「友達なんかいらない」「生きてる意味ない」自閉症小3息子、否定されて負の感情が大爆発!子どものつらい気持ちに気づいたら【スクールカウンセラーのアドバイスも】

ライター:taeko
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毎日学校で頑張っている自閉スペクトラム症(ASD)のあるミミ。放課後は自宅でゲームをするのが楽しみ。その楽しいはずの時間が悲しみに…。すると日々感じていた気持ちがあふれ出してしまい…。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

自閉スペクトラム症(ASD)のある息子はゲームが大好き!

自閉スペクトラム症(ASD)のある小3のミミ。最近は学校から帰ってきたらパパに見てもらいながらゲームをやるのにハマっています。パパにアドバイスを聞きながら楽しんでやっているけれど、パパは真剣故にミミに厳しくアドバイスすることもしばしば…。

ある日、厳しすぎるパパの態度に泣いてしまったミミ。以前も同じようなことがあったので、私はそこまで気にせずに見守っていましたが、パパはその後ミミが飼っている虫にエサを与えていないことに気づき…さらに注意はヒートアップ!

するとミミは泣きながら台所から果物ナイフを取り出し、自分の左手へ…今にも左手を傷つけてしまいそうな状況に私は慌ててナイフを取り上げ、「こんなことしちゃだめだよ」と言いミミを抱きしめました。ミミの代わりにエサやりをしているパパを見ながら「パパはミミに命を大切にできる子になってほしいんだよ」と伝えました。

ですが、ゲームとエサやりの件でショックが重なり、ミミは涙が止まりません。
パパは真剣故に自閉症息子に厳しくアドバイスすることもしばしば…
ある日、厳しすぎるパパの態度に泣いてしまいました
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学校での不満を訴える姿に…

とにかくミミを落ち着かせようとパパから離れた場所で抱きしめたまま話を聞くことに。するとミミからは「学校なんて役にたたない、行ってもしょうがない、なくなればいいのに」「勉強なんて嫌い」「生きててもしょうがない。生まれなければよかった」などと衝撃的な発言が次々と…。

また、授業で発言をしているときにクラスメートに「は?何言ってるの?」と言われたことが悲しかったことも教えてくれました。(ミミは思ったことを周りの状況を見ずにどんどん話すので、その様子をクラスメートが指摘したのかな…?)

しばらくなだめていたのですが、ミミのマイナス思考は止まらず…「もうみんなが話しかけてきてもあっちいけ!って言うんだ。友達なんていらない!」「生きていても仕方ない、ママとパパは結婚しなければ良かった」と言い出しました。

流石にひどすぎると思って、私はミミを「そんなこと言っちゃだめだよ」と叱りました。私が怒ったことを察したミミは布団をかぶって静かにしていました。

1時間ほど過ぎて、弟のふーが帰宅するといつものご機嫌なミミに戻っていたので安心しましたが…このままでは良くないと翌日私はこんなことがあったんです、と一連の事件を担任の先生に相談しに行きました。
自閉症息子から「学校なんて役にたたない、行ってもしょうがない、なくなればいいのに」「勉強なんて嫌い」「生きててもしょうがない。生まれなければよかった」などと衝撃的な発言が次々と…。このままではよくないと翌日私はこんなことがあったんです、と一連の事件を担任の先生に相談しに行きました。
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担任の先生から話を聞くと

担任の先生から話を聞くと、学校でのミミの様子を教えてくれました。

体育の授業でドッジボールをやっていたときに突然動かなくなってしまったミミを見て先生は「みんなでやっているんだからやめたらダメだよ」と声をかけたそうです。しかしミミは味方が減って標的は自分だけ、ボールを自分から取りに行くのも怖いし、もう諦めたいという気持ちを抱いてしまい、早くボールに当たってゲームを終わりにしたかったようです。

また、物事を悪くとらえて人やモノのせいにしたり、声が大きかったりするので女子から苦情が多発していました。そのこともあり女子が苦手なミミ。体育着に着替えるときに女子と目が合っただけで「おれのこと見てた!女子なんて嫌いだ!」と思ってしまったようで、体育の時間だけでもかなりのストレスがあるようでした。

