「親だから泣いちゃだめ?」発達障害児2人育児、癇癪や多動、声かけストレスに我慢の限界ーー子どもたちに感情をぶつけてしまった日【専門家アドバイスも】

ライター:スガカズ
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発達障害のあるお子さんに話しかける際に、特性から指示が通りづらいと感じる経験は少なからずあるのではないでしょうか?
わが家でも長男(ADHD、ASD)と次男(ADHD)と話をしたり指示をする際に「気づいてもらえない、聞いてもらえない」ジレンマを感じることは頻繁にありました。
落ち込んでいたある日、ついに私は気持ちを抑えることができず、2人に怒鳴ってしまいました。怒鳴ってすぐ後悔しました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

発達障害のある子ども2人との生活はへこたれそうになることの連続で…

わが家の長男と次男には発達障害があります。私は、2人の特性である多動、衝動性、過集中、注意散漫に幾度となくへこたれそうになった経験があります。

長男と次男は、特性によりそれぞれ話しかけてもなかなか反応がないことが多く、年齢も3歳差で比較的歳が近かったためか、仮に長男が反応したとしても次男が次の行動の妨げになってしまうことがよくありました。
声色を変えたり伝え方を簡潔にしても、なかなか思うようにいきません。たとえば「お風呂に入るよ」と伝えてようやく行動にうつるまで20回(約1時間…)は声かけをしていたと記憶しています。

気持ちが落ち込んでいたある日、私の我慢に限界が来て…

忘れられない経験があります。
当時長男は小4で、次男は小1で、2人とも通常学級に在籍していました。次男はまさに小1の壁にぶち当たっていたころです。

次男は当時学校生活になじめず毎日学校と連絡を取り合う日々でした。ある日いつものように私は、放課後担任の先生から「次男が癇癪(かんしゃく)を起こした背景」を聞かされ、落ち込んだ状態で学校から帰宅しました。
次男は当時学校生活になじめず毎日学校と連絡を取り合う日々でした。ある日いつものように私は、放課後担任の先生から「次男が癇癪(かんしゃく)を起こした背景」を聞かされ、落ち込んだ状態で学校から帰宅しました。(イラスト、スガカズ)
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「私がやっていることは無意味なのではないか?」「(何を言っても聞く耳を持たないのなら)2人は別に私がいてもいなくても変わらないのではないか?」と感じながら子育てをしていました。そんな毎日が続き、私自身なんとかギリギリの状態を保ったまま日々過ごしていましたが、あの日ついに我慢ができず、2人を感情的に(泣きながら)怒鳴りつけてしまいました。(イラスト、スガカズ)
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私は2人の心を傷つけたくはありませんでしたし、自分自身を嫌いになってほしくはありませんでした。
ですが、学校生活を送る上でどうしても「普通」と比べざるをえない状況に陥ることが頻繁にあり、そのたびに「私がやっていることは無意味なのではないか?」「(何を言っても聞く耳を持たないのなら)2人は別に私がいてもいなくても変わらないのではないか?」と感じながら子育てをしていました。

そんな毎日が続き、私自身なんとかギリギリの状態を保ったまま日々過ごしていましたが、ある日ついに我慢ができず、2人を感情的に(泣きながら)怒鳴りつけてしまいました。

すると、それまでこちらを向くことはなかった2人が、申し訳なさそうな顔をして、「ごめんなさい」と言いました。
次男も、いつもなら癇癪(かんしゃく)を起こすことが多いのですが、この日は謝ってきました。

しばらく時間が経つと、私はだんだんと子どもたちに申し訳なくなってきました。
「親が感情的に『あなたは、こんなことができない』『私はあなたに傷つけられた』と言ってはいけないはずなのに、つい言ってしまった」「親は子どもの前で泣いてはいけないのではないか?」と後悔しました。

どうすればいいのか自分自身悩みましたが、時間をおいてから2人に「ごめんね。お母さん実は我慢しすぎちゃったみたい」と謝りハグしました

気持ちを数値化、予告、話し方を変える

「感情任せで怒鳴る」結果にならないように試行錯誤。起こる前に予告をする、「怒りたい気持ちが8です。10になると怒ります」などこちらの気持ちを数値で表すなど。(イラスト、スガカズ)
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感情的に怒らないようにするための工夫、その2。「おばあちゃんごっこ」。自分ではなく「おばあちゃん」が話しているので怒りの気持ちも和らぐ。子どもたちも面白がって耳をかたむけやすい。(イラスト、スガカズ)
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その後、「感情任せで怒鳴る」結果にならないように試行錯誤することにしました。

