3歳の自閉症次男に「障害者手帳」は必要?心理士と主治医の言葉を振り返って
ライター:みん
療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。この記事では、療育手帳を取得した体験談を専門家の解説と共にお届けします。
療育を受けるために必要な受給者証を最初に取得はしましたが、それとはまた別の「療育手帳」を取得するまでにはさまざまな葛藤がありました。今回はPの療育手帳を取得するまでのお話をしたいと思います。※療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
療育手帳はなんのためにある?何歳から取得できる?
「療育手帳」とは、知的障害(知的発達症)のある人に交付される障害者手帳です。取得することによって、生活や将来の就労を支えるさまざまなサービスの利用がしやすくなることを目的としています。
【療育手帳】
対象:知的障害(知的発達症)のある人
根拠:療育手帳制度について(厚生労働省の通知)
交付主体:都道府県知事、指定都市の市長、児童相談所を設置する中核市の市長
所持者数:約121万人(令和3年度の統計による)
等級:重度とそれ以外(自治体により細分化されていることがある)
更新:原則あり(詳細は自治体により異なる)
取得対象年齢はありませんが、多くの方が18歳未満で取得します。まだ乳幼児期といった幼い頃だと、知的障害(知的発達症)の診断が難しいため、療育手帳の交付自体も難しいという場合もあるようです。
全国的に「療育手帳」と呼ばれることが多いですが、「愛の手帳」(東京都・横浜市)、「愛護手帳」(青森県・名古屋市)「みどりの手帳」(さいたま市)など別の名称の自治体もあります。基本的なサービス内容はほとんど同じですが、発行される自治体によって取得方法、利用できるサービス、給付などが一部異なることがあります。
療育手帳の取得は任意で、取得したとしても返納することもできます。申請の複雑さに戸惑ったり、心理的に取得を迷うこともあるかもしれませんが、取得することでさまざまな選択肢を広げることにもつながります。気になる方は、お住いの自治体の福祉担当窓口に相談してみるといいでしょう。
【療育手帳】
対象:知的障害(知的発達症)のある人
根拠:療育手帳制度について(厚生労働省の通知)
交付主体:都道府県知事、指定都市の市長、児童相談所を設置する中核市の市長
所持者数:約121万人(令和3年度の統計による)
等級:重度とそれ以外(自治体により細分化されていることがある)
更新:原則あり(詳細は自治体により異なる)
取得対象年齢はありませんが、多くの方が18歳未満で取得します。まだ乳幼児期といった幼い頃だと、知的障害(知的発達症)の診断が難しいため、療育手帳の交付自体も難しいという場合もあるようです。
全国的に「療育手帳」と呼ばれることが多いですが、「愛の手帳」(東京都・横浜市)、「愛護手帳」(青森県・名古屋市)「みどりの手帳」(さいたま市)など別の名称の自治体もあります。基本的なサービス内容はほとんど同じですが、発行される自治体によって取得方法、利用できるサービス、給付などが一部異なることがあります。
療育手帳の取得は任意で、取得したとしても返納することもできます。申請の複雑さに戸惑ったり、心理的に取得を迷うこともあるかもしれませんが、取得することでさまざまな選択肢を広げることにもつながります。気になる方は、お住いの自治体の福祉担当窓口に相談してみるといいでしょう。
以下は、知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の3歳のお子さんの1年を振り返った体験談をご紹介します。専門家のコメントと共にご覧ください。
※自閉症…以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。以下の本コラムでは当時の診断名のまま掲載しております。
※知的障害…現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
※自閉症…以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。以下の本コラムでは当時の診断名のまま掲載しております。
※知的障害…現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
まだ低年齢だけど療育手帳は取得できるの?したほうが良いの?と悩んだ時期
療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。
