3歳の自閉症次男に「障害者手帳」は必要?心理士と主治医の言葉を振り返って

ライター:みん
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療育を受けるために必要な受給者証を最初に取得はしましたが、それとはまた別の「療育手帳」を取得するまでにはさまざまな葛藤がありました。今回はPの療育手帳を取得するまでのお話をしたいと思います。※療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

まだ低年齢だけど療育手帳は取得できるの?したほうが良いの?と悩んだ時期

療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。

私は療育手帳の存在を知ってはいましたが、まずその手帳は本当にわが子にとって必要なものなのか?持つことで何のメリットとデメリットがあるのか?をPが2歳のころはまだよく分かっていませんでした。それに一度療育手帳を取得してしまうとこの先、公私ともにPを『障害がある子』として育てていくことになるんだと思っていました。自閉症があることをを確信したばかりで、医療機関でまだ診断もされていなかったころには、その勇気も覚悟もなく、知的障害の有無もよく分かっていなかったので、取得するかどうかをずっと悩んでいました。
参考:障害者手帳について | 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html
療育手帳にはどんな制度があるの?
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そんな時期に保健センターの心理相談員さんに療育手帳のことを相談すると、心理相談員さんは少し言葉を選びながらこのように説明してくれました。

「受給者証があれば療育は受けられますし、療育手帳は必ず取得しないといけないというものでもありません。取得したとしても、周囲に取得していることを言う必要はありませんし、使う必要がなければ使わなくても良いです。それに必要がなくなれば返すことだってできます。手帳を取得するかどうかは現時点での親御さんのお考え次第だと思います。」


次に私は主治医にも相談をしてみました。すると「2歳の時点ではまだ正確な判定は出ないかもしれません。3歳になるのを待ってみてからでも遅くはないと思います」と言われました。

こうして私はPが3歳になるまでの間に療育手帳のことをいろいろと調べました。等級があること、さまざまな支援を受けやすくなること、それらは自治体にもよることなど…調べて考えた結果、メリットはたくさんあるけど明確なデメリットはほとんどないと思ったので、安心して申請をすることに決めました。

そのあと、Pが3歳になってすぐに、市役所の障害福祉課へ行き療育手帳を申請しました。手続き自体は本人の写真を貼り必要事項を記入した書類を提出するだけでしたが、後日審査に必要な発達検査をする為に児童相談所へ行くのですが、その待ち時間に4ヶ月ほどかかりました。(※自治体によって手続き方法や待ち時間などは違います。)

そして検査当日、本人を連れて児童相談所で発達検査を行ったあとに、親への聞き取りなども合わせて出た判定は「軽度」という結果になりました。私自身、Pの発達段階を客観的に見て中度と判定されても不思議ではないと思っていたのですが、限りなく中度に近い軽度に判定されていたことを思うと、主治医が「幼いうちは正確な判定が難しいかもしれない」と言っていたのはこういうことだったのかもしれないと思いました。
療育手帳を取得する為にはさまざまな手続きが必要
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申請はそれぞれの納得できるタイミングで

何事も早めのほうが良いと思って療育手帳を申請したけれど、その判定結果は一生同じというわけではなく、あくまでも「現時点」での判定であるということ、年齢が上がり子どもの発達のペースによっては、更新する度に程度は変化する場合もあるんだなと思いました。

実際、2年後更新したときの判定では中度(B1)に変わり、それも限りなく重度に近い中度と言われたので、もし療育手帳を取るタイミングが半年〜1年遅れていたら、もう少し違った判定に変わっていたのかもしれないなと思いました。

療育手帳を取るタイミングは、親の考えや子どもの発達の状況にもよると思います。ですが、人によっては早めに手帳を取って公的にも障害があることを認めてもらい、子どもの為に手帳を活用したり手帳があることで安心できたりする場合だってあると思うし、たとえ悩んで取得が遅れたとしても、本当に必要だと思えて納得するタイミングで、正確な判定ができるようになるまで待つことも良い場合だってあると思います。

中には療育手帳を取得することに抵抗を感じる人もいるかもしれません。私も最初から全く抵抗がなかったわけではありません。
でも私の場合は、Pが療育手帳を取得したことで、それまで大変で避けてしまいがちだったお出かけへも挑戦して行ってみようかな?と思えるようになり、外へ気持ちが向き世界が広がってきたように思います。

障害のある子どもを連れてのお出かけは気力体力ともにとてもパワーが必要です。でも療育手帳があることでそんな私たちをサポートしてもらえるような機会や場所がたくさんあることを知りました。そして療育手帳があるほうが周囲にPのことを説明しやすく、正しい理解にもつながるような気がしています。

このように、療育手帳にはたくさんのメリットとありがたみを感じているので、取得するか悩んでいた時期もありましたが、今は取得して良かったと思っています。
療育手帳があることで、見えない障害があることを伝えやすくなりました
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執筆/みん
(監修:井上先生より)
療育手帳は、知的障害のある人に対して自治体から交付されるものです。知的障害がない発達障害に関しては、療育手帳ではなく一般的に精神障害者保健福祉手帳がその対象になります。みんさんが書いておられるようにこれらの手帳は、どの年齢からでも申請することができますので、それぞれメリットやデメリットを考えながら判断するのがよいでしょう。自治体によって手帳の取得基準や、受けられるサービスが異なりますので、自治体のホームページなどで確認し、窓口で相談されることをおすすめします。
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