小6ASD息子「料理しながら撮影」の宿題でパニック直前!母の助言への対応に感じた小さな成長

ライター:丸山さとこ
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小学校から学習用にタブレット端末が貸与されるようになった今、「調理実習の途中過程を撮影してレポートに組み込んだものを送信する」など、新しい形の宿題が増えてきました。

料理もタブレットの操作も得意なコウは意気揚々と宿題に取り掛かりましたが、思いがけないトラブルに慌ててしまい…?負担が大きいときに見えてきた、コウの”苦手と成長”の話です。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

調理実習の宿題は、調理以外にも大事な作業があって…!?

意気揚々と調理実習を進めるコウでしたが、途中過程を撮ることを忘れていて…
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うっかりしやすい「途中過程の写真撮影」

小学校から学習用にタブレット端末が貸与されるようになった今、リコーダーの演奏や英語のスピーチなど「家庭で撮影した画像や動画を提出する」という宿題の形も見られるようになってきました。

演奏やスピーチなど”発表する姿”を撮影して送信する宿題もあれば、調理実習など”途中過程を撮影してレポートに組み込んだもの”を送信する宿題もあります。
「どーしよう!もう切っちゃったよ!」と慌てるコウ
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久しぶりにパニックになりかけるも、”周囲の言葉”が耳に入ったコウ!

特性からパニックになり硬直して呆然とし始めたコウに指示を出しても混乱すると思ったので、彼を一度その場から少し移動させてから、私は”調理実習で使ったものと同じ食材”を取り出して調理台の上に並べました。

私が「これを撮ればいいよ」と勧めると、コウは怪訝そうに「これは(今つくりかけの料理で)使ってるものじゃないよ」と言いました。
残りの食材を撮ればいいと勧めても「これは今調理で使っている物じゃない」と納得しないコウ
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「確かに今使っているものではないね。じゃぁ最初からもう一度つくる?」と聞くと、『今つくっているこれが宿題の調理だから、やり直すことはできない』ということを繰り返し主張し、コウは頑なに拒みました。

”宿題として今つくっている料理”と、”調理された食材の調理前の写真”にこだわり身動きがとれなくなってしまったコウに、「今調理に使っている食材と同じ物だから大丈夫だよ。同じ袋から出したジャガイモだし、ベーコンもセットで売ってたものでしょ? だからいいの」と少し強引に説得すると、しぶしぶといった調子ではありますが、コウは「そうか…」と言って作業を続けました。

料理が出来上がってくるに従って「いい匂いがしてきた。美味しそう!」と表情もゆるみ、無事に盛りつけまで終えて写真を撮り、宿題を提出できました。
料理が出来上がるにつれて「いい匂い!」と調子を取り戻してきたコウ
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普段とは違うことをしていると浮き彫りになる”苦手”と”成長”

一つひとつは得意なことでも、合わさることで難易度UP!

コウは普段から料理をすることが多く、レシピを見ながら料理をつくることも珍しくはありません。また、タブレットを扱うことにも慣れていますし、タブレットで撮影した画像や動画を学校に提出することもたびたび経験しています。

ですが、一つひとつは簡単なはずの作業であっても、複数を同時進行で行うことは彼にとっては大きな負担のかかることなのかもしれないなと思いました。
一つひとつは得意なことであっても、同時に行うと難易度は上がるようで…
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「言葉が耳に入る」「差し出されたものが目に入る」という成長

また、今回は”大きな負担”によって『不得意だけでなく成長も見えたな~』と感じる部分もありました。

一度はパニックになりかけたものの落ち着くことができたコウに「どうして落ち着いて作業を再開できたの?」と聞くと、「実際にタブレットの画面を見たら『これで大丈夫だ』ってなったんだ」と返ってきました。
「実際にタブレットの画面を見たら『これで大丈夫だ』ってなったんだ」と言うコウ
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言葉にすると簡単なやりとりですが、パニックになりかけたときに”人の言葉を聞いて差し出されたものを見る”ことはコウにとっては難しかっただろうと思います。それに加えて”タブレットの画面を見て「これで大丈夫だ」と受け入れられた”ということは、大きな変化だなと思いました。

私がそう言うと、コウは「僕にもなんでそうなったか分からんけど、気づかない間に成長したんじゃない?」と言って笑いました。『親も本人も気づかない間に、じわ~っと成長していたのかもしれないな~』と思う、”調理実習写真撮り忘れ事件”でした。

執筆/丸山さとこ
(監修:井上先生より)
タブレット端末で写真を撮ってそれを宿題として提出するというのは、学校の取り組みとしてとても進んでいますね。さとこさんがご指摘のように何かしながら、必要な場面だけを撮影するというのはとても難しい作業だと思います。そのような中でもお母さんの助言を聞き入れて、作業できたことはコウ君のすばらしい成長ですね。

2つのことを同時並行で作業することは、難しいことです。しかし、それが『好きなこと』で、なおかつ『先に計画しておくこと』ができることであれば、要領よく作業できるかもしれません。

今回のような料理をしているところを撮影するという場合ですと、
(1、材料を並べる 2、材料を並べたたところ撮影する 3、材料を切る 4、材料を切ったところを撮影する…)
などといった手順を、先に紙に書いておき、それを手元に置きながら作業をする方法があります。作業を始める前に必要な手順を書いておくことで、重要なことを忘れず、慌てずに作業ができるかもしれません。

タブレット端末を使った学習は、多角的な視点で大切なことを学べるチャンスだと思います。作業をする、撮影をする……などの複雑な手順を行う体験にもなりますし、撮影をする中で写りこんではいけないものはないか、写っている人の許可は得ているか……などプライバシーについて学ぶこともできます。

まだ、学校でも家庭でも試行錯誤しながら学習していると思います。はじめのうちはうまくいかないことがあっても、だんだんと上手になる過程を大切にすることが大事ではないかと思います。
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