博士になりたいASD息子、大学院入試に思わぬハードル!?TOEICの長文読解に苦闘、面接に向かう姿に母が驚いたワケ
ライター:寺島ヒロ
凸凹兄妹の兄タケルは、現在22歳、大学4年生です。今年の夏は大学院入学を目指し、主に英語の勉強を頑張っていました。専門科目は自信があり、英語さえ攻略できれば大丈夫!と言うタケル。しかし、土壇場になって思わぬハードルが...!今回は進路相談に絡めて、大学院入試に挑んだときのことをまとめてみます。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
「将来の夢はハカセ!」なタケルの大学院入試
小さなころから「夢は博士になること!」と言っていたタケル。わたしも「夢があるって良いね、ふんふ~ん♪」と話半分に聞いていましたが、毎日のことに追われているうちにあれよあれよと中学高校を卒業、そして大学4年生になりました。
そう!ついに博士課程前期(タケルの学校では修士課程ではなく博士課程前期と呼称しています)試験、いわゆる「大学院入試」を受けるときが来たのです。
試験の内容は、目指す学部学科の課す専門科目の筆記試験と、TOEICのスコア、そして面接を合わせた加点方式。点数が高いほど合格するというシンプルにして非情なシステムです。当然ですが障害があるからといって加点されるわけではないので、とにかく取れる機会にコツコツと点を取っていかねばなりません。
課題は中学のころから苦手な英語
「専門科目は自信がある。英語さえできれば勝ち!」というタケル。
タケルの受ける学部では英語の筆記試験を行わず、TOEICのスコアを提出する方式です。通常であれば、一発勝負になる筆記試験より、今まで取ったTOEICの一番良いスコアを出せばいいという今回の方式の方が優しく感じます。
しかしそのTOEICで十分な点を取るのは簡単ではありません。なにしろ予想合格ラインは650点。英検2級を取るのもぎりぎりだったタケルには、ちょっと無理なんじゃないかな...という印象です。
しかも...
英語がもともと苦手なタケル。当然これまでにTOEICの試験など受けたことはありません!
タケルの受ける学部では英語の筆記試験を行わず、TOEICのスコアを提出する方式です。通常であれば、一発勝負になる筆記試験より、今まで取ったTOEICの一番良いスコアを出せばいいという今回の方式の方が優しく感じます。
しかしそのTOEICで十分な点を取るのは簡単ではありません。なにしろ予想合格ラインは650点。英検2級を取るのもぎりぎりだったタケルには、ちょっと無理なんじゃないかな...という印象です。
しかも...
英語がもともと苦手なタケル。当然これまでにTOEICの試験など受けたことはありません!
大学院入試までにTOEICの試験を受けられるチャンスはわずか1回!事実上の一発勝負です。残念ながら、タケルは大学の優しさを活かすことができませんでした。
TOEICの聞き取り試験に苦戦!
英語で、特にタケルが苦手なのは聞き取りと長文読解です。
元々耳から情報を取るのが苦手で、一ヶ所「ん?分からん」という部分があると、「なんて言ったんだろう?」と考え始めてしまい、そこから先のことが耳に入って来なくなります。はっきりとは分かりませんが、発達障害の特性が影響しているのかもしれません。
元々耳から情報を取るのが苦手で、一ヶ所「ん?分からん」という部分があると、「なんて言ったんだろう?」と考え始めてしまい、そこから先のことが耳に入って来なくなります。はっきりとは分かりませんが、発達障害の特性が影響しているのかもしれません。
長文読解が苦手なのは、発達障害の特性からくるもののようです。細かい文字が何行も並んでいると、目で追っている行がいつの間にか隣の行に飛んでいたりするのです。普段であれば「意味が通らないな?」と思ったら、戻って読み直すだけなのでそれほど問題になりませんが、時間制限のある試験などでは大変なタイムロスになります。
大学入試の模試では、最後の長文の問題を読んでいるところでタイムアップになり、無回答のことも多かったです。問題数の多いTOEICでは、このあたりがネックになりそうです。