「保育園で浮いてる?」発達障害息子への周りの目を気にしてた私が、園ママにカミングアウトできたワケ
ライター:まゆん
太郎に発達障害があると、周りに伝えれてなかったころの話です。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
保育園のママたち
発達障害と診断を受け、やっと太郎とまっすぐ向き合える生活となった。自分に素直になった分、太郎のことにも少し余裕を持って関われるようになったからだと思う。
しかし、この時期に別の悩みが出てきた。保育園のママたちとの関わり方だ。
しかし、この時期に別の悩みが出てきた。保育園のママたちとの関わり方だ。
保育園のママたちとは、まだ密接な関係性はなく、送迎時に挨拶を軽く交わすくらいだった。みんな送迎時は仕事で慌てていたり、ゲッソリしていた。私もそのうちの一人で、ママたちと交友することはなかった。
年少クラスは3歳から4歳のクラスであり、子ども同士の遊びも増えてくる時期だった。保育園に迎えに行くと、園児同士がごっこ遊びをしているのを目にした。
太郎はというと、もっぱら一人で走り回ったり、大声で歌を歌っていたり、ひたすらブロック遊びをしたりしていた。私は「友達できるかな」「やはり浮いてるな」「周りのお母さんたちは太郎のことをどう思ってるかな」「しかし可愛いな」そういうことを思っていた。
太郎が発達障害の診断を受けて、育児に対してきついと思っていた自分は間違いではなかったとほっとしていた反面…周りからどう思われるかという不安があった。「あの子ちょっと変わってるよね」「おやおや?」と見えてしまう行動をするのが太郎。ほかの保護者の人の目にどう映るのか心の中で引っかかっていた。誰からもそういう発言や冷ややかな目はないのに、当時の私の中では結構気になる問題だった。
太郎はというと、もっぱら一人で走り回ったり、大声で歌を歌っていたり、ひたすらブロック遊びをしたりしていた。私は「友達できるかな」「やはり浮いてるな」「周りのお母さんたちは太郎のことをどう思ってるかな」「しかし可愛いな」そういうことを思っていた。
太郎が発達障害の診断を受けて、育児に対してきついと思っていた自分は間違いではなかったとほっとしていた反面…周りからどう思われるかという不安があった。「あの子ちょっと変わってるよね」「おやおや?」と見えてしまう行動をするのが太郎。ほかの保護者の人の目にどう映るのか心の中で引っかかっていた。誰からもそういう発言や冷ややかな目はないのに、当時の私の中では結構気になる問題だった。
当時、保育園の中で一際目立った親子がいた。いつも明るくて周りからも声をかけられるようなキラキラした親子だ。
太郎を保育園に迎えに行ったある日のこと。太郎はいつものように教室の走れるスペースでひたすら往復走りをしていた(やばい、今日も多動マックスだ…)。
「あはは!教室壊れるんじゃない?」爽やかな笑い声の主はキラキラお母さんだった。キラキラお母さんは大きなお腹を抱えてどこか痛そうに歩いていた。第2子出産間近で腰痛を患っていたようだ。
「あはは!教室壊れるんじゃない?」爽やかな笑い声の主はキラキラお母さんだった。キラキラお母さんは大きなお腹を抱えてどこか痛そうに歩いていた。第2子出産間近で腰痛を患っていたようだ。
しばらくしてキラキラした親子は保育園の定員の関係もあり、いったん退園することになった。
その後も、太郎は変わらずほかの園児への興味は薄く一人遊びが多かった。「今日も一人か…」と、私は少し切なくなっていた(本人は楽しかったのだと思う)。この切ない気持ちってなんだったんだろうと考えることがあった。私自身は一人で遊ぶよりも友達と遊んだ方が「楽しい」と思えて、一人で遊ぶことが「寂しい」と認識していたし、そういう経験があったからなんだと思った。でもそれは私の認識で、太郎にとっては全然違うもの。友達と遊ぶよりも自分の世界の中で自分を楽しんでいるのだと思った。
