ほめているのに自己肯定感がUPしない!?子ども自身が自分の成長を実感できる、わが家の「できた日記」を公開

ライター:楽々かあさん
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うちのアイデア子育てツール「できた日記」は、小学校入学後、学校でうまく行かないことが多く、自信をなくしがちだった長男の言葉をヒントに生まれました。
子どものいい情報だけを記録し、自分自身と比較しやすくして、いつでも「できた!」が見えるようにすると、「自信をなくしがち」「落ち込みがち」など、どんな子どもにも自信をつけてあげられると思います(成人の方にも)。続けると自然と親のペアレント・トレーニングにもなる「できた日記」つくり方のコツを詳しく紹介します。

監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

「できた日記」は、子どもの自己肯定感UP&自信回復にオススメ!

うちの初代「できた日記」の表紙・中身の一部の写真
うちの基本の「できた日記」
Upload By 楽々かあさん
こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。

春は何かと子どもの成長を感じるイベントが多い季節ですね。そんなとき、「できた日記」を始めてみるのはいかがでしょう。「できた日記」は、文字通り、その子の「できたことだけ」を記録する、うちのアイデア子育てツールです。
特に、学校生活などでは失敗が多くて何かと自信をなくしがちな子どもや、ネガティブな情報ばかりを見つめて落ち込みがちな子どもなどにオススメです(もちろん、それ以外のお子さんや成人の方にも!)。

ここではうちの例で「できた日記」のことを、詳しく紹介していきますね。

学校で失敗続きの長男…「できた日記」が生まれたワケ

まず、私が「できた日記」のアイデアを思いついたワケをお話します。
現在高校生の長男が小学校に入学したばかりのころ、集団生活の中でうまくいかないことが多く、成功体験が少なくて私たち親子はすっかり自信をなくしていました。その後、長男に発達障害の診断がつき、私はそれまでの怒ってばかりだった自分の育児を見直し、少しでもできたことをほめ、学校側にも理解をお願いし、長男はある程度落ち着いていきました。

それでも、長男の自信回復には十分ではなく、ちょっとしたことで泣いたり、スグに投げ出したり、心折れたり…。
子育てでは「子どもの自己肯定感を育むのが大事」と分かってはいるものの、「できるようになったことも増えたし、毎日こんなにほめているのに、なんでなかなか自信がつかないの?」と、私は不思議に思っていました。

そんな中、ピンと来たのが「コトバは消えていっちゃう」という長男自身の言葉。
実は「人の話を聞いてない」などと注意されがちな長男は、耳からの情報が入りにくく、せっかくほめても聞いてなかったり、聞いてもスグに忘れてしまうのです。加えて、長期の記憶力が強く、連想ゲームのようにちょっとしたきっかけで自分の失敗体験を繰り返し思い出し、いつまでも落ち込んでしまっていました。

でも、長男は目からの情報は入りやすく、例えば、気をつけてほしいことなどは、何度も小言を言うよりも張り紙をしたり、ノートに図を交えて筆談で説明したりすれば、ずっと理解しやすかったのです。
そこで、長男の「できた!」体験や親のほめ言葉など、その子にとってプラスになるいい情報も、消えないように「見えるカタチ」で残したら自信につながるのではないかと思い、できたことだけを記録する「できた日記」のアイデアが浮かびました。

するとこれが大正解! 発達障害の診断のない次男・長女にも「お兄ちゃんばっかりズルい!」と自分たちにもつくってほしいとせがまれ、うちの子たちに大人気の子育てツールが誕生しました。

「できた日記」つくり方のコツ

壁デコVer.(ペットの「できた日記」)の写真
壁デコVer.(ペットの「できた日記」)
Upload By 楽々かあさん
「できた日記」は、ただでさえ忙しい子育ての合間につくるので、”日記”とありますが毎日記録しなくてもまったく構いません。私は大抵、撮りためた写真整理のついでに一気に制作・更新していました。複数写真をピックアップして印刷する場合はA4普通紙にインデックスプリントすると手軽。クラウド保存の写真は「〇〇のできた」フォルダなどに分けておくと、そのまま共有することもできます。
また、最初から凝ったものにすると更新のハードルが上がってしまうので、テキトーでOK。完成度や出来映えで親の愛情を測る必要はありませんから、わが子に「あなたの成長や頑張りを、ちゃんと見ているよ」って伝われば十分です。

決まった形式もないので、スクラップブックのほか、コルクボードやフォトフレーム、壁や冷蔵庫への掲示、交換日記やