親の正論は響かない?子どもに「学校に行きたくない!」と言われたら。話の聴き方、伝え方のコツ

ライター:楽々かあさん

もし、子どもに急に「学校行きたくない!」と言われたら、親も焦ってしまいますよね。でも、大人だって「仕事行きたくない」と思う日があるのと同じで、ちっともおかしなことではありません。とはいえ、親にも都合もあるし、子どもの「行きたくない」にも、気乗りしないレベルから深刻な場合まで、段階があります。こんなときは、まずは「否定せずに話を聴く」ことが大事。子どもに「行きたくない」と言われたとき、スグに役立つ話の聴き方のコツを直伝します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

子どもに「学校行きたくない!」と言われたら……

こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・大場美鈴(楽々かあさん)です。
今回のコラムは、子どもに「学校行きたくない!」と言われたときの第一段階の対応、話の聴き方について。

子どもが朝なかなか起きてこなかったり、身支度がちっともすすまなかったりして、「もう、早くしなさい!」なんて急かした途端に「行きたくない!」と頑なに返されたら……。
親にだって、仕事や下の子のお世話など事情や都合があり、「急にそんなことを言われても困る」「熱がなければ行ってほしい」と思うのは、私も気持ちとしてとてもよく分かります。

でも、大人だって、ときには「仕事行きたくないな」と思うこともあるように、子どもの口から「学校行きたくない」という言葉が出るのは、ちっともおかしなことではありません(むしろ、自分の気持ちを正直に言葉にできたことは、ほめてあげたいところです)。

「そんなに簡単に休ませていいものだろうか」「でも、もしも、いじめられていたら……」などと、内心では葛藤しながら親子で押し問答を続けていると、不毛な時間だけが過ぎてしまいますよね。
こんなときは、とにかくまずは、子どもの話に丁寧に耳を傾けることが大事なのです。

とはいえ、話を聴いてあげてたつもりなのに、なぜか、いつの間にか言い争いになっていたり、「もういい!」なんて部屋に閉じこもられてしまったり……「子どもの話を聴く」って、案外難しい気がしませんか。
かつては、毎日のように子どもに「学校行きたくない」と言われ続けた私の豊富な経験から、こんなときにスグに役立つ話の聴き方のコツを具体的にお伝えしたいと思います。

まずは、話を否定せずに聴く

子どもに急に「学校行きたくない」と言われたら親は焦ってしまいがちですが、夏休みなどの長期休暇明けは特に、「ダルい!暑い!メンドクサイ!」など、どんな子どもでもただでさえ登校ハードルが上がりますし、それぞれの子どもに、学校生活の中でちょっとした不安や不満を感じることがあったり、さまざまな負担感や疲労感から体が思うように動かなかったり、あるいはもっと深刻な理由でかなり思いつめていたりすることも。

つまり、「行きたくない」という一言にもさまざまなニュアンスが含まれ、その子どもの心身の状態も段階があるので、親の対応も「これが正解」という一律のものはないと思いますが、どんな理由であれ、その子どもが今どんな気持ちでそう訴えているのか、理解してあげる必要があるでしょう。
そのためには、まずは、子どもの話を否定せずに、丁寧に聴いてあげるといいでしょう。

できるだけ、話の最後まで根気よくつき合ってあげられるといいのですが、朝の登校前などは親も余裕がありませんよね。
ですから、こういったときのためにも、日ごろの子どもの様子から「最近、ストレスがたまってそうだな」と感じたら、早めに時間のあるときにグチを聴いてあげてガス抜きしたり、雑談しながら沢山親子のコミュニケーションをとっておくといいでしょう。
そうすると、子どもも親に本音を話しやすくなる上、「何を不安・不満・負担に思っているのか」などの見当もつけやすいと思いますよ。

また、思春期などで子どもが親とあまり話したがらない場合や、子どもが周りを気遣って「行きたくない」と素直に言えない場合でも、日ごろから子どもの様子をよく観察し、「フツーのとき」の状態を分かっていると、「いつもと少し、様子が違う」と、直感で気がつきやすくなります(場合によっては、こちらから「今日は休もう!」と、ビシッとストップをかけることも必要です)。

では、子どもの話の聴き方の具体的なコツとは?
それはズバリ「あいづち名人になる」こと。

もし、話の途中で気になることがあっても、「でもさー」「ちょっと待って」などと口を挟まずに、ただひたすらに「うんうん」「そっかそっか」「なるほどね」と、あいづちを打ちながら聴いていくといいでしょう。

これって一見誰にでもできそうなシンプルな方法ですが、案外奥が深いんですよ。
言葉だけでなく、時々軽くうなずいたり、子どもの背中に触れながら聴いたり、表情でも今の気持ちに共感してあげると話しやすくなると思います(参考までに、著書より「あいづちバリエーションの例」の一覧表を掲載します)。
出典:筆者著「伝わる!声かけ変換」(あさ出版)p.55より
出典:筆者著「伝わる!声かけ変換」(あさ出版)p.55より
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正論ではなく「子どもの味方」を優先

そして、子どもの話を聴く上で大事なのは、「なぜ行けないのか」を探ることよりも「今のその子の負担感を理解してあげる」ことです。
もちろん、明確な理由が分かれば解決できることもありますが、触れてほしくないこと、言いたくないこと、親にも知られたくないこと、相手の負担になるのが心配なこと、口にするのさえすごく怖く感じること、自分自身でもよく分からないこと……など、子どもにもいろいろと事情があります。