ミミに我慢はしてほしくない…。先生にお話しを聞いて、ミミも学校でいろいろな経験をしていろいろな気持ちを感じていて、また我慢していることもたくさんあることが分かりました。今回はパパとのゲームでのやりとりがきっかけで、ミミの普段から感じていることや我慢している気持ちがあふれたことで本音を聞くことができたけれど、悩んでいることや嫌なことがあったらもっと早く気づいてあげたいし、話してくれるような親子関係でありたいと思いました。

とはいえ、今ミミが一番楽しんでいるのはゲームなので、またパパとトラブルになりそうだったら早めに間に入ってあげようと思いました。少しでもミミが家にいる間は安心して過ごせるような環境にしてあげたいです。
少しでも自閉症息子が家にいる間は安心して過ごせるような環境にしてあげたいです。
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執筆/taeko

(監修:初川先生より)
ミミくん、家庭や学校で苦戦する場面が募っていたのですね。ナイフを手にしたとの展開にヒヤッとしましたが、それほどまでにつらいという気持ちをどうすることもできず、その気持ちの強さがそうした行動につながったのでしょう。

ゲームのような楽しいとき、またクラスの女子たちとの関係など、おだやかな心持ちというよりも、良くも悪くもちょっと興奮度が高いようなとき、そんなときに、「ダメ」や否定するようなメッセージが入ると、まるで自分全てがダメのように被害的に受け取ってしまったということだと思います。そして、そうした強いネガティブな気持ちになった記憶というものはつながっているので、1つつらいことがあると、「あのときのあれも、このときのこれも…」と頭の中では芋づる式に思い出されてしまいます。パニック状態ともいえますが、そのように一旦思い出されてしまった嫌な記憶は、なかなか自分で収めることができなかったり、嫌な記憶を平然と思い出すことは困難で、嫌な記憶はそのときの気持ちを伴って思い出されるので、まるで今体験しているかのようなつらさを感じることになっていたと考えられます。応急処置的に、クールダウンとして、布団にくるまって過ごすなど、ほっとするようなことをできたのは何よりです。

学校の先生にもお話され、学校での様子(苦戦する様子)が聞けたのは何よりです。調子が良くないときは、学校でも家でもうまくいっていないことが往々にしてよくあります。先生とコミュニケーションをとり、一緒に見守る体制が取れると良いですね。

そして、嫌な気持ちに全くならずに生きていくことは残念ながら難しいです。いいこともあれば悪いこともあるのが日常です。我慢している気持ち、つらい気持ちをお子さんが話すことができるのは大切なことですね。その際に大事なことは、励ましたり、否定したりしないということです。嫌な気持ちを語ると、「そんなこと言うもんじゃない」「あなたにも問題がある」「大丈夫よ、そんなこと気にするんじゃないよ」と、大人が良かれと思って強めのメッセージを伝えてしまうことがあります。
しかし、大事なのはそこではなく、まずは、嫌な気持ち、つらい気持ちを聞いて受けとめるということです。「そうか、それはつらかったね」「そんな嫌なことがあったら悲しくなっちゃうね」「話してくれてありがとう」。つらい気持ちをつらい気持ちのまま受けとめる。あなた(子)がそう思うのは自然なことで、その気持ちのままで大丈夫(怒っているなら怒っているで、悲しいなら悲しいで大丈夫)という心構えで受け止める。そうすることで、お子さんがつらかった話をまたしても大丈夫、お母さん・お父さんと話すと安心するという関係になっていきます。

最後に、お父さんとゲームで真剣になるのは調子の良いときは良いかなと思いますが、うまくできないとき(心がちょっと弱くなっているとき)に真剣にダメ出しされるとつらくなりますね。親と子は対等な関係ではなく、大人は子どもよりも経験値が高い分、器用にできてしまうことがたくさんあります。そうしたそもそもの設定として、子どもはみじめな気持ちになりやすいので、そのあたり加味して、一緒にゲームで楽しめると良いですね。
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