誰だって怒りたくはありませんが、その日の状況によって怒ってしまうことがあります。
私は当時、「怒ってはいけない」と自分に強く言い聞かせていたのですが、この一件から強く怒ってしまったあとは素直に謝って、こちら側の気持ちを伝えたり、「そろそろ怒りそうだぞ」とあらかじめ子どもたちに予告しておくようになりました。もし怒ってしまったときは、怒ったあとにハグして仲直り。それから子どもたちに「親でも怒ることがあるし、泣くこともある。なにをしてもいいわけではない」ことを伝えるようしました。

執筆/スガカズ

臨床心理士・初川先生からの育児アドバイス

感情的に怒ってしまったこと、そのことへの逡巡する思いのシェアをありがとうございます。同じようなことになって悩んでいらっしゃる保護者の方は多いのではないでしょうか。子育てというものは、理屈や理論、理想通りにはなかなかならないですね(私も子育て中ですが、心の底からそう思います)。私の尊敬する先生は「子育てはあきらめのプロセス」と語ってらしたし、心理士の仲間内では「まさか自分が子どもにこんなに怒る日が来るとは思わなかった(こんなに怒ったり悲しんだりする自分が、自分という人間の中にいるとは思ってもみなかった)」という話が出たり、みなさん多かれ少なかれこうした葛藤に見舞われるように感じます。頭では分かっているのに、できない。子どもとはいえ、自分とは違う人間なのだから期待しすぎてはいけない。分かってはいるけれど、なかなか難しいのですよね。

まずお伝えしたいのは、今回のように怒って泣いてしまうほどになるということは、スガカズさんがとてもとても頑張っていらしたからだということです。学校からの連絡(これ、なかなかつらいですよね)を受け、頑張っているのにどうにもうまくいかない、自分だけが一人で頑張っているような気がする。そうした思いが生まれる際は、おそらく、頑張りすぎて無理が生じており、ゆとりがなくなっている・視野が狭くなっているサインです。もしそういう心境になられたら、カウンセラーや信頼できるお友達など、話を聞いてもらいたいと思う人に胸の内を聞いてもらうことをおすすめします。具体的に何も解決しなかったとしても、心の空き容量は増えます。ゆとりが生まれたら、また頑張ろうと思えます。

そして、今回のように、お子さんにわーっと怒ってしまった場合。私はスガカズさんの取られた対応で良いと思います。落ち着いてから謝る。怒りすぎたことを謝る。スガカズさんのされたように「お母さん、我慢しすぎちゃったみたい」など、理由を説明して謝る。そこに尽きます。もちろん、そこまで感情的に怒らずに済むならそれにこしたことはありません。そして、いくら感情的になったとはいえ、超えてはいけない線(暴力をふるってしまう、食事を与えないなど)もあります。そこには気を付けていただきたいですが、しかし、感情的にわーっと怒ってしまう、泣いてしまうことも時にはあると思います。それは、子育てという営み、家族としてともに生活をするという営みが、決してきれいなだけのものではないからです。親密な関係性の中では、常に理知的に過ごすというのは困難です。それは若いころの友達関係や恋人関係を振り返っていただければ思い当たることがあるかと思いますが、つい感情的になる、言いすぎてしまう、へそを曲げてしまう。そういうことが親密な関係性ではどうしても出てきがちです。大事なのは、そのあとで、そうして時々感情的になったとしても、その関係性を修復し、共に過ごす生活を営み続けるということです。怒りすぎてしまったと思ったら謝る、そしてまたそこからやり直す。そのこと自体も、大事なことだと私は感じています。きれいなドライな子育てなんて、ないのではないでしょうか。

ただ、繰り返しますが、むやみに感情を爆発させてもお子さんに負荷がかかり、場合によっては情緒不安定になる可能性もあります。そこで出てくるのが工夫です。スガカズさんのされた、怒り度合いを点数化して伝わりやすいようにする、口調を変えてみる。とても良い工夫だと思います。そうして、保護者の方ご自身の感情の手綱を取りつつ、なくてもよい“爆発”を抑えつつ、そしてなにより、共に生活をする間柄として気持ちの良い関係性を一緒に作ってゆく。そうした営み自体が、悲喜こもごもになるとは思いますが、充実した試行錯誤、子育ての醍醐味となられることを願います。

(監修:初川先生より)
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