その後も、太郎は変わらずほかの園児への興味は薄く一人遊びが多かった。「今日も一人か…」と、私は少し切なくなっていた(本人は楽しかったのだと思う)。この切ない気持ちってなんだったんだろうと考えることがあった。私自身は一人で遊ぶよりも友達と遊んだ方が「楽しい」と思えて、一人で遊ぶことが「寂しい」と認識していたし、そういう経験があったからなんだと思った。でもそれは私の認識で、太郎にとっては全然違うもの。友達と遊ぶよりも自分の世界の中で自分を楽しんでいるのだと思った。
クリスマスパーティー
ある日、街のスーパーでキラキラ親子とばったり出会った。胸には数ヶ月の第2子を抱え、退園した太郎と同じ年齢の子も連れていた。「太郎ちゃんママ!うちの子がさ!太郎ちゃんと遊びたいって言ってるんよ!今度クリスマスパーティーを園の友達とするから来ない?」
私は驚いた。キラキラした親子から、しかも他人に興味を示さない太郎と遊びたいと声がかかるなんて人違いではないのかと疑った。それでも私はうれしくて「行きます!」と速攻返事をした。
私は驚いた。キラキラした親子から、しかも他人に興味を示さない太郎と遊びたいと声がかかるなんて人違いではないのかと疑った。それでも私はうれしくて「行きます!」と速攻返事をした。
そして迎えたクリスマス当日。
園の子どもたち、ママたちとは言えど、私はほぼ面識のない顔ぶれだった。それぞれが食べ物を持ち寄っていたが、太郎は偏食のためひたすらフライドポテトを食べるだけだった。私は太郎の偏食を理解していたので当たり前の光景ではあったが、世間的には「教育がなってない」と思われるのでは…とママ友の反応にソワソワしていた。
「すごい!太郎ちゃん!ポテトから浮気せんね!(笑)ねぇねぇ!私にもちょうだい」と、一人のママ友が太郎に話しかけてくれた。
園の子どもたち、ママたちとは言えど、私はほぼ面識のない顔ぶれだった。それぞれが食べ物を持ち寄っていたが、太郎は偏食のためひたすらフライドポテトを食べるだけだった。私は太郎の偏食を理解していたので当たり前の光景ではあったが、世間的には「教育がなってない」と思われるのでは…とママ友の反応にソワソワしていた。
「すごい!太郎ちゃん!ポテトから浮気せんね!(笑)ねぇねぇ!私にもちょうだい」と、一人のママ友が太郎に話しかけてくれた。
このやり取りを見て、ほかの人がどう感じるかは分からないが、私は安心感を覚えた。太郎に話しかけてくれたママから太郎への興味を感じ取れたし、偏食の太郎を否定せず、私にとって「おもしろい」方向へ向かわせてくれたからだ(こうして自分を振り返ると、私の考え方は自己中心的だなと思う。でもそれでいいと思う私もいる)。
「保育園退園してから毎日どんなことして過ごしているの?」パーティーの途中でキラキラママに1人が声をかけた。「んー、主に公園で虫取りかなぁ。でもさ…」キラキラママは少しうつむいて語り出した。「保育園退園した途端に、うちの子とどう過ごしたらいいのか分からなくって」
「保育園退園してから毎日どんなことして過ごしているの?」パーティーの途中でキラキラママに1人が声をかけた。「んー、主に公園で虫取りかなぁ。でもさ…」キラキラママは少しうつむいて語り出した。「保育園退園した途端に、うちの子とどう過ごしたらいいのか分からなくって」
キラキラと彼女は心を言葉に表した。「仕事してるときは、朝早くから夕方遅くまで保育園に預けてて帰ってごはんを食べさせたらあっという間に寝る時間やん?その生活に慣れていたけど、退園した途端にうちの子がどんな遊びが好きなのかも分からんで…あれ?私、自分の子どものこと分かってない!って思った」
