過酷な障害児育児、産後トラブルで母は膀胱炎に!ダウン症赤ちゃん連れの通院はハードルが高くて…

ライター:星きのこ
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こんにちは。漫画家の星きのこです。
現在7歳になるダウン症のある男の子、きいちゃんを育児中です。
前回は、きいちゃんの産後直後から病院通いが大変だったという話を描きました。

今回は、その親である私自身も、わが子に障害があるゆえに、自分の病院通いが大変だったという話をしたいと思います。

監修者鈴木直光のアイコン
監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

産後直後の一番の悩みは「哺乳問題」

きいちゃんには 21番目の染色体が通常よりも1本多い「ダウン症候群」という疾患があり、いろいろな合併症を持って生まれてきました。(心房中隔欠損症、動脈管開存症、甲状腺機能低下症、などなど…)生後7日目に「ダウン症の疑いがある」と告知を受けてから、遺伝子検査、そしてこの合併症を見てもらうために病院通いが始まったのです。

産後直後の私にとって、実は一番の悩みは合併症の一つの「低緊張」からくる哺乳問題でした。低緊張とは、筋力が通常よりも弱いことを意味します。なので、ダウン症のある赤ちゃんは、通常の赤ちゃんよりも肌も筋肉も柔らかく、力がありません。顔の筋肉も例外ではなく、それゆえに母乳を吸う力がなかったり、哺乳瓶のミルクでさえもなかなか飲めなかったりします。

最初、まだダウン症と告知をされていなかったとき、なかなかきいちゃんが母乳が飲めないでいるのを、私が不器用なせいで上手くきいちゃんにミルクを飲ませられないんだと自分を責めていました。通常2回で終わる母乳教室を、自ら志願して、退院まで何回も繰り返し通ったりしていました。(今思い出しても目頭が熱く…(泣))
ダウン症のあるきいちゃんは哺乳力が弱く、うまく授乳ができなかったのだが、まだ障害を知らなかったため自分のせいだと責める母。出産後、退院するまで母乳教室に通い詰めた。
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言うまでもなく、赤ちゃんがミルクを飲めないというのは生死に関わる大問題です。産院から退院するときも、特別に産院用の一番吸い口が柔らかい哺乳瓶をいただき、「とにかくミルクを飲ませて大きくしてあげるように」と医師から言われました。

ところが…やはり哺乳力が弱く、なかなかミルクを飲めないきいちゃん。規定の量を飲ませるのになんと毎回1時間かかっていました。

しかもよせばいいのに、そのころネット検索魔になり果てていた私は(障害児母あるある…)どこかで「ダウン症のある子どもには母乳がいい」という記事を見つけて、無理やりきいちゃんに母乳を飲ませようとしたり、母乳が枯れないように毎回、搾乳をしていました。

さらに哺乳瓶を煮沸したりしなければいけないので、かかる時間がもう1時間プラスで合計2時間!!新生児の授乳は3時間ごとなので、1時間後にはもう次の授乳時間がやってきてしまいます。

それでなくても途切れ途切れの睡眠なのに、こうなると睡眠時間が完全に足りず、私の身体は疲労MAX。疲れが出て、産後1ヶ月もしないうちに膀胱炎になってしまいました。

あのときの私に言ってあげたい…ミルクでもダウン症のある子どもは元気に育つよ!!と…!
ダウン症のある子どもには母乳が良いと聞き、母乳育児にこだわっていたが、「ミルクでもダウン症のある子どもは元気に育つよ」と、当時の自分と現在頑張っているお母さんたちに言ってあげたい。
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でもあのころの私は、障害の告知を受けたばかりのショック状態だったので、きいちゃんの身体が少しでも良くなるなら、何でもしてあげたいと必死だったのです。

話を私の身体に戻します。
産後1ヶ月未満で膀胱炎になった私は、自分の代わりにきいちゃんを見ていてくれる人もいなかったので、近所のクリニックに新生児のきいちゃんを連れて駆け込みました。(膀胱炎になった方は分かると思うのですが、お腹痛くて地獄ですよね~汗)

受付で看護師さんに、膀胱炎の検査のために、検尿をしてくださいと検尿のコップを渡されました。

「え…いや、ちょっと待って、きいちゃんを抱っこしたまま検尿するの!?それはかなり難易度が高すぎる!!」と思った私は、検尿する間だけきいちゃんを預かってもらうことはできないか看護師さんにお願いしました。

すると、看護師さんは、
産後の無理がたたって膀胱炎になってしまい、生後1ヶ月のダウン症のある息子を連れて近所のクリニックへ駆け込んだ母。検尿の間だけ息子を預かってほしいと看護師さんに頼んだが、「ここは小児科ではないのでお子さんは預かれません」と突き放されてしまう。
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…と断られてしまったのです…。

はい、きいちゃんを横抱っこしたまま検尿頑張りましたよ、私…。
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晴れて?尿検査で膀胱炎と確定し、医師に薬をもらい、会計して帰るとき、先ほどの看護師さんから…
さきほどダウン症のある息子の預かりを拒否した看護師さんに、「お子さんがいると大変ですねー」と無表情で言われ、唖然とする母。
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とこれまた無表情で言い放たれました。

はい、すっごく大変でしたよ…!あなたが手伝ってくれなかったから…!とつい思ってしまいました…。

この病院の規則で預かってもらえなかったのかもしれませんが、たとえそうだったとしても、断るときにもう少し優しさを見せてもらえれば私もそこまでショックを受けなかったと思うのです。心身ともに弱っていたときに、医療者である看護師さんに冷たくあしらわれた経験は、今も記憶に鮮明に残っています。

その後、バネ指になったり、骨盤が歪んで?左足をひきずるようになったり、まだまだ自分の病院通いで大変なことになってしまったのですが、それにまつわるエピソードはまた別の機会で書ければと思います。

執筆/星きのこ
(監修:鈴木先生より)
大きな病院であれば看護助手という方が面倒を見てくれることが多いです。それでもダメな場合は受付の事務クラークさんが代行することもあります。きいちゃんを預かってくれなかった看護師さんにも事情があったのかもしれませんが、このような場合には、規則とは無関係に預かってくれる看護師さんは多いのではないかと思います。ただ、預かってくれたとしても筋の緊張が弱いダウン症のあるお子さんを抱っこするには大変だったかもしれません。緊張の弱いお子さんはフロッピーインファントと呼ばれ、体がふにゃふにゃしていて柔らかいのが特徴です。だからなおさら、お母さんが生後1ヶ月のきいちゃんを一人で横抱っこしながら検尿できたことは神業に値します。緊張が弱いため哺乳力も弱いのです。
また、もう少し成長したあとでも、緊張の弱いお子さんを抱っこするときはこちらがしっかりと抱えなければ、ずり落ちてしまう危険性があります。 緊張が弱いため、しっかりとつかまってくれないからです。誰かに預けるときには、そういった説明をひとこと言ってから預けたほうが無難かもしれませんね。

このコラムを書いた人の著書

きいちゃんはダウン症(1)
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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