私は療育手帳の存在を知ってはいましたが、まずその手帳は本当にわが子にとって必要なものなのか?持つことで何のメリットとデメリットがあるのか?をPが2歳のころはまだよく分かっていませんでした。それに一度療育手帳を取得してしまうとこの先、公私ともにPを『障害がある子』として育てていくことになるんだと思っていました。自閉症があることをを確信したばかりで、医療機関でまだ診断もされていなかったころには、その勇気も覚悟もなく、知的障害の有無もよく分かっていなかったので、取得するかどうかをずっと悩んでいました。
私は療育手帳の存在を知ってはいましたが、まずその手帳は本当にわが子にとって必要なものなのか?持つことで何のメリットとデメリットがあるのか?をPが2歳のころはまだよく分かっていませんでした。それに一度療育手帳を取得してしまうとこの先、公私ともにPを『障害がある子』として育てていくことになるんだと思っていました。自閉症があることをを確信したばかりで、医療機関でまだ診断もされていなかったころには、その勇気も覚悟もなく、知的障害の有無もよく分かっていなかったので、取得するかどうかをずっと悩んでいました。
そんな時期に保健センターの心理相談員さんに療育手帳のことを相談すると、心理相談員さんは少し言葉を選びながらこのように説明してくれました。
「受給者証があれば療育は受けられますし、療育手帳は必ず取得しないといけないというものでもありません。取得したとしても、周囲に取得していることを言う必要はありませんし、使う必要がなければ使わなくても良いです。それに必要がなくなれば返すことだってできます。手帳を取得するかどうかは現時点での親御さんのお考え次第だと思います。」
次に私は主治医にも相談をしてみました。すると「2歳の時点ではまだ正確な判定は出ないかもしれません。3歳になるのを待ってみてからでも遅くはないと思います」と言われました。
こうして私はPが3歳になるまでの間に療育手帳のことをいろいろと調べました。等級があること、さまざまな支援を受けやすくなること、それらは自治体にもよることなど…調べて考えた結果、メリットはたくさんあるけど明確なデメリットはほとんどないと思ったので、安心して申請をすることに決めました。
そのあと、Pが3歳になってすぐに、市役所の障害福祉課へ行き療育手帳を申請しました。手続き自体は本人の写真を貼り必要事項を記入した書類を提出するだけでしたが、後日審査に必要な発達検査をする為に児童相談所へ行くのですが、その待ち時間に4ヶ月ほどかかりました。(※自治体によって手続き方法や待ち時間などは違います。)
そして検査当日、本人を連れて児童相談所で発達検査を行ったあとに、親への聞き取りなども合わせて出た判定は「軽度」という結果になりました。私自身、Pの発達段階を客観的に見て中度と判定されても不思議ではないと思っていたのですが、限りなく中度に近い軽度に判定されていたことを思うと、主治医が「幼いうちは正確な判定が難しいかもしれない」と言っていたのはこういうことだったのかもしれないと思いました。
「受給者証があれば療育は受けられますし、療育手帳は必ず取得しないといけないというものでもありません。取得したとしても、周囲に取得していることを言う必要はありませんし、使う必要がなければ使わなくても良いです。それに必要がなくなれば返すことだってできます。手帳を取得するかどうかは現時点での親御さんのお考え次第だと思います。」
次に私は主治医にも相談をしてみました。すると「2歳の時点ではまだ正確な判定は出ないかもしれません。3歳になるのを待ってみてからでも遅くはないと思います」と言われました。
こうして私はPが3歳になるまでの間に療育手帳のことをいろいろと調べました。等級があること、さまざまな支援を受けやすくなること、それらは自治体にもよることなど…調べて考えた結果、メリットはたくさんあるけど明確なデメリットはほとんどないと思ったので、安心して申請をすることに決めました。
そのあと、Pが3歳になってすぐに、市役所の障害福祉課へ行き療育手帳を申請しました。手続き自体は本人の写真を貼り必要事項を記入した書類を提出するだけでしたが、後日審査に必要な発達検査をする為に児童相談所へ行くのですが、その待ち時間に4ヶ月ほどかかりました。(※自治体によって手続き方法や待ち時間などは違います。)
そして検査当日、本人を連れて児童相談所で発達検査を行ったあとに、親への聞き取りなども合わせて出た判定は「軽度」という結果になりました。私自身、Pの発達段階を客観的に見て中度と判定されても不思議ではないと思っていたのですが、限りなく中度に近い軽度に判定されていたことを思うと、主治医が「幼いうちは正確な判定が難しいかもしれない」と言っていたのはこういうことだったのかもしれないと思いました。
