中1発達障害息子、診察室でいつも無口に…普段はおしゃべりなのになぜ?成人後の「1人で受診」に備えてできること

ライター:丸山さとこ
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息子のコウはADHD治療薬を服用しているため、定期的に発達外来のある病院へ通っています。診察中のコウはリラックスしているのになぜか無口で、首を縦横に振る程度の反応しか見せません。先日、そんな彼についてカウンセリングで相談してみました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

なぜか診察では無口になるコウです

息子のコウは、小学4年生から中学1年生の今までADHD治療薬を服用している。そのため、定期的に発達外来のある病院へ通っているが、診察中はほぼ口を開かない。先生から「調子はどうですか?」と聞かれても無言で、首を傾げたり頷いたりするばかり。それなのに診察室を出るとペラペラと話し出すため、私はコウの話を聞きながらも「その話をそのまま診察室で言っておくれよ」と突っ込むことがある。
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診察室を出たとたん、ペラペラしゃべり出すコウの不思議

コウは小学4年生から中学1年生の今までADHD治療薬を服用しています。そのため定期的に発達外来のある病院へ通っているのですが、診察中はほぼ口を開きません。

先生から質問されても、「ハイ」とうなずくか「う~ん…」と首を傾げるかで反応が薄いコウです。私が「最近〇〇って言ってたね」と話題を振ってもコクコクとうなずくばかりで、先生が促しても詳細を話すことはありません。

それなのに、毎回診察室を出た途端に「今日さ~」「僕は…」とペラペラ話し出すのだから不思議です。

緊張しているわけではないらしい

なぜ診察室では話さないのかコウに聞くと、本人にもよく分からないとのこと。緊張しているわけでもないらしく、確かに私から見ても特に緊張したり固まったりしている様子はありません。

発達外来の医師は威圧感もなく話しやすい相手のように思いますし、コウも先生への印象は良いようです。全く話さないというわけではなく、時折うなずいたりして相づちを打つ姿は見られます。

また、コウは「家庭以外の場や家族以外の相手に緊張する」ということは特にないと言います。
コウは、家庭以外の場や家族以外の相手に緊張することは特にないと言う。実際に学校での様子を見ると、クラスメイトと話したり授業中に発言したりと、彼なりに楽しんで過ごしているのが伺える。運動会でもクラスメイトと話している。
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実際に公開授業や運動会などの学校行事でコウの様子を見ると、クラスメイトと話したり授業中に発言したりしていることも多く、多少は気を張っているものの彼なりに楽しんで過ごしているようです。

このように『診察室で医師と会話できない状態』の理由は今一つ分かりませんが、コウも5年後には成人して1人で診察を受けるようになるだろうと考えると少し気になります。

いずれはコウも1人で診察を受けるのだな、と考えると…

「オープンクエスチョンに弱いからかも?」の言葉に納得!

今は私が診察に同伴していますが、将来を考えたとき1人で医師の問診に答えられないのは困りそうです。先日スクールカウンセリングにて相談する機会があったため、「今すぐ困ることではないのですが…」と伺ってみました。

先生は「もしかしたら、診察では『最近どうですか?』などのオープンクエスチョンが多くてコウ君にとっては難しいのかもしれませんね」と推察してくださり、私は「それは確かにあるかもしれない」と納得しました。
カウンセリングルームにて「もしかしたら、診察では『最近どうですか?』などのオープンクエスチョンが多くてコウ君にとっては難しいのかもしれませんね」と推察するカウンセラーと、「それはあるかもしれませんね!」と納得する私。
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また、コウは『頭の中にあることをサッと言葉にすること』や『自分の内面を説明すること』が苦手な傾向もあります。

知識を述べることや、既にストーリーとして自分の中でまとまっている文章を話すときはスムーズな彼ですが、「どうしてですか?」「どう思いましたか?」などの質問も多い診察中の会話は、彼にとっては難易度が高い会話なのかもしれません。

将来の「1人で受診」を考えて、今できることは?

最近コウの生活は比較的落ち着いており、本人の自覚としては大きな問題はありません。そのため、「調子はどう?」と聞かれて「いいです」と答える大雑把な応答でも困ることはありませんが、今後再びトラブルや不調などの困りごとが起きるときもあるかもしれません。

『病院の問診で聞かれやすいこと』をあらかじめ紙に書き出しておいたり、その場で答えられなくても次回までに考えておいたりするなど、彼なりの方法で診察を受けられるように練習していきたいなと思いました。
「いずれ1人で通院することも視野に入れて練習していきたいな」と思う私。「病院の問診で聞かれやすいことをあらかじめ紙に書き出しておくのはどうかな?」と提案する私に対し、「いいねー。もし答えられなかったら次までに考えておくのもいいかも」と笑顔で返すコウ。
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執筆/丸山さとこ
(監修:鈴木先生より)
ASDの患者さんは抽象的な表現の理解が苦手なため具体的に聞く必要があります。「最近どう?」よりも「学校はどう?」、それよりも「学校の授業はどう?」、それよりも「学校の英語の授業はどう?」とより具体的に尋ねた方が分かりやすいのです。主治医も行間が読めるかどうかを確認するためわざと省略して尋ねることもあります。親御さんと一緒だと話しづらいという場合もあるので、私の外来では親子別々に入れて診察するようにしています。そうすることで親に気遣うことなく話せることがあります。そういう患者さんは、親と一緒のときに親の顔を確認したり気遣ったりして話しています。
また、ASDの並存疾患の一つに場面緘黙があります。家では普通にしゃべっているのに、玄関を出た瞬間あるいは目的地に到着した瞬間にしゃべらなくなることがあります。相手と話す不安が多い場合にはSSRIなどの抗不安薬で対処する方法もあります。
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