女の子の発達障害の特徴、特有の悩みへのサポートなどを解説【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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女の子の発達障害は、男の子と比べて特性の偏りによる目立った問題行動が少なく、気づかれにくいという特徴があります。また、女の子は身だしなみのマナー、女の子特有の人間関係、異性との付き合い方など、成長とともに、さまざまな困りごと・生きづらさに直面することが多々あります。この記事では、発達障害の女の子にはどんな特徴があるのか、年齢ごとに紹介するとともに、女の子だからこそ起こる悩みとそのサポート方法を解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

そもそも発達障害とは?

発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。

発達障害はいくつかのカテゴリーに分類されています。この記事では中でも、性別による違いが現れる、女の子ならではの悩みと関連しやすいという観点から、今回はADHD(注意欠陥・多動性障害)、自閉症スペクトラム障害(ASD)について詳しくご説明します。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHD(注意欠如・多動性障害)とは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。
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自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害のことです。そのほか、感覚過敏・鈍麻や、協調運動の不器用さも併存していることがあります。
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DCD(発達性協調運動症)とは?具体的な特徴や対応法/専門家監修

専門書などを見てみると、発達障害の発現率は男性の方が高いという表記が多いため、発達障害は男の子に多いもの、というイメージをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

近年の研究では、実際のところ、発達障害の発現にはっきりとした男女の差は見られないという説があります。ですが、あらわれる症状や特性が男の子より目立たないことがあり、今まで「女の子」の発達障害についてはあまり指摘されてこなかったのではないか、とも言われています。

女の子の発達障害には、特有の特徴があり、生きづらさや悩みを抱えているのではないかと考えられます。この記事では発達障害のある女の子が直面することの多い困りごとと、その対処法をご紹介します。
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女の子の発達障害、その特徴は?

発達障害の種類、そして一人ひとりに現れる症状や特性は異なりますが、今のところ、発達障害の女の子にはこのような傾向があることがわかっています。

特性がはっきりとはあらわれにくい

発達障害の特性は、人によって現れ方や程度が異なります。その中でも女の子の場合、問題行動につながるようなことは少ないため、目立ちにくく、周りも問題意識を抱きにくいことが多くあります。

例えば、ADHDの場合、上記の通り不注意・多動性・衝動性という3つの症状がありますが、ADHDの女の子は特に不注意特性が強いことが多くなります(これを不注意優勢型とも言います)。この不注意特性は、多動・衝動優勢型の子どもに比べて、周りへの影響が小さいこともあり、ADHDであると気づかれにくい傾向があります。

このように、女の子は発達障害だと気づかれず、特性による困りごとを抱えたまま過ごしてしまうことがあります。そのため支援につながりにくいのです。困りごとが解決されず、生きづらさを抱えたまま成長してしまうことが多いと言われています。

特性による悩みから二次障害を発症しやすい

二次障害とは、発達障害の主症状とは異なる症状・状態を引き起こしてしまうことを言います。発達障害の子どもが、適切な治療・サポートを受けられない状態が続いてしまうと、失敗体験を繰り返してしまい、自己肯定感が徐々に低下していってしまいます。そしてそれが、二次障害として現れることがあるのです。

二次障害には、例えば以下のような症状・状態があります。

・気分障害(うつ病など)
・行為障害
・不安障害
・反抗挑戦性障害
・不登校やひきこもり
・アルコールなどの依存症 など


発達障害の女の子の傾向として「特性がはっきりと現れにくい」と紹介したように、二次障害の起こりやすさはこの特性発現の曖昧さによってもたらされていることがあります。

女の子は周囲・そして自分でも「発達障害である」と気づかれにくい。だから「不真面目な子」「自分勝手な子」などと誤解されてしまったり、自分でも「どうして周りの子のようにできないのだろう…」と思い詰めてしまったりすることがあります。そうしたネガティブな誤解・思い込みが重なり、発達障害の女の子は、二次障害の発症に繋がってしまうこともあります。
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女の子ならではの問題に困ってしまう

女の子は、成長に伴ってさまざまな「女の子・女性特有の問題や決まりごと」に直面します。女の子ならではの同性の友人との付き合い、異性との距離の取り方、心身発達への対応、身だしなみなど、女の子には「女の子としてのスキル」を求められることがよくあります。

多くの女の子は、このような女の子ならではの問題への対処法を、同世代の子どもとの集団生活の中で、自然と身につけていきます。そして、自分の周りにいる女の子に対しても、このような対処法を習得していることを前提に、関係を築いていくことが多いです。

ですが、発達障害の女の子は、こういった「女の子としてのスキル」を周りに合わせて習得することに難しさを感じることが少なくありません。集団の中で浮いた存在となってしまったり、「女の子なんだから…」というような抽象的な指摘の意味がわからず、混乱してしまったりします。

例えば、自閉症スペクトラム障害の社会的コミュニケーションの困難という特性は、女の子集団特有の人間関係への苦手意識や、身だしなみへの無関心さにつながりやすいと言えます。
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女の子の発達障害、年齢ごとに直面する問題とは?

発達障害の女の子には成長に応じてどのような兆候や困りごとが現れるのか、発達に応じて紹介していきます。

乳幼児期

一般的に、「自分が男である、女である」という意識が芽生え始めるのは、3~4歳とされています。しかし、乳幼児期では、「女の子かつ発達障害だからこそ、このような困りごとが起こる」ということは少ないようです。自閉症の場合こだわりというよりは感覚の過敏性が見られたり、新しいところが苦手、等の傾向が見られる場合もありますが、男女共通して見られる特徴が現れることがほとんどです。これは、性意識がまだはっきりとはしていないこと、このくらいの年齢では発達障害であると明確にわかるわけではないためです。

一方で、症状や困りごとがわかりにくいことから、言葉や知的な遅れがない場合、気づかれにくいことも多いので、注意が必要です。
参考:日野原 重明/著『脳とこころのプライマリケア4子どもの発達と行動』シナジー/2010年
https://www.amazon.co.jp/dp/4916166280

学童期

小学生くらいになると、より高度な社会性が求められたり、学習時間が長くなったりすることから、発達障害による困り感を強く感じる子どもが多いようです。

また、小学校高学年になると、女の子ならではの人間関係や、それに伴う暗黙のルールなどが増えたり、早い子では第二次性徴が見られたりするため、女の子としての生きづらさも徐々に感じ始める傾向にあります。例えば、以下の困りごとが現れます。

・友達、先生の話を聞かない
・忘れ物が多い
・整理整頓が苦手
・時間や活動の変更への対応ができない
・授業に集中することができない
・話し始めると止まらない
・友達との会話についていけない、周りから敬遠されてしまう
・人の言うことをすぐ信じてしまい、からかいを受けてしまう など
参考:「女性アスリート指導者のためのハンドブック 2.第二次性徴」‐国立スポーツ科学センター
https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_2.pdf

思春期

女の子の思春期は、10~12歳ころから18歳までとされています。この時期は心身ともに子どもから大人に変化していきますが、そうした変化に戸惑いを感じたり、周りからの目を気にしてしまったりします。学童期で生じた困りごとのほかに、思春期ならではのこんな悩みを抱える可能性があります。

・女性下着の着用を嫌がる
(本人の衣服へのこだわり、手先が不器用でブラジャーのホックを留められない、ブラジャーのワイヤーを痛がるなど)
・生理用ナプキンの着用を嫌がる、定期的な交換ができない
・生理痛やPMS(月経前症候群)の影響を強く受ける、不安になってしまう
・異性の前でも生理や下着の話を平気でしてしまう
・女子グループから浮かないように、無理に合わせすぎて疲れてしまう
・周りとの違いに気づき、落ち込んでしまう 
・異性との距離感がうまくとれない など


なお、学童期や思春期で多く挙げた第二次性徴にまつわる悩みや、女の子特有の人間関係についてのサポート方法に関しては、次の章で詳しく解説します。

成人

成人になると、就職や結婚、子育てなど自分自身でさまざまなライフステージを超えていくこととなります。まだ幼い子どもがいる家庭では、子どもが歩んでいく将来に期待しつつも、大きな不安を感じているところも多いかもしれませんね。

人によっては、成人になってこのようなライフイベントを経て、自分の特性の偏りに気づくこともあります。

・家事を段取りよくできない
・片づけができない
・お金や書類の管理が苦手
・子育てがうまくいかず、感情的になってしまうのを止められない
・恋人や結婚相手、またその家族とうまく関係を築けない
・ご近所づきあい、ママ友づきあいが苦手
・仕事でのミスが多く、周りの人から責められてしまう
・何かハマるととことん依存してしまう
(酒、ギャンブル、ショッピング、インターネットなど)
・自分への自信のなさから不幸な恋愛をしてしまう
(金銭を貸してしまうなど) など

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