「就学時健康診断」涙で途中離脱。ASD・場面緘黙の娘、安心できる学校生活のために何が必要だった?診断前の出来事を今振り返って【専門家のアドバイスも】

ライター:よしだ
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わが家の長女ゆいは現在小学6年生。小学5年生のときに軽度知的障害、ASD、場面緘黙の診断がおりています。
今回はゆいが小学校に上がる前、就学時健康診断を受けたときのお話をさせていただきたいと思います。当時は障害があるとは少しも感じていなかったのですが、ここで気づいて何か支援へ繋げることができていれば…と思ったエピソードです。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

小学校の就学時健康診断で…

ゆいの小学校の就学時健康診断では、高学年の生徒たちがアテンドをしてくれました。年長の子どもたちは保護者から離れ、お兄さん・お姉さんに手を引いてもらって各教室を回り、さまざまな検査を受けます。ゆいも初対面のお姉さんと手をつないで待合室を出発しました。
私は待合室でゆいの帰りを待っていたのですが、しばらくすると先生から声をかけられました。「お子さんが泣いてしまい、先に進めなくなっている」と言われ、私はゆいを迎えに行きました。
待合室で娘の帰りを待っていると先生から「お子さんが泣いてしまい、先に進めなくなっている」と言われました。
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ゆいは聴覚検査の会場になっている教室の前でしくしくと泣いていました。隣には困った顔をしたアテンド役のお姉さん。きっと初めての場所で、初めての人に連れられて行くことに大変なストレスがかかっていたのでしょう。いくつかの検査には何とか耐えていたようですが、最後の聴覚検査を受ける前に限界が来たようです。

私が付き添って検査を受けさせようとしましたが、学校の先生に「無理をさせるのはかわいそうなので、特に聴こえ方に気になるところがなければもう検査は受けなくてもいいですよ」と言われました。そのお言葉に甘えて、ゆいには聴覚検査を受けさせずに就学時健康診断を終了しました。
聴覚検査の会場になっている教室の前でしくしくと泣いている娘。隣には困った顔をしたアテンド役のお姉さんが立っていた。
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そのときの私は、この子は人見知りが強い子だなとしか思っていませんでしたし、まだ幼いから仕方ないと特に気にしていませんでした。今思えば、先の見通しが立たないと不安を強く感じるというASDの特性があったのだと分かります。前もって写真を見せながら本人に流れを説明するか、事情を説明して私がついていけば、少しは違った結果になったのかもしれません。
今までの保育園生活から一気に環境が変わり、とても疲れていた娘を、私はさらに追い込んでいたと思います。
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小学校入学後の娘の様子は…

入学後も、ゆいは新しい環境に慣れるのに長い時間がかかりました。私は「早く周りの子どもたちのように、学校に慣れて楽しく登校してほしい」と、励ましや対応をしていました。そして、ときにはみんなと同じようにできないゆいにイライラし『可愛い子には旅をさせよ』という言葉を曲解して、ゆいに一人で行動させるようにもしました。でも、こういうやり方は、ゆいには効果がなく、結局長い時間をかけて慣れていくことしかできませんでした。今までの保育園生活から一気に環境が変わり、とても疲れていたゆいを、私はさらに追い込んでいたと思います。
学校の先生と相談して、発達障害のある娘への支援について相談する母
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娘が安心して学校生活を送るために

もう少し早く発達障害があることに気づいていたら、学校の先生と相談してゆいに合った環境づくりをしていただけたのかもしれません。保護者が感じるカンというものは大切にしなければと感じました。現在のゆいはさまざまな支援をしてもらい、学校に楽しく通っていますが、ここに来るまでに、つらい思いをさせてしまいました。今後このような思いをさせないためにも、娘の特性をより理解し、早めに判断できるようにしていきたいと思います。
(監修:初川先生より)
就学時健康診断、学校生活開始時に、新しい環境に慣れなかったエピソードのシェアをありがとうございます。就学時健康診断はお子さんにとってまさにイレギュラーな単発イベントです。聴覚検査は見慣れない機械を使うので、びっくりした面もあるかもしれませんね。

確かに就学時健康診断のために入念な準備をして、本人が戸惑うことなくできることも、お子さん本人の負荷を減らすという点ではよいことですが、その場合、どれほど入念な準備をしたのかを学校に細やかにお伝えいただきたいと思います。学校の先生方からしても、多くのお子さんにとって新奇場面である就学時健康診断での様子を見ながら、次年度の新入生たちが新しい環境にどのように反応するかを見ている面があります。学校からすると、毎年就学時健康診断をしているので、健診を受ける子どもたちがだいたいどのような様子を呈するかは経験的に知っており、その経験則と照らし合わせつつ、お子さんをアセスメントしているとも言えます。そのような就学時健康診断の場で準備の末に適応的に過ごすことは、つまずきやすい状況という情報を共有しづらくなる面もあります(ただ、繰り返しますが、お子さんの状態や負荷のかかり具合によっては、準備をして臨んだ方がいい場合もあるかもしれません)。

また、昨今のコロナ禍で、就学時健康診断のやり方が変わっているところもあると思います。コロナ禍以前は、いらこさんの記述にもあったように、高学年のお兄さんお姉さんがアテンドしてくれましたが、コロナ禍によって親子で回る場合も多いのではと思います。
新しい環境に慣れるために、場数をふませる、励ますというのは、保護者の方がよく最初に取られる対応です。それ自体が悪いわけではありません。そうした対応をしてみたけれど、お子さんがつらそうである、なかなか環境に慣れないなどの気づきがあった際に、学校の先生などにご相談され、これまでとは違う対応(そしてそのベースとなる見立ての共有)を取られたらよいと思います。うまくいったことは継続し、うまくいかなかった場合は対応を変える。それが全ての大原則だと思います。
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