申請はそれぞれの納得できるタイミングで
何事も早めのほうが良いと思って療育手帳を申請したけれど、その判定結果は一生同じというわけではなく、あくまでも「現時点」での判定であるということ、年齢が上がり子どもの発達のペースによっては、更新する度に程度は変化する場合もあるんだなと思いました。
実際、2年後更新したときの判定では中度(B1)に変わり、それも限りなく重度に近い中度と言われたので、もし療育手帳を取るタイミングが半年〜1年遅れていたら、もう少し違った判定に変わっていたのかもしれないなと思いました。
療育手帳を取るタイミングは、親の考えや子どもの発達の状況にもよると思います。ですが、人によっては早めに手帳を取って公的にも障害があることを認めてもらい、子どもの為に手帳を活用したり手帳があることで安心できたりする場合だってあると思うし、たとえ悩んで取得が遅れたとしても、本当に必要だと思えて納得するタイミングで、正確な判定ができるようになるまで待つことも良い場合だってあると思います。
中には療育手帳を取得することに抵抗を感じる人もいるかもしれません。私も最初から全く抵抗がなかったわけではありません。
でも私の場合は、Pが療育手帳を取得したことで、それまで大変で避けてしまいがちだったお出かけへも挑戦して行ってみようかな?と思えるようになり、外へ気持ちが向き世界が広がってきたように思います。
障害のある子どもを連れてのお出かけは気力体力ともにとてもパワーが必要です。でも療育手帳があることでそんな私たちをサポートしてもらえるような機会や場所がたくさんあることを知りました。そして療育手帳があるほうが周囲にPのことを説明しやすく、正しい理解にもつながるような気がしています。
このように、療育手帳にはたくさんのメリットとありがたみを感じているので、取得するか悩んでいた時期もありましたが、今は取得して良かったと思っています。
実際、2年後更新したときの判定では中度(B1)に変わり、それも限りなく重度に近い中度と言われたので、もし療育手帳を取るタイミングが半年〜1年遅れていたら、もう少し違った判定に変わっていたのかもしれないなと思いました。
療育手帳を取るタイミングは、親の考えや子どもの発達の状況にもよると思います。ですが、人によっては早めに手帳を取って公的にも障害があることを認めてもらい、子どもの為に手帳を活用したり手帳があることで安心できたりする場合だってあると思うし、たとえ悩んで取得が遅れたとしても、本当に必要だと思えて納得するタイミングで、正確な判定ができるようになるまで待つことも良い場合だってあると思います。
中には療育手帳を取得することに抵抗を感じる人もいるかもしれません。私も最初から全く抵抗がなかったわけではありません。
でも私の場合は、Pが療育手帳を取得したことで、それまで大変で避けてしまいがちだったお出かけへも挑戦して行ってみようかな?と思えるようになり、外へ気持ちが向き世界が広がってきたように思います。
障害のある子どもを連れてのお出かけは気力体力ともにとてもパワーが必要です。でも療育手帳があることでそんな私たちをサポートしてもらえるような機会や場所がたくさんあることを知りました。そして療育手帳があるほうが周囲にPのことを説明しやすく、正しい理解にもつながるような気がしています。
このように、療育手帳にはたくさんのメリットとありがたみを感じているので、取得するか悩んでいた時期もありましたが、今は取得して良かったと思っています。
執筆/みん
(監修:井上先生より)
療育手帳は、知的障害のある人に対して自治体から交付されるものです。知的障害がない発達障害に関しては、療育手帳ではなく一般的に精神障害者保健福祉手帳がその対象になります。みんさんが書いておられるようにこれらの手帳は、どの年齢からでも申請することができますので、それぞれメリットやデメリットを考えながら判断するのがよいでしょう。自治体によって手帳の取得基準や、受けられるサービスが異なりますので、自治体のホームページなどで確認し、窓口で相談されることをおすすめします。
療育手帳は、知的障害のある人に対して自治体から交付されるものです。知的障害がない発達障害に関しては、療育手帳ではなく一般的に精神障害者保健福祉手帳がその対象になります。みんさんが書いておられるようにこれらの手帳は、どの年齢からでも申請することができますので、それぞれメリットやデメリットを考えながら判断するのがよいでしょう。自治体によって手帳の取得基準や、受けられるサービスが異なりますので、自治体のホームページなどで確認し、窓口で相談されることをおすすめします。
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