事態の解決を焦ると、つい語気を強めて「なんで行けないの!?」「どうしてイヤなの!?」と、詰問・尋問調になりがちですが、そうすると、せっかく開きかけた心の扉が「ウザい!」「うるさい!」と、閉じてしまうかもしれません。
とはいえ、理由が分からなくては、親だって、どう対応したらいいのか分からない場合もあると思います。
こんなときは理由よりも気持ちに注目して、丁寧に話を聴いていくといいでしょう。

例えば、子どもが「勉強やだなー」と言ったら「どの教科が一番しんどい?」とか、「あーあ、学校ってメンドクサイなぁ」と言ったら「どういうとき、特にそう思う?」……というように具体的に聴きながら、子どもが自分の気持ちを言葉にできるまで待ってあげるのがコツです。
すると、実は「国語の時間にみんなの前で音読するのが苦手」とか、「〇〇先生が、忘れ物した子を怒ってるのを見るのが怖い」とか、「休み時間のドッヂボール強制参加がつらい」など、思わぬことが子どもの心身の大きな負担になっているのが分かることもあります。

子どもの「特に負担を感じる時間・場所・人」などが分かった場合も、親世代の「昔はもっと厳しかった」といった価値観は一旦置いて、「そうだったんだね。話してくれてありがとう」と、今の子どもが置かれた状況を理解してあげるといいでしょう(ただし、先生やクラスメイトの悪口を親が一緒になって言うのは、ネガティブな感情が煽られて問題解決をより難しくする可能性があるので、基本的にはオススメしません)。

こうして話を肯定的に聴いていると、ときには子どもが、「学校なんてバクハツすればいいのに!」とか、「あんなヤツ、XXXのXXXだ!」なんて、道徳的な観点からは「それは、いかがなものか」と思えることを口にすることもあるかもしれません。
そんなときも「そんなこと言うもんじゃない」などといった正論は一旦置いて、たとえ本心から同意できずとも、「それほど、イヤだったんだね」「そりゃあ、腹ぐらい立つよね」などと、気持ちには共感し、親は子どもの味方になってあげることを優先するといいでしょう。
(ただし、子どもが極端な受け止め方をしている場合、落ち着いてから「こう考えることもできる」「こういうものの見方もある」などと、多様な考え方の例を示して、軌道修正できるといいでしょう)

そして、たとえ子どもが親にうまく言葉で伝えられても、伝えられなくても、「そっか、そっか、しんどかったね」「ずっと、つらかったんだね」「いっぱいガマンしてたんだね」……などと声かけして、ヨシヨシしながら共感してあげると、心が少しだけ軽くなると思います。

否定せずに話を聴けば伝わる親のメッセージ

ここまで、子どもに「行きたくない」と言われたときに、親ができる話の聴き方のコツをお伝えしてきましたが、もしも、子どもの感情が強すぎて親が受け止めきれない場合や、状況が複雑で深刻な場合、親の側が丁寧に話を聴く余裕がない場合などは、遠慮なく「話を聴くプロ」を頼りましょう。
こんなとき、私は主にスクールカウンセラーを活用しましたが、一般のカウンセラーや自治体・大学の相談室など、学校とは無関係の外部の相談機関のほうが話しやすいこともありますし、近頃ではオンライン診療を行う心療内科なども増えているようです。

また、思春期にある子どもは特に、親以外の人にも、いつでも自分で相談できるようにしておくといいでしょう。
無料の電話相談・SNS・掲示板などの相談先をスマホの連絡先やお気に入りに登録したり、相談先カードをさり気なく見える場所に貼っておく……など、子どもが「相談してみようかな」と思ったときに、すぐに自分でアクセスできるように予め備えておくのも、大事なことだと思います。

こうして、親や周りの大人に、子どもが今の自分の気持ちを言葉で表現し、状況を一歩引いて客観的に見ることができると、気持ちが落ち着いて前向きになれる場合もあれば、「やっぱり、どうしても無理」という場合もあると思います。
それでも、否定せずに子どもの話を聴いてあげることで、「私はあなたの味方ですよ」というメッセージが伝わるだけでも充分です。

親も子も、お互いに人間なんですから、ちょっと疲れちゃったり、あんまり前向きになれない日があるのは当たり前です。
それでも、おうちの人が自分の話に耳を傾け、気持ちに寄り添って、どんなときも味方でいてくれるという安心感があれば、学校に行けても行けなくても、その子どもはきっと大丈夫です。
文:大場美鈴(楽々かあさん)
(監修:井上先生より)
「学校に行きたくない」と言われたときに、まずその気持ちを受け止め、その理由に耳を傾けていくということはとても大事なことですね。長期的な視点で見ると、その日学校に行くか/行かないかという問題よりも、「困難なときに誰かに相談できる」、ということの方が大事になってくるかもしれません。
楽々かあさんのように、上手にカウンセリングのテクニックを使うことで、お子さんが何を困難に思っているかをうまく引き出し、そして整理して、困難な問題について一緒に考えてあげる、このようなプロセスとそれによる成功体験が思春期において、とても大事になってくると思います。

このコラムを書いた人の著書

大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
https://www.amazon.co.jp/dp/4866672129
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大場美鈴 (著)
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