観察して描くことが苦手な自閉症息子。3時間かけたアサガオの絵に、息子の世界を感じて

ライター:まゆん
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太郎は小学6年生。自閉症スペクトラムがあり、特別支援学級(情緒クラス)に在籍してます。今回は、小学1年生のときの夏休みの思い出について書きます。

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

小学校1年生夏休みの宿題

アサガオの絵を描く宿題があった
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夏休みに、アサガオの絵を描く宿題があった。ある日、アサガオもきれいに咲いていたため太郎に「アサガオの絵を描こう」と誘った。すると、太郎の顔は一瞬で曇った。

太郎は保育園時代から何かを見て描くことが苦手だった。このときも、スムーズにはいかないだろうなとは感じていた。それでも太郎はアサガオの前に座って観察をしていた。が…
太郎はアサガオの前で苦しみ悶えた
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太郎は「ううう」「うあああああ」「むずかしい」「むずかしい」と言いながら身体を反らせたり、寝転がったりしていた。しかし決してアサガオの前からは逃げようとはしなかった。悶えながらも眉間にしわを寄せ、真剣にアサガオと向き合っていた。
お昼に太郎の様子を覗きに行くと…
お昼に太郎の様子を覗きに行くと…
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細かくくねくねと長く描かれた1本の線
細かくくねくねと長く描かれた1本の線
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太郎にこのくねくねはどこの部分か尋ねると、顔をこわばらせ、答えなかった。答え方がわからないのかと思い、具体的に指を差してこう質問した。
「つる?」と聞く母、太郎は首を横に振った
「つる?」と聞く母、太郎は首を横に振った
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太郎はゆっくりと指差した
太郎はゆっくりと指差した
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アサガオの花びらの縁であった
アサガオの花びらの縁であった
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太郎は、ゆっくりとアサガオの花びらの縁を指さした。私は気づき、そしてハッとした。

「たしかに、そうだ」
私はそのとき初めて知った
私はそのとき初めて知った
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この花びらのくねくねのリアルさを太郎は一生懸命描こうとしていた。「難しい」とうなっていた理由がわかった。

アサガオの花弁はくねくねしていて、それをもっとクローズアップして見てみるとさらにくねくねしていた。太郎はきっとそこまで観察していたに違いない。3時間も…。
太郎は見えている世界が違うことを知った夏の思い出
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あとがき

このほかにも「木を描いてください」という課題で、「難しい」「難しい」と言いながら描いたのは木の根っこというエピソードもあります。全体像をとらえることが苦手で、細かいところに焦点をあてがちな太郎は、私とは全く違った物の見え方をしているのではと感じました。

細かくものを見るため、「難しい」という言葉が出るのはあたり前なのかなと思ってます。しかし全ての絵が苦手ではなく、想像画は得意としてます。想像画では太郎の世界を楽しく、私を魅了させるほどのかわいい絵を描いてくれます。肉眼で見たものを模写することが苦手なようで、スケッチの授業でも先生の手助けを受けながら描いていました。

このアサガオの絵も結局太郎の画力が追いつかないこともあり、私と一緒にシンプルなアサガオを描いて学校には提出することになりました。シンプルなアサガオは、太郎にとってはアサガオに見えていなかったようで「全然違う…」とつぶやいていたのを覚えています。

親子ともども悩みながら、新しい発見ができた夏休みとなりました。

執筆/まゆん
(監修:井上先生より)
アサガオというものを全体像としてとらえるのではなく、花の特徴の細部をとらえることができたのは、研究者のような視点ですね。周りの方は、こうしたとらえ方ができることを否定せずに、その子の強みとして認めてあげることが大事だと思います。一般的なフレームで描かせたい場合は、対象物を写真に撮ってアプリなどで輪郭線がはっきりした絵に加工したものを見せると、描けるようになることが多いです(字が書けるお子さんの場合)。ただ、そうすると個性を活かせなくなってしまうかもしれませんね。
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