負けず嫌いのASD息子に降りかかる「すごろくの悲劇」ーー切り替えが難しい「悔しい気持ち」への寄り添い方

ライター:taeko
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子どもでも大人でも、どんなことでも負けるのは悔しいものですよね。特別支援教室(通級指導教室)や放課後等デイサービスで、気持ちの切り替えを学んでいるけど…

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

みなさんは、お子さんが「くやしい気持ち」を抱えたときに、どのように寄り添っていますか?

わが家も特別支援教室(通級指導教室)や放課後等デイサービスで、気持ちの切り替えを学んでいますが、これがなかなか難しい…。

ある日、特別支援教室(通級指導教室)の活動で遊んだ「すごろく」が楽しかったから欲しいと、おねだりしてきたミミ。実際にやったことがあるゲームだったらちゃんと遊べるかなと、すぐに購入しました。弟のふーも一緒に3人でやることに。
負けず嫌いのASD息子に降りかかる「すごろくの悲劇」
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いざすごろくを始めると、さっそく事件が…!ワクワクしながらサイコロを振ったミミ、うれしそうにコマを進めていきます。でも、止まったマスが非情にも「ふりだしにもどる」だったんです。

「どうなるかな」と焦る私。せっかく上機嫌で遊べていたのに、癇癪が爆発してしまうのでは…。
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ミミの様子を伺うと、とても驚いたのですが、その悔しさをグッと堪えていたんです。悔しそうにしながらも、自分のコマをスタートに戻していました。

その姿を見て、「あぁ、普段から教室で学んでいる気持ちの切り替えが、ちゃんとミミもできるようになったんだ!」と、思わず感激してしまいます。その何気ない小さな成長が、とてもうれしかったんです。

そう、ここで終われば、ハッピーエンドの話なのですが…。
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そして、賽は投げられた。更なる悲劇が、ミミを襲うのです

仕切り直して、ミミの順番がやってきました。「どうかよいマスに止まって!」と願う私、そしてミミの手の中から放り出されて転がるサイコロ。コロコロコロコロと、永遠にも感じられる長い時間が流れます。

なんと出た目はさっきと同じ、当然止まったマスは「ふりだしにもどる」でした。

今度は我慢できずに、「もうヤダ!!!!!!」と泣いてすごろくのマップをひっくり返してしまうミミ。一度こうなってしまうと、もう後には戻れません。

そんなミミに、親としてどんな風に接してあげることができるのでしょうか。
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私は、「悔しいのかもしれないけれど、ひっくり返すのは悲しいよ。みんなで遊んでいるのだから、もうミミとは一緒にやりたくないと思っちゃうよ」と、正直に気持ちを伝えました。変に機嫌を取るよりも、まずはまっすぐ伝えたいと思ったんです。

それでももちろん機嫌は直らないので、そのままふーと2人ですごろくを続けることにしました。

ミミにももう一度遊んでほしかった私は、ここである作戦を決行します!名付けて、オーバー気味に楽しんでいる姿を見せて、思わずミミも遊びたくなっちゃう作戦。すごろくの行方に一喜一憂しながら、見事ふーが勝ちました。

少し落ち着いた様子のミミに、「一緒にやる?」と聞いてみると、今度は小さくうなずいてくれました。もうあの悲劇は繰り返すまいと、今度は「ふりだしにもどる」はなしのルールに変更。最後まで楽しく遊ぶことができました。
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すごろくに限らず、子どもたちが積み上げてきたものが「ふりだしにもどる」ような、世の中の不条理にこれからの人生の中で出合うかもしれません。

そんなときにも、その「悔しい気持ち」を乗り越える力、気持ちを切り替える力を、少しずつ少しずつ育んでいって欲しいと願っています。

たかが「すごろく」、されど「すごろく」。だいぶ大袈裟かもしれませんが、そんなことを考えさせられてしまいました。
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執筆/taeko

(監修:井上先生より)
すごろく遊びを通じて、予測不可能なマイナスの出来事に出合ったときに、感情をどのようにコントロールしていけば良いかを学べた体験ではないでしょうか。お母さんと弟さんが遊んでいる様子を見ながら落ち着きを取り戻して、そして「ふりだしにもどる」がないように環境調整をして最後まで終われた成功体験が、今後「ふりだしにもどる」があっても大丈夫という自信になると思います。
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