お薬ってそもそも何?発達障害の薬物療法で気になる効果や目的、治療を行う上でのポイントを紹介します!【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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発達障害のある子に薬が処方されることがあります。しかし、薬の名前を聞いても、薬を服用するとどういうことが起こるのかイメージがわきにくいかもしれません。そこで、今回はそもそも薬とは何なのか、薬が効くとはどのような意味なのか、また薬物療法を進めるうえでの考え方のヒントについてもご紹介します。

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監修: 岡田俊
奈良県立医科大学精神医学講座教授
博士(医学)
特別支援学校学校医
知的障害者施設非常勤医師
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、トゥレット症などの発達障害(神経発達症)および、その併存症に対する医療、その他の多角的支援にかかわっている。
目次

薬ってそもそも何だろう?

私たちは、誰もが心や体のバランスを崩すことがあり、そのためにつらい体験をすることがあります。病気やけがを治したり、心や体のバランスを取り戻したりするために「薬」が用いられることがあります。

薬の歴史は古く、紀元前には、草や木の根、一部の動物や鉱物などが薬として使用されてきました。しかし薬は、適切な状態に対して使用されなければ、利益をもたらすことも害をもたらすこともあります。そこで、薬を使うことは、現在の患者さんの病状を正確に診断し、それに対して処方すること、すなわち医学の専門的領域として発展してきたのです。

日本における医薬品とは

現代の日本では、主にヒトや動物の病気の診断・治療・予防に使うものを薬機法という法律で定め、医薬品と呼んでいます

今日の医薬品は、漢方薬のように植物や動物などの生薬により生産されているものもありますが、多くは化学的に合成された薬品です。

製薬会社はさまざまな候補物質を作成し、薬理学的活性や動物実験などによって、その物質が「薬」の候補となり得るかどうかを調べています。そのなかで有効性と安全性の両面で優れていると考えられる物質が、開発候補となります。これは製薬会社が合成した候補の中のほんの一握りの物質であり、慎重な検討のもと、開発候補(治験薬)が選定されるのです。

しかし、実際にヒトで安全であるのか、患者さんで有効であるのかは、明らかではありません。第Ⅰ相試験では、健康人を対象にして治験薬が投与され、その体内での動態や安全性が検証されます。これをクリアした場合に、第Ⅱ相試験が実施されます。この試験では、試験への参加同意の得られた比較的少数の患者さんに対して、治験薬の安全性とともに、投与量と効果の関係が検討されます。第Ⅲ相試験では、第Ⅱ相試験の結果を踏まえ、より大きな規模で有効性と安全性が調べられます。

このとき、仮に患者さん100人に治験薬を使用したところ、80人に有効であったということがあっても、この薬が有効であるかどうかは分かりません。

第Ⅱ相、第Ⅲ試験では、プラセボ、つまり治験薬とみかけは変わらず薬効成分のない薬との有効性と安全性を比較することが普通です。プラセボは有効成分がないのだから効果も副作用もないだろうと考えるでしょう。

しかし、実際にはプラセボでも効果や副作用があるように感じることがあります。人のからだは不思議で、薬と信じて服用すると、その安心感から自然治癒力を引き出すことがあります。このような効果を「プラセボ効果」と言います。

この「プラセボ効果」と「薬の候補の効果」を、医者も患者さんも分からないという条件の下で、有効性と安全性を調べ、プラセボに比べて薬の候補が有意な効果を認め、安全性にも問題が無い場合に薬の候補となるのです。

最終的には、これらの臨床試験の結果を踏まえて、規制当局が薬として承認することになります。

医薬品の分類

このようなステップを経て開発された新薬には特許があります。新しく合成した化学物質には「物質特許」がありますし、その効能・効果には「用途特許」があります。それ以外に、製造方法に与えられる「製法特許」、製剤上の新しい工夫に関する「製剤特許」です。

原則6年間がたつと、物質特許と用途特許は切れて、後発医薬品、つまりジェネリック医薬品の生産が可能になります。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ薬効成分を有しており、服用後の血中濃度の変化が同等であることが求められています。しかし、製法特許や製剤特許は切れていないため、ジェネリック医薬品のメーカーにより製法は様々で、薬効成分以外の成分は異なっている場合もあります。

したがって、先発医薬品とジェネリック医薬品が全く同じ、というのは事実ではないのですが、国全体としては医療費を抑制していくことが急務ですし、ジェネリック医薬品メーカーも、より質が高いジェネリック医薬品の提供や安全性情報の提供などに努めています。また、錠剤を小さくしたり、剤型を変えたり、苦みを軽減して飲み心地を改善するなど、先発医薬品とは異なる付加価値を追求しています。

ドラッグストアなどで一般の人が自分の判断で使用することのできる一般用医薬品もあります。このなかには薬剤師からの指導、文書での情報提供の要否や努力義務によって、第1類、第2類、第3類などの指定があります。

軽い身体不調に対して自分で手当てするというセルフメディケーションも現在推奨されている方法の一つです。しかし、この記事でこれからご紹介する向精神薬は、医療機関でしか処方できない医薬品がほとんどです。

「薬が効く」ってどういうこと?

