デザインと福祉の仕事の意外な共通点
――このゲームをつくるにあたって、本業であるデザインのスキルを生かせたと思う部分はありますか?
竹内:小さなプロトタイプをつくってみて、失敗したら直すということを繰り返すプロセスでつくっていきました。全体のデザインについては、アートディレクター、グラフィックデザイナー と一緒につくっていきましたが、どうしたら楽しく伝わるかを考えるという面では、リサーチしたものをたくさんの人に伝わるような形を考えるという本業のやり方が、役に立ったのかなと思います。
――住人さんのキャラクターは、困っている人たちですが、どこかユーモラスで可愛いというか、親しみやすいデザインになっていますよね。
竹内:そこは気を配った部分です。困っていることがネガティブな伝わり方にならないようにと考えて、漫画家のスケラッコさんに作画をお願いしました。住人さん自身をネガティブな存在にしたくない、住人さんが困った存在なのではなくその状況に困っている人なのだという表現にしたかったので、絵や文章に関しては気を配りました。
竹内:小さなプロトタイプをつくってみて、失敗したら直すということを繰り返すプロセスでつくっていきました。全体のデザインについては、アートディレクター、グラフィックデザイナー と一緒につくっていきましたが、どうしたら楽しく伝わるかを考えるという面では、リサーチしたものをたくさんの人に伝わるような形を考えるという本業のやり方が、役に立ったのかなと思います。
――住人さんのキャラクターは、困っている人たちですが、どこかユーモラスで可愛いというか、親しみやすいデザインになっていますよね。
竹内:そこは気を配った部分です。困っていることがネガティブな伝わり方にならないようにと考えて、漫画家のスケラッコさんに作画をお願いしました。住人さん自身をネガティブな存在にしたくない、住人さんが困った存在なのではなくその状況に困っている人なのだという表現にしたかったので、絵や文章に関しては気を配りました。
――さまざまな専門家の意見も取り入れて、ゲームをつくっていったと伺いました。その過程での印象に残っているエピソードはありますか?
竹内:先ほどもお話ししたように、制作当初は、単純に住人さんが誰なのかを当てるというゲームでした。でも、臨床発達心理士さんに相談したときに、「せっかく当てたなら、その方のお困りを解決してあげたい、役に立ってあげたい」と言われたことがきっかけで、ゲームをさらにアップデートして「ヒントカード」もつくることになりました。こうして、困りごとの解決というゴールまでができたのです。
藤井:今回のゲームの制作過程だけでなく、障害福祉全般にかかわる方々と話していて普段から感じていたことなのですが、障害福祉の仕事と私たちの仕事と、プロセスが似ていると思ったことがあります。
デザインの仕事は、たくさん情報を集めて分析して、伝えたい人に伝わるようにしぼったものをつくり、さらに相手にちゃんと伝わったかを繰り返し検証していきます。障害福祉の現場の職員さんも、支援する方に常に接して、その人の情報を少しずつ集めて、その方ができることが増えたり、心地よく過ごせたりするためにはどういうことが必要なのかと、常に情報を集めて分析しています。この情報収集と分析、検証していくプロセスが似ていると思ったんですよね。広い意味で同じ「デザイナー」なんだな、ということを感じました。
竹内:支援の現場では、利用者の方が「これが課題ですから、こう解決してください」とおっしゃることは少ないと思います。その状況で、仮説を立てて試して、違っていたら調整して、また仮説を立て直して…というプロセスなんですよね。
――なるほど。言われてみるとそうですね。
竹内:もう一つ、嬉しかったエピソードとしては、支援職のみなさんが協力的で、実際に喜んで遊んでみてくださったこと。職員研修や地域の人とも遊んでみたい、といった声もいただきました。ゲームの内容からさらに、ゲームを使って展開できるアクションについて、ポジティブに考えてくださったことが、つくる過程での励みにもなりました。
竹内:先ほどもお話ししたように、制作当初は、単純に住人さんが誰なのかを当てるというゲームでした。でも、臨床発達心理士さんに相談したときに、「せっかく当てたなら、その方のお困りを解決してあげたい、役に立ってあげたい」と言われたことがきっかけで、ゲームをさらにアップデートして「ヒントカード」もつくることになりました。こうして、困りごとの解決というゴールまでができたのです。
藤井:今回のゲームの制作過程だけでなく、障害福祉全般にかかわる方々と話していて普段から感じていたことなのですが、障害福祉の仕事と私たちの仕事と、プロセスが似ていると思ったことがあります。
デザインの仕事は、たくさん情報を集めて分析して、伝えたい人に伝わるようにしぼったものをつくり、さらに相手にちゃんと伝わったかを繰り返し検証していきます。障害福祉の現場の職員さんも、支援する方に常に接して、その人の情報を少しずつ集めて、その方ができることが増えたり、心地よく過ごせたりするためにはどういうことが必要なのかと、常に情報を集めて分析しています。この情報収集と分析、検証していくプロセスが似ていると思ったんですよね。広い意味で同じ「デザイナー」なんだな、ということを感じました。
竹内:支援の現場では、利用者の方が「これが課題ですから、こう解決してください」とおっしゃることは少ないと思います。その状況で、仮説を立てて試して、違っていたら調整して、また仮説を立て直して…というプロセスなんですよね。
――なるほど。言われてみるとそうですね。
竹内:もう一つ、嬉しかったエピソードとしては、支援職のみなさんが協力的で、実際に喜んで遊んでみてくださったこと。職員研修や地域の人とも遊んでみたい、といった声もいただきました。ゲームの内容からさらに、ゲームを使って展開できるアクションについて、ポジティブに考えてくださったことが、つくる過程での励みにもなりました。
広い意味での他者理解ができるワークショップにも活用してほしい
――カードゲームは発売中とのことですが、今後どのような展開で広めていきたいですか?