この言葉を聞いたとき、診断を受けたときの私の心情を思い出した。子育てが楽しくない、わが子なのにきつい、苦しい、大変、そんなことを思っちゃいけないと思ってた。きついことをきついと言えないで苦しんで毎日もがいてた。
けれど、彼女は自分の苦しさをためらわず伝えていた。「うちの子も『保育園に行きたい!』って言うのに行かせてあげれんし、どうしようもなく切なくてさ。どうにかしてあげたいっていう思いで今日はみんなに声をかけたよ。ありがとう!太郎ちゃんママも今日来てくれてありがとう!」
彼女の弱気な本音はストレートで前向きだった。こんな弱音の吐き方もあるんだと初めて知った。彼女がキラキラまぶしい理由は自分の弱いところもまっすぐに出せるからかもしれない。そうだ…隠す必要なんてない。「あの、実は太郎のことなんだけど…ちょっと前に発達障害って診断を受けて…」
ママたちは私の言葉に一瞬だまった。「なんか、ありがとう。すごいね、冷静に受け止められてる。私やったらめっちゃ否定するかも。太郎ちゃんママすごい」そう言ったのはフライドポテトのママ。「なんかうちらにできることある?発達障害について教えて」とキラキラママも続けた。
この言葉を聞いたとき、診断を受けたときの私の心情を思い出した。子育てが楽しくない、わが子なのにきつい、苦しい、大変、そんなことを思っちゃいけないと思ってた。きついことをきついと言えないで苦しんで毎日もがいてた。
けれど、彼女は自分の苦しさをためらわず伝えていた。「うちの子も『保育園に行きたい!』って言うのに行かせてあげれんし、どうしようもなく切なくてさ。どうにかしてあげたいっていう思いで今日はみんなに声をかけたよ。ありがとう!太郎ちゃんママも今日来てくれてありがとう!」
彼女の弱気な本音はストレートで前向きだった。こんな弱音の吐き方もあるんだと初めて知った。彼女がキラキラまぶしい理由は自分の弱いところもまっすぐに出せるからかもしれない。そうだ…隠す必要なんてない。「あの、実は太郎のことなんだけど…ちょっと前に発達障害って診断を受けて…」
ママたちは私の言葉に一瞬だまった。「なんか、ありがとう。すごいね、冷静に受け止められてる。私やったらめっちゃ否定するかも。太郎ちゃんママすごい」そう言ったのはフライドポテトのママ。「なんかうちらにできることある?発達障害について教えて」とキラキラママも続けた。
あとがき
人は自ら助けを求めたときに、必要とする助けを受けられるんだと思います。「これに困っている」と明確に伝えることで周りも支援理解や支援がしやすくなるし、目標も立てやすくなると考えています。
このとき何よりも「弱さもあるから強さもある」と、ママたちから教えていただきました。いつも強くてキラキラしてるのは弱さも受け止めれているからなんだと…。今でも仲良くさせていただいてます。大切な出会いの一つでした。
執筆/まゆん
このとき何よりも「弱さもあるから強さもある」と、ママたちから教えていただきました。いつも強くてキラキラしてるのは弱さも受け止めれているからなんだと…。今でも仲良くさせていただいてます。大切な出会いの一つでした。
執筆/まゆん
(監修:井上先生より)
子育てのストレスには「孤立感」があります。子どもを介してのかかわりとなる「ママ友グループ」は心の支えになる場合もあれば、お付き合いがつらくなることもあります。まゆんさんのように、自分の本音を出し合える仲間の存在は子どもの障害の有無に関係なく互いの理解や心の支えになっていくと思います。
子育てのストレスには「孤立感」があります。子どもを介してのかかわりとなる「ママ友グループ」は心の支えになる場合もあれば、お付き合いがつらくなることもあります。まゆんさんのように、自分の本音を出し合える仲間の存在は子どもの障害の有無に関係なく互いの理解や心の支えになっていくと思います。
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