風邪を引いたら風邪薬を飲む、熱が出たら解熱剤を飲む、というのは、幼い頃から当たり前のようにやってきたことで、何の疑問も持たないでしょう。しかし、風邪薬を飲んだから病気が治ったのでしょうか?実際のメカニズムは、それほど単純ではありません。

初期の風邪には、葛根湯を飲んで体を温めたり、免疫機能を高めたりすることがあります。これは、身体自体に備わっている風邪を治す機能を後押ししているのです。

風邪で病院を受診し、抗生物質を処方されることもあるでしょう。最近では風邪に対してお決まりのように抗生剤を処方されることはなくなってきています。これは風邪の多くがウイルスによるもので、抗生物質は無効であるばかりか、抗生物質の効かない耐性菌を作ったり、腸内の細菌叢のバランスを崩してしまうからです。

しかし、風邪をこじらせた場合には、細菌感染を合併していることが、採血の結果や咽頭ぬぐい液の培養によって確かめられることがあります。このような場合には、細菌を殺す(殺菌)あるいは細菌の増殖を抑える(静菌)ことを目的として抗生物質が処方されることがあります。これは原因療法といってもよいでしょう。

原因療法とは異なり、症状を軽減する目的で薬が処方される場合もあります。それを対症療法といいます。

対症療法というと、なにか原因を踏まえないつけ焼き刃の治療法のように聞こえるかもしれません。しかし、症状を緩和することで、日常生活の質が改善したり、別の治療的アプローチが有効に機能することがあるとしたら、対症療法も一つの治療法というべきでしょう。

総合感冒薬(いわゆるかぜ薬)をみると、頭痛を軽減したり、鼻づまりを治したり、痰を出しやすくする一方、咳を止めたり、熱を下げたりする成分が入っています。これらは、風邪を治すというよりも対症療法として、その間の苦痛を軽減し、食事がとれたり、睡眠がとれることで体力の消耗を抑えることによって、身体の回復を助けようとする薬です。

発達障害における薬の効き方

発達障害に使われる薬は対症療法

発達障害に対して薬物療法はしばしば行われることですが、発達障害自体を完全に治癒させる薬物療法はありません。発達障害における薬物療法は、対症療法であると言えます。

注意欠如・多動症(ADHD)の中核的な症状である多動性—衝動性、不注意に対して、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。また、近々、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用できるようになります。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや副作用のプロフィールが異なっており、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使い分けられます。

薬物療法は、療育的支援と組み合わせると相乗的な効果もある

ADHD症状が軽減すると、全体を見渡して判断したり、順序立てた行動ができるようになったり、感情的になることが少なくなったりしますが、そのような思考や感情表出のパターンが本人にとっては新しい体験であったりします。また、保護者の方にとっても、「この子らしくない」とみえ、戸惑うこともあるでしょう。本当のその子らしさは、ADHDの症状が消えてみるとみえてくるものなのですが、それまでの間は戸惑いの方が大きいものです。

日本では薬にまつわる否定的な表現も多くあります。薬に頼る、薬漬け、薬から卒業する、といった具合です。薬を使うことがネガティブに感じられ、本人や家族の努力不足であるかのような表現に聞こえる方もいるかもしれませんね。このような背景には、精神医学的な問題は、根性で立ち直るべき、といったような精神主義的な考え方があるのかもしれません。

ADHDの治療においても、薬物療法か、薬物療法をしないかといった対比で語られがちです。ですが、これもそのような単純な図式では語れません。

その子が行動上の問題を抱えているとき、望ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためにはどうすればよいか、行動療法の考え方に基づいて最もよい対応を相談することが大切です。また、そのためのスキルを、ペアレント・トレーニングとして学ぶことも可能でしょう。また、学校や家庭で起こった現実的な困りごとについて、現実的な解決や調整を図ることも大切です。

しかし、そのような行動変容を期待するとき、本人の動機付けを高めることも大切ですし、何よりも本人や家族が衝突ばかりを経験しており、疲弊しているようでは効果的な介入を期待できません。

ADHDの子どもは小さな報酬に対して、脳の中の報酬系(快と感じる行動を選択しようとする脳の働き)が活性化されにくいと言われています。つまり、言葉で褒められただけでは行動が動機づけられにくく、食べ物やゲーム、お小遣いのようなわかりやすい報酬にしか反応しない傾向があるのです。しかし、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)を服用すると、小さな報酬に対しても報酬系の活性化が見られるという研究結果が報告されています。