竹内:場面カードには学校のシーンもあるので、子どもたちにも遊んでみてほしいし、ゲームを使ってのワークショップを展開していけたらいいですね。このゲームは、障害理解はもちろんですが、広い定義での「他者理解」ができるものだと思っています。「○○障害」と障害名がついている場合だけでなく、ものの感じ方・考え方は人によってさまざまであることを知るゲームでもあります。そういう意味で、チームビルディングの場でも活用できると思います。
多様な人がいると知ったうえで生活する、働いていくことを、今までより想像力をもって受け入れながら生きていけるような、「こまった課?」のプレイと組み合わせたワークショップを提供していきたいです。
――社員研修にもよさそうですよね、知って想像して、お互いに優しくなれる…といいですね。
竹内:困らないようにすることも大事ですが、困っているときに「困っている」と言えて、お互い助け合える、そういう状況がいいですよね。多様な人との安心できるつながりがあることは、街で生活していても、働いていても大切なことだと思っています。「こまった課?」が、そうしたことについて考えるきっかけになれたらうれしいです。
――今後の展開も、楽しみにしています。今日はありがとうございました。
文/関川香織
撮影/鈴木江実子
竹内:場面カードには学校のシーンもあるので、子どもたちにも遊んでみてほしいし、ゲームを使ってのワークショップを展開していけたらいいですね。このゲームは、障害理解はもちろんですが、広い定義での「他者理解」ができるものだと思っています。「○○障害」と障害名がついている場合だけでなく、ものの感じ方・考え方は人によってさまざまであることを知るゲームでもあります。そういう意味で、チームビルディングの場でも活用できると思います。
多様な人がいると知ったうえで生活する、働いていくことを、今までより想像力をもって受け入れながら生きていけるような、「こまった課?」のプレイと組み合わせたワークショップを提供していきたいです。
――社員研修にもよさそうですよね、知って想像して、お互いに優しくなれる…といいですね。
竹内:困らないようにすることも大事ですが、困っているときに「困っている」と言えて、お互い助け合える、そういう状況がいいですよね。多様な人との安心できるつながりがあることは、街で生活していても、働いていても大切なことだと思っています。「こまった課?」が、そうしたことについて考えるきっかけになれたらうれしいです。
――今後の展開も、楽しみにしています。今日はありがとうございました。
文/関川香織
撮影/鈴木江実子
こまった課?
企画・開発・制作・デザイン:デジタル・アド・サービス
共同開発・監修:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 障害者支援施設ひだまりの里きよせ、一社団法人ぽろんのいえ 代表理事 富樫京子(臨床発達心理士SV・特別支援教育士)
イラスト:スケラッコ
共同開発・監修:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 障害者支援施設ひだまりの里きよせ、一社団法人ぽろんのいえ 代表理事 富樫京子(臨床発達心理士SV・特別支援教育士)
イラスト:スケラッコ
リト@葉っぱ切り絵さん、ADHDの診断が転機に。「臨機応変」ができずに退職を繰り返した日々と、過集中を活かして唯一無二のアーティストになるまで
小島慶子さん取材。「助けて」が言えなかった子ども時代。天職との出合いや、41歳で発達障害と分かるまでの苦悩も
【音楽家・広瀬香美さんインタビュー】「まわりの音がすべて音符に聞こえる」幼少時代、不登校を経て、音楽の道で輝けるようになるまで
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