「躾がなっていないからだ」実母に発達障害息子のことを言われブチ切れ!10年伝え続けた障害理解

ライター:かなしろにゃんこ。
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孫がかわいい反面、落ち着きがない息子と一緒にいると疲れてしまう私の母。「息子の躾がなっていない」と度々注意を受けていた私です。
「躾してもダメなんだけどな…躾のせいじゃないのにな…」と思いつつも母には逆らえずにいた私ですが、あるとき息子をけなされて、とうとうブチ切れてしまい発達障害の告知をしたのでした。

監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

実母に息子の障害について話していなかった10年前のころ

祖父母に「子どもに発達障害がある」と説明してもなかなか理解してもらえないことがあると言いますが、わが家も同じで、実母の理解を得るのに10年かかってしまいました。
孫に頻繁に会いに来る私の母
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今から10年前のリュウ太が幼少期から学童期のころ、近所に住んでいた私の母は、かわいい盛りの孫に会い頻繁に遊びに来ていました。

部屋の中を動き回ったり、注意力散漫で家具に体をぶつけたり、床に落ちているオモチャを避けられず踏みつけ足をケガするリュウ太。そんな孫の姿を見て私の母はたびたび「落ち着きのない子だね、誰に似たのかしら?注意するように言い聞かせないとダメよ」などと言っていました。
部屋の中で落ち着かない孫の行動に疲れを感じる私の母
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孫はかわいいけれど、次から次へと違う会話を話し出したり、動き回るリュウ太の行動は初老の母とリズムが合わず、孫の行動をストレスに感じているようでした。

一緒にレストランに行ったとき

その当時、教育相談所に通ったり発達障害の診断を受けたことを母には内緒にしていたのですが、一緒にレストランに行ったときに、リュウ太の落ち着きがない行動を母に再度注意されてしまいました。
3人でレストランに行ったときの様子
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そして「体を揺らしたり足をばたつかせたり見ていてうっとうしい、おしゃべりばかりして頭が痛くなる、親がきちんと躾けないからバカになってしまうんだ」と傷つくことを言われてしまいました。

『落ち着きがない=躾がなっていない』と言われ、私は頭にきました。これまで母に育児のことで注意されても言い返さずに我慢していましたが、そのとき私は「ブチッ!!!」とキレて「リュウ太には発達障害があるんだよ(怒)! いろいろ大変で、必死に育ててるのに悪く言わないで!」と母に強く言ってしまいました。自分の子育てが間違っているのでは?と感じてしまう時期だったこともあり、子育てのことでつつかれるとつらかったのです。
母の言葉を受け流すことができず傷つく私
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小さいころから母に怒られたりしても歯向かわず反抗をしなかった私が急にキレたので母は「えっ?」と目をまるくしていました。そして、「障害」という言葉に驚いてもいました。「発達障害」が何か?ということを母はそのときまだ知らず、ポカーンとしていたため、私はADHDの特徴やASDの特徴を簡単に説明しました。

「リュウ太はADHDがあるし、自閉スペクトラム症の特性も少しあるんだよ。ADHDは生まれつきのもので長くじっとしているのが苦手なのは躾のせいではないから、落ち着きがない子どもと一緒に食事するのが嫌なら今後一緒にレストランには行かないから」と母に伝えました。
ブチ切れしてしまった私
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障害という言葉に驚く母
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母は最初「発達障害?そんなもの初めて聞いたし、病院で検査したって何かの間違いじゃないの?」と理解してはくれませんでした。

私は「あぁ…一生懸命説明しても理解してもらえなくてめんどくさいな~」と落ち込みました…。特徴を話す度に「あぁ!そういう行動をする子どもが昔もいたわよ、どうしようもないなと思ってた」など言う母。傷つく言葉の数々を言われながらも説明しなければならない私のメンタルったら。ズタボロになりました…トホホ。

こんなやりとりが年に一度はありました。
発達障害について一生懸命説明する私となかなか理解しがたい様子の母
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ちなみに夫の両親は私の母よりも世代が上で、子育ての環境や価値観も大きく違うため発達障害への理解は難しいかもしれないと考え、今も言わずにいます。実母にだけ、毎年「だから発達障害っていうのはね!」と説明すること10年です。

母も徐々に「リュウ太は物忘れしやすいADHDだもんね、大変だね」と言ってくれて、私にも「クリニックに行ったり大変な子育てだったんだね」と労わってくれるようになりました。

リュウ太が23歳になるころ、やっと母が理解してくれてよかった~と思っていたところ…。

母からの告白

つい最近、母が「実は私も小さいころリュウ太と同じだったのよね…、よく親に怒られたわ。働いていたときもついウッカリ物忘れが多かったっけ。でもなんとか生きてこれたのよね」と告白してきました。

孫のリュウ太のことを見て、母は自分みたいだなと思っていたようです。そして、自分は生きづらかったけれど、リュウ太は今から躾で治せるのではないかと思っていたのだそうです。私は、(いやいや、躾では治らないから…)とツッコミそうになりましたが、70歳になった母がやっとの思いで孫を理解してくれた気持ちに感謝して言葉をのみ込みました。

そして現在、大人になって少し落ち着いたリュウ太と母は、同席で食事を楽しんでくれるようになりました。

執筆/かなしろにゃんこ。
(監修:初川先生より)
10年、毎年発達障害のことやその特徴を伝え続けてきたのですね。あきらめずにその対話を続けようとされたこと、頭が下がりますし、「お疲れさまでした…!そして『やっとの思いで』理解してくれて、よかったですね!」という気持ちです。

わが子に発達障害があるということを知ったとき、保護者の方もさまざまに反応されます。否認したり、逆にほっとしたり。さまざまな思いが去来しながら、発達障害という視点を持ってわが子を見ること、発達障害に関する知見を活かしながら子育てに取り組む。一筋縄ではいかないこともあるでしょうが、プロセスを経ながら、発達障害という視点で子どもを見ることをインストールされます。

今の保護者世代の一つ前の世代(子にとっての祖父母世代)だと、発達障害というものが一般的ではなく、障害と聞くと別の障害を想像されたり、見た目が「普通」に見えることも多いからこそ、そんなことはない、と否定されることが多いように感じます。また、時代の風潮としても、努力したら何とかなる(うまくいかないのは努力が足りないから)、親がきちんと躾ければ子は良い子に育つ、と悪気なくそう信じていらっしゃる方も多いですね(ご自身が努力していたり、子育て頑張っていたりした歴史がおありになるのだろうとも感じます)。

保護者もまだ完全にインストールできていない視点を、祖父母世代にインストールするのは、まさに難しいことです。さらに、かなしろさんのお母さまはご自身の過去について思いがあったとのこと。だとしたら、なおのこと大変だったことでしょう。「発達障害」という視点・切り口を持って、リュウ太くんを見てみる。それを10年投げ出さず、あきらめず、片方に決めつけず視点を行ったり来たりさせながらやってこられた、かなしろさんのお母さまもすごいなぁと感心するばかりです。今は一緒に食事を楽しめているとのこと、何よりです。
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