このことは、行動療法を行う場合にも、これまでには動機づけられなかったような小さなフィードバックに対しても、子どもたちが動機づけられる可能性を示しています。薬物療法は行動療法と相乗的に効果をもたらす可能性があるといえます。

また、自閉スペクトラム症(ASD)の易刺激性に対しては、リスペリドン(リスパダール®)やアリピプラゾール(エビリファイ®)といった抗精神病薬が使用されます。易刺激性とは、かんしゃく、人への攻撃的な言動、自傷、気分の変わりやすさとして観察される感情のコントロールの難しさです。

しかし、易刺激性の精神医学的な意味は必ずしも明確ではありません。薬剤は、抑うつ症状や気分の波、衝動性、こだわり、感覚過敏などのさまざまな面で効果を示している可能性があります。他方、易刺激性の背後には、相手の気持ちや社会的文脈を読み取りにくい、見通しを持ちにくい、コミュニケーション障害といった認知特性や対処スキルの乏しさがあります。

薬物療法の実施がその子の社会適応状況を一時的に改善したとしても、そのうえで認知特性に応じた支援やスキル獲得を目指した援助を実施する必要があります

どういう場合に子どもに薬物治療を行うの?

発達障害という診断を受けたからと言って薬物療法を受けなければならないわけではありません。発達障害自体を治癒する薬はなく、薬物療法が唯一の治療的アプローチでもありません。例えば、ADHDは学童期の子どもの3〜7%に認められますが、本邦における18歳未満の子どもにおけるADHD治療薬の年間処方率は0.4%に過ぎません。実際には、多くの子どもが学校や家庭での対応の工夫で対処されているのです。そうすると、どういった子どもの状態であれば薬物療法の対象になるのか、ということが問題になります。
参考:Prevalence, incidence and persistence of ADHD drug use in Japan|Okumura Y, Usami M, Okada T,et al,Epidemiol Psychiatr Sci. 2018 May 28:1-5
https://www.cambridge.org/core/journals/epidemiology-and-psychiatric-sciences/article/prevalence-incidence-and-persistence-of-adhd-drug-use-in-japan/2917DEDD2073689FFB21629A5E0C7B11
子どもが抱えている問題について、さまざまな治療的アプローチを行った上でなおも残存する問題があり、薬物療法を実施することが、その子の問題の解決を促進すると考えられ、かつ、本人や家族がその治療を望む場合に、薬物療法が開始されることになります。

実際に薬物療法を実施し、そのことによって期待される効果が得られるか、効果と副作用のバランスを見て、その治療がポジティブな結果をもたらすと考えられる場合に薬物療法は継続され、その治療が不利益の方が大きいと考えられた場合には、薬物療法は中止されることになります。

薬物療法を継続された場合でも、問題が解決し、薬物療法を継続しなければならない理由がなくなってきたならば、薬物療法を中止することになるでしょう。

「問題行動」の背景に何があるかを見立てることが重要

薬物療法を開始する前に大切なことは、いま困っている問題がどのような背景であるのか、ということを見立てることです。

たとえば、クラスのなかが騒がしく、いつも話し声が聞こえたり、たちあるく人がいる状況では、その子が不注意になってしまうのは当たり前のことです。その子が不注意だからといってADHD治療薬を使用しても十分な効果があるはずはありません。

その状況が、学校や家庭などの複数の場面で発達水準に認められるという診断基準に立ち返り、本当にADHDといえるのかを検討する必要があります。

発語がない自閉スペクトラム症の子どもがかんしゃくを起こしているならば、自分の思いが伝えられない状況で起こっているのか、こだわりが崩される状況の中で起こっているのかなどを確認し、コミュニケーション支援や周囲の対応や環境の作り方を考えることが先で、まず抗精神病薬を使えばいい、ということではありません。

そのような見立てのためには、その状況について、親御さんや周囲の大人と医師が話し合いを行うことが大切ですし、その見立てを共有する中で、薬物療法の是非についても議論されるはずです。

十分な見立てのないまま「問題行動」に対して薬物療法が実施されるとしたら、それはデメリットしかもたらさないでしょうし、漫然とした薬物療法が継続されることとなります。

発達障害の治療に使われる代表的な薬

ADHD治療薬

ADHDの中核症状である多動性—衝動性、不注意を軽減する薬剤として、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。また、近々、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用できるようになります。

それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや副作用の現れ方が異なっています。
参考:メチルフェニデート塩酸塩|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179009G1
参考:アトモキセチン塩酸塩|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179050M1
参考:グアンファシン|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179057G1

