50歳の自閉症息子がグループホームへ。老いた母の葛藤、不寛容な社会への働きかけが起こす変化とはーー加賀まりこ・塚地武雅出演 映画「梅切らぬバカ」が11月12日公開

ライター:発達ナビ編集部
50歳の自閉症息子がグループホームへ。老いた母の葛藤、不寛容な社会への働きかけが起こす変化とはーー加賀まりこ・塚地武雅出演 映画「梅切らぬバカ」が11月12日公開のタイトル画像

障害のある子の家族は、「親なきあと」わが子が自分らしく幸せに暮らしていけるだろうか、という悩みを心のどこかに常に抱えているのではないでしょうか。
映画『梅切らぬバカ』では、老いゆく母と、中年にさしかかった自閉症の息子の日常が描かれます。
隣に越してきた家族の「面倒な家族とは関わりたくない」という一歩引いた視線。
ようやく決意して入居したグループホームでの住民による反対運動。
でも、隣家の子どものまっすぐな視点、そして思いがけないトラブルが、地域との関係にささやかな変化を起こして…。

はみだした梅の枝を剪定する?不寛容な社会の中で、不器用でも誠実に生きる自閉症の息子と母の暮らし

梅の木を見上げる母役の加賀まりこ
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この作品では、冒頭から大きな梅の木が登場します。主人公の家の庭から伸びた太い枝は、道に大きくはみ出し、隣に越してきた家族はぶつかりそうになって「切ってもらわなきゃ」といまいましげにつぶやきます。

映画のタイトル「梅切らぬバカ」とは、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがもとになっています。桜は幹や枝を切ると腐食しやすく、梅は余計な枝を切らないとよい花実がつきません。樹木の選定にはそれぞれ木の特性に従って対処する必要がある、転じて、人との関わりにおいても相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事だということを意味しています。

それに加え、「路上まではみ出す梅の木があってもいいじゃないか。不寛容な世の中であっても、一人ひとりかけがえがなく、少しばかりまわりと違うからといって切り捨てていいわけじゃない」。この作品の作り手は、タイトルにそうした想いを込めているのではないでしょうか。

50歳を迎えて、親なきあとの暮らしは。グループホームへの誘い

障害者向けの就労支援の事業所で作業を行う自閉症のちゅうさん
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毎朝決まった時間に起き、身支度を整え、律儀にゴミを分別し、牧場の馬を眺めてから、作業所に向かう。50歳を迎える自閉症の息子・ちゅうさんの変わらない毎日に、あるとき変化が訪れます。
作業所の所長さんから「グループホームに入りませんか」という誘いがあったのです。
老いゆく母は息子の自立を決意します。

ちゅうさんと選んだカーテンや家具。2人住まいの古民家と対照的な、きれいな洋室に少しばかり心浮かれる母でしたが、そこで目にしたのは、近隣住民による反対運動でした。
障害者は地域に住み続けられないのか。親なきあと、住み慣れた地域を離れて隔離された施設に入居しなくてはいけないのか。「地価が下がる」「地域の子どもに危害が加えられる」大きなシュプレヒコールにパニックを起こす入居者の姿に、不寛容な現実を突きつけられます。

思いがけないトラブルが親子を襲ったけれど

自閉症の息子の胸で涙する母
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ちゅうさんと初めて離れて暮らすようになり、心にぽっかりと穴が開いたように感じる母。でも息子のためにできることを考え、地域住民との話し合いや役所に赴く施設長にも同行。関わる人たちに、まっすぐに語りかけます。

そんな奮闘の毎日の中、ある出来事が起こります。そして、小さいけれど確かな、未来に向けた変化が生まれます。ちゅうさんの表情はやわらかくなり、続いていた爪かみもいつのまにかなくなって…。
次ページ「小さな希望の灯が、親子と隣人の間に灯って」

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