科医監修】

用法・用量

メチルフェニデート徐放錠は1日1回、朝に飲む薬です。服用時間が遅くなると夜眠れなくなってしまうことがあるため、午後には服用しません。

子どもも大人も少量から服用をはじめ、その人の適量となるように必要に応じて増量していきます。体重1kgあたりおよそ1mg/日程度が至適用量(最適な用量)とされますが、個人差もみられます。いずれにせよ小児は54mg/日、成人は72mg/日を超えて服用することができません。

副作用

頭痛、腹痛、食欲低下、体重減少などがみられます。いちばん問題になるのは、食欲低下で、いままで給食をおかわりしていた子が給食を残したりすることがあります。

食欲が低下する場合には、飲む前の朝食をきちんと食べるという対応や、薬が切れた時間帯に食欲が回復することを踏まえて夕食や補助食品で補うなどの方法もあります。懸念があるのは、依存性と成長に与える影響でしょう。

依存性については、報酬系の機能が低いADHD(注意欠如多動症)の子どもでは依存形成のリスクは低いですが、報酬系の機能が正常なADHD(注意欠如多動症)でない子どもの場合にはリスクが高まります。そのため、まず診断が正確に行われることが大切です。また、医師の処方通りに服用することが重要です。

成長への影響はわずかであると考えられています。しかし、体重減少が見られたり、薬剤開始後に身長の伸びが著しく鈍化したりする場合は、対処が必要になります。

アトモキセチン(ストラテラ®)

アトモキセチンとは?

アトモキセチンは、選択的なノルアドレナリントランスポーターの阻害薬であり、前頭前野のノルアドレナリン、ドパミンの濃度を高めることで前頭前野の機能を高めます。前頭前野は、行動の抑制や計画的な行動の組み立てに関わる脳の部位であり、この部位の機能の改善によって不注意、多動性、衝動性が改善すると考えられています。販売名はストラテラ®です。

アトモキセチンは報酬系に作用せず、非中枢刺激薬に分類されています。また、流通規制はありません。
ADHD(注意欠如多動症)のある人に処方される薬ストラテラ、そのストラテラの効果・副作用について詳しく解説しますのタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)のある人に処方される薬ストラテラ、そのストラテラの効果・副作用について詳しく解説します

用法・用量

アトモキセチンはカプセル製剤ですが、カプセルを開けると薬剤は苦みがあり、また目を刺激するので、カプセルを開けてはいけません。そのかわり液剤があり、カプセルを服用できない子どもの選択肢となっています。

18歳未満と18歳以上で服用回数が異なります。18歳未満は体重に基づき決定した量を1日2回に分けて飲み、18歳以上は体重に関係なく決められた用量を1日1回もしくは2回に分けて服用します。

アトモキセチンの効果は1ヶ月を過ぎ、6週間から8週間というゆっくりとした時間経過の中で見えてきます。また、効果は終日にわたって認められます。これらの点が効果が比較的早く見えるメチルフェニデート徐放錠との違いです。

副作用

食欲の低下、吐き気や腹痛などの消化器系の副作用が見られます。特に投与初期に生じやすいため、この時期は食事の直後に服用することが勧められます。

ノルアドレナリンの働きを高めるため、心拍数や血圧を高めます。この度合いは、多くは生理的な変動(時間や季節、運動などによる変動)の範囲に収まるとされていますが個人差も考えられるため、心拍数や血圧の上昇が著しければ、医師と対応について相談した方がよいでしょう。重篤な心血管障害のある患者は禁忌(使用してはいけない)となっていますので、注意が必要です。

グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)

グアンファシン徐放錠とは?

グアンファシン徐放錠は、インチュニブ®という販売名のADHD(注意欠如多動症)の治療薬です。徐放剤とは、成分が徐々に溶け出すように製剤設計された製剤で、インチュニブの場合は効果が半日間持続します。グアンファシンは、昔は血圧を下げる薬として使用されていたこともありますが、もっと切れ味よく血圧を低下させる薬剤が発売されるなかで血圧の薬としては姿を消しました。その薬剤が徐放性製剤となってADHD(注意欠如多動症)の治療薬として登場したわけです。

この薬剤は、前頭前野のノルアドレナリンα2A受容体という部位を刺激することで、脳内の情報を伝達するシグナル伝達を増強すると考えられています。
ADHD(注意欠如多動症)の治療薬インチュニブ(グアンファシン)の効果や副作用は?ストラテラ、コンサータとの違いも解説【精神科医監修】のタイトル画像

ADHD(注意欠如多動症)の治療薬インチュニブ(グアンファシン)の効果や副作用は?ストラテラ、コンサータとの違いも解説【精神科医監修】

用法・用量

インチュニブは1日1回服用する薬です。体重ごとの用量が添付文書上で定められており、飲み初めの量、維持期間中の量、最大限の量もその通りにする必要があります。ゆっくりと時間をかけて増量することが副作用による治療からの脱落を防ぐ上で重要です。

非中枢刺激薬に属します。また、流通規制はありません。

副作用

鎮静や血圧低下です。低血圧の影響は、朝起きにくい、頭痛、立ちくらみがする、激しく動いた後に倦怠感が出現するなど、さまざまな表現をとることがあります。ゆっくりと用量を増やすこと。投与後の心拍数、血圧の変化を比較できるように投与前の心拍数、血圧を測定しておき、その後の経過を見ていくのがよいでしょう。投与前の心拍数や血圧が低い場合(徐脈や低血圧)、その他の心血管系の病気(不整脈など)がある場合には、この薬剤の使用について慎重になる必要があります。

まとめ

ADHD(注意欠如多動症)の治療薬は、不注意、多動性−衝動性といった症状を改善することができます。お薬を上手に活用すれば、日常生活の困難が軽減し、さまざまな生活のスキルも獲得しやすくなります。

薬はそれぞれ効き方や副作用の現れ方に違いがあるので、本人の症状や困っている状況などに基づき、その人に最もあった薬物療法が選択されます。服薬回数や服薬のタイミングが生活にあわなかったり、錠剤が飲めないといった場合には、薬剤を変更したり、剤型(錠、粉、液剤など)を変更することもできるかもしれません。

そのために、普段から症状を観察し、薬を飲んだ時の効果や副作用の出方について医師と相談し、自分に合った薬とその服薬の仕方を見つけましょう。
子どもの癇癪(かんしゃく)とは?癇癪の原因や発達障害との関連は?癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめ【専門家監修】のタイトル画像

子どもの癇癪(かんしゃく)とは?癇癪の原因や発達障害との関連は?癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめ【専門家監修】

大人の癇癪(かんしゃく)とは?発達障害との関連は?【専門家監修】のタイトル画像

大人の癇癪(かんしゃく)とは?発達障害との関連は?【専門家監修】


追加する



年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。