抗精神病薬

古くから発達障害に適応を有する薬剤として、ピモジド(オーラップ®)があります。

添付文書によれば「小児の自閉性障害、精神遅滞に伴う下記の症状:動き、情動、意欲、対人関係等にみられる異常行動、睡眠、食事、排泄、言語等にみられる病的症状、常同症等がみられる精神症状」に有効とされており、これだけをみるとあたかも万能薬のようにみえてしまいます。

ですが、当時と現在では適応症の決められ方が異なっており、この薬剤が他の抗精神病薬に比べて広範な効果を特別に示すとは考えられていません。この薬剤は、心電図のQT時間を延長させる作用があり、特に高用量では致死的な不整脈を起こすことがあります。そのため、最近では使用の機会が少なくなっています。

自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に使われる薬には、前述のとおりリスペリドン、アリピプラゾールがあります。使用する用量は低用量から中用量であり、鎮静を期待する量を使用することは好ましくありません。
参考:ピモジド|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179022C1
参考:リスペリドン|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179038C1
参考:アリピプラゾール|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179045F4

抗うつ薬

一般的には、うつ病や強迫症、その他の不安症に対して用いられる薬剤です。自閉スペクトラム症やADHDに抑うつ症状を伴うことがありますし、自閉スペクトラム症に強迫症状や社交不安などの不安症状を伴うこともあります。これらの症状に効果を示す可能性はありますが、逆にいらいらとした気持ちを高めたり、死にたい気持ちが高まることもありますので、注意が必要です。自閉スペクトラム症に伴う強迫症状には、抗精神病薬の方が有効なこともあります。

気分安定薬

気分の波やいらいら、感覚過敏などを伴う場合に使用されることがあります。気分安定薬の多くは抗てんかん薬としても使用されます。

抗不安薬や睡眠薬

一般的に使用されるベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬は、脱抑制といって、興奮を強めたりすることがあるので、特に小児では避けられることが多い薬剤です。自閉スペクトラム症に伴う不眠には、メラトニンの有効性を示す報告が多くあります。メラトニンは覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながすホルモンです。

日本では、メラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム)が使用可能です。ベンゾジアゼピン系でない薬剤では、オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ)が使用可能ですが、小児における有効性と安全性のデータが報告されていません。
参考:ラメルテオン|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1190016F1
参考:スボレキサント|PMDA
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1190023F1

発達障害の子どもへの薬物療法を行う際に気を付けたいこと

子どもにもわかりやすく説明する

治療決定についての考え方は、昔と大きく変わってきました。以前は医師が専門的知識に従って治療方針を決定し、患者はそれに従うものでした。薬物療法についても、医師の指示通りに患者が薬を飲むかというコンプライアンス(服薬遵守)が問題とされてきました。

近年では、医師は専門的知識に基づいて治療決定に必要な情報を提供し、患者がその方針を決定するものに変化し、その方針への積極性もアドヒアランスという言葉で表現されるようになっています。

子どもの場合、法的には保護者が意思決定を行うことになりますが、保護者が決めた意思決定に子どもを従わせるというのは現実的にも不可能なことです。最近では、子どもにおいても自己決定を尊重し、子どもには子どもにわかる範囲の最大限の説明を行い、積極的な同意(アセント)を得ることが求められています。

その子どもがわかる範囲というのは、その子の年齢だけでなく、知的な水準やそのパターンによっても異なってきます。病名や薬剤名を伝えるというよりも、その薬がどのような影響(効果、副作用、日常生活に期待される変化)をもたらし得るのか、実際にどのような薬剤(色、味、剤型など)なのか、いつまで服用するのか、など、わかりやすく説明し、子どもの意思を最大限尊重する必要があります。

副作用のモニタリングをする

副作用のモニタリングも大切です。とはいえ、発達障害の診療に訪れる子どもは、すでに「お注射はされない」「お話だけ」などと説得されていることもありますし、検査が苦手な子も多く、専門医療機関が少ない現状の中で、子どもに嫌われたくないという医療機関側の思いも相まって、本来期待されるよりも少ないモニタリング頻度になっていることが多いでしょう。

それらのモニタリングも含めて治療の枠組みとして説明しておくことが大切かもしれません。一方、モニタリングは採血や心電図など、本人の負担のある検査ばかりではなく、体重、脈拍、血圧、日々の様子など、さまざまな観察で行うべきものもあります。その点についても親御さんと医師で話し合っておく必要があります。

まとめ

発達障害の治療において、薬物療法だけですべてが解決することはありません。解決したい子どもの行動の成り立ちを医師と家族が一緒に見立て、環境調整や行動療法などと組み合わせることが大切です。

いま何のために薬を飲んでいるのか、子どもと保護者、主治医が目的を共有し、その後の効果と副作用を見極めながら、薬物療法を継続していくか否か、意志決定していく必要があります。
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