突発性難聴は完治するの?

2021年の論文には、231例を観察したところ90%が聴力改善に至ったとのデータがあります。聴力改善とは完治以外に、ある程度回復したという状態も含みます。

ただし、以前の聴力まで回復したと答えたのは全体の38.5%、次いで大幅に回復した26.4%、回復した25.1%、変化なしが9.9%という結果でした。
データによると発症してから3 日以内に治療を開始した場合の回復は良好であることが分かります。一方で早期に治療を開始しても、症状にめまいを伴う場合や聴力がなくなっている場合には治療の回復がみられないことがあります。
参考:突発性難聴の治療成績の検討(2021年)
https://doi.org/10.4295/audiology.64.400

治療が遅いと治らないのか

突発性難聴は原因、治療法とも確定されていませんが、できるだけ早く治療を受けることが良いとされています。特に「発症から2週間以内の治療を」という文言は多くの病院で言われています。

ですが、早期に治療を開始すると治りが良いというデータの中には、自然治癒の症例が含まれている可能性もあります。治療が早かったことで症状が改善されたのか、自然治癒によるものかは判別できません。

もちろん治療は早く始めるに越したことはありませんが、発症から時間をおいてしまったからといってもう治らないとあきらめる必要はありません。

また、突発性難聴は一日で治るわけではなく、通常は治療によって徐々に聴力が回復していきます。通院することも見越しておくといいでしょう。
参考:突発性難聴 ―診断・治療の問題点とそれに対する対応―(2010年)
https://doi.org/10.4295/audiology.53.46

完治しなかった場合の後遺症

後遺症には、程度に差はありますが聴力障害や耳鳴りが挙げられます。

高齢であったり難聴の症状が重かったりした場合は回復しにくいと言われます。また、発症して2週間以降に治療を開始した場合も同様です。

補聴器で聞こえをサポート

突発性難聴の治療後に聴力が改善せず、日常生活に不便さがあるなら補聴器を使うという選択肢があります。補聴器を使うことで会話もスムーズになり、仕事や人間関係での不便が緩和されます。

難聴と一口に言っても、聞こえの状態はさまざまです。補聴器も耳穴に収まる小型のものや耳にかけるタイプのものなど、さまざまな種類があります。症状の変化に応じて再調整も必要です。

最近ではインターネットで手軽に買うこともありますが、突発性難聴などの感音難聴では補聴器をつけると音が歪んで聞こえたり不快感を感じることがあるため、結局使えないことも少なくありません。難聴が残って聞きづらいと感じた場合は、まず耳鼻科で聞こえの状態をチェックしましょう。補聴器外来がある病院や補聴器相談医に相談して自分に合った補聴器を試してみるのが良いでしょう。
参考:補聴器相談医名簿 | 一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/certification/index.php?content_id=39

治療と並行して生活習慣の改善も

ストレスや睡眠不足も突発性難聴の原因の一つとされているため、治療と並行して生活習慣も見直してみると良いかもしれません。

具体的には、朝起きたら太陽の光を浴びる、3食バランスよく摂る、適度な運動などリフレッシュ活動を行う、ぬるめのお湯でゆっくり入浴する、寝る前のカフェインやアルコールを控えるなどが挙げられます。

仕事や子育てをしているとすべての項目をすぐに行うのは難しいと思いますが、できることから取り入れていきストレスを減らしていきましょう。

突発性難聴と症状が似ている病気

突発性難聴は突然耳の聞こえに影響が出ると共に、めまいや耳鳴りなどが表れる病気ですが、同じような症状を伴う病気がいくつかあります。

主なものとしては以下の病気が挙げられます。
・メニエール病
・急性低音障害型感音難聴
・聴神経腫瘍

メニエール病

メニエール病は激しいめまいが特徴の難病です。吐き気や冷や汗、頻脈をともなうこともあります。

回転性のめまい、耳鳴り、難聴と、症状が突発性難聴とよく似ているうえ、多くは片耳だけにその症状が見られることも共通しています。

しかし、メニエール病には繰り返し症状が起こるという特徴があり、発症が一回限りの突発性難聴とはこの点で異なっています。

原因は内耳にリンパ液が過剰にたまる「リンパ水腫」によることだと考えられていますが、水腫が発生する原因はまだ解明されていません。過労やストレスがメニエール病を引き起こすともいわれ、その点でも突発性難聴と共通しています。

急性低音障害型感音難聴

急性低音障害型感音難聴は低音の耳鳴り、耳の詰まる感じが特徴的な難聴の一種です。突発性難聴の男女比がほぼ同じであるのに対して、急性低音障害型難聴は圧倒的に女性の患者が多いのも特徴です。

突発性難聴と比べると症状は軽く、再発の可能性もあります。

ストレスや過労で発症しやすくなりますが、原因はメニエール病と同じく内耳の蝸牛部分の水腫です。めまいの有無がメニエール病との大きな違いです。

聴神経腫瘍

内耳から脳へ情報を送る聴神経に腫瘍ができる病気が聴神経腫瘍です。

腫瘍が神経を圧迫することで、難聴、耳鳴り、めまいといった症状が生じます。聴神経のすぐ近くを通る顔面神経を圧迫すると、顔面マヒが起こる場合もあります。

良性の腫瘍で発育のスピードも遅いため、腫瘍が小さければ診断後は経過観察となることもあります。腫瘍が大きくなった場合は耳鼻咽喉科で摘出手術をしたり脳神経外科で開頭手術をします。

まとめ

突発性難聴は、ある日突然発症します。少し聞こえないくらいだと病院を受診せず、そのまま放置してしまう人もいるかもしれません。

ですが、早めに治療をすることで症状が改善する可能性が高まります。聴覚に違和感がある場合や、めまいや耳鳴りなど気になる症状がある場合は早めに耳鼻咽喉科を受診することが大事です。

突発性難聴は原因がはっきりとしていませんが、ストレスがその一因になることも指摘されています。そのため、治療と並行してバランスの良い食生活と十分な睡眠時間を心がけ、生活習慣を見直してストレスを減らしていく取り組みも行っていきましょう。
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