ASD(自閉スペクトラム症)は医学的な治療はできるの?療育の原則SPELLも解説ーーマンガで学ぶ自閉スペクトラム症【専門家監修】

ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
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マンガで学ぶ子どものASD(自閉スペクトラム症)。今回はASD(自閉スペクトラム症:Autism Spectrum Disorder)の医学的な治療の話や療育方法などを解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

ASD(自閉スペクトラム症)って医学的な治療はできるの?

現在、ASD(自閉スペクトラム症)の根本的な治療法は開発されていませんが、早期から療育や環境調整を通して接し方を工夫することで、日常生活における本人の困りごとを解消することができます。英国自閉症協会が提唱する、療育に必要な5つの要素「SPELL」をご紹介します。

ASD(自閉スペクトラム症)のある子がのびのびと暮らしていくために

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもがのびのび生活するには周囲の理解と協力が必要です。(監修:鳥取大学教授、専門行動療法士、自閉症支援士エキスパート、公認心理師 井上雅彦先生 )
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ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもがのびのび生活するためには、「肯定・(positive)」や「構造化・(structure)」などが必要です。(監修:鳥取大学教授、専門行動療法士、自閉症支援士エキスパート、公認心理師 井上雅彦先生 )
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ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、「共感・(empathy)」、「低刺激・(low arousal)」、学校、医療、家庭間での「連携・(links)」などの工夫で生活しやすくなります。(監修:鳥取大学教授、専門行動療法士、自閉症支援士エキスパート、公認心理師 井上雅彦先生 )
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ASD(自閉スペクトラム症)そのものを根本的に治療することは困難なため、「こうなれば療育や支援は終わり」という明確な線引きはありません。その子にあった環境設定を行い療育や支援を受けることで、得意分野を伸ばし、特性を生かす力をはぐくむことにつながります。(監修:鳥取大学教授、専門行動療法士、自閉症支援士エキスパート、公認心理師 井上雅彦先生 )
(参照:SPELL(英国自閉症協会)) イラスト/かなしろにゃんこ。
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ASD(自閉スペクトラム症)のある子がのびのび生活するためには、周囲の理解と協力が必要です。
保護者はまず本人の性格や特性をよく理解し、過ごしやすい環境を整えましょう。周囲の人によく伝えることも大切です。

幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、コミュニケーションの困難から、自分の思いをうまく伝えられなかったり、周りから孤立してしまったりすることも考えられます。上手にコミュニケーションをはかるためにも、日頃から自分の思いをどう伝えたらよいかを個々の子どもの発達に合わせて教えていきましょう。

また、こだわりとの付き合い方やパニックになったらどうしたら良いかなど、落ち着いて生活する方法を一緒に考えましょう。
興味や関心の高い分野を伸ばすなど、特性や強みを生かして本人の自己肯定感を高めることも重要です。

ASD(自閉スペクトラム症)の治療の判断基準は?いつから始めるのがいいの?

どのような症状があれば治療を行うべきなの?
ASD(自閉スペクトラム症)の症状は大きくわけて二つの症状があります。一つは『社会性と対人関係・コミュニケーションの困難』、もう一つは『行動や興味の偏り』です。それぞれの症状が発達期に現れると定義されています。

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは早ければ1歳ごろから症状が出始めます。お子さんによっては3歳ごろになると「周りの子ども達と比べると話すのが遅い」「目を合わさない」などの症状が、より目立ってきます。
乳幼児健診などのときに気づかれることもありますが、見過ごされてしまうこともあります。子どもの発達で気がかりなことがあれば、家庭で判断するのではなく、まず身近な相談できる専門機関や、かかりつけの医師に相談してみましょう。専門の医療機関を紹介してくれるかもしれません。

できるだけ早期に症状に気づくことで支援につながり、適切な対応をすることで子どもの状態が大きく変わることがわかってきています。

療育を始める年齢は?いつまで続けるのがいいの?
療育などの専門機関に通い始めるのは早いほうがよいと言われています。本人や家族がなんらかの困りごとに直面している場合、相談機関や医療機関の相談を経てできるだけ早いうちからその子に合った療育や環境調整を行うことが望ましいでしょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の人は、自分が好きなことに集中することが得意な人が多くいます。子どもでも大人顔負けの知識を持っている子もいますし、大人になってから仕事などで専門性を発揮する方もいます。その子に合った環境設定を行い、早期からの支援を受けることは、得意分野を伸ばし、特性を活かす力を育むことに繋がります。

上述の通り、ASD(自閉スペクトラム症)そのものを根本的に治療することは困難ですので、「こうなれば療育や支援は終わり」という明確な線引はありません。しかし、年齢があがるにつれ、環境調整、その子の特性や発達段階に合わせた支援によって、サポートの内容や頻度を減らしても安定した生活を送れるようになる人もいます。
次ページ「ASD(自閉スペクトラム症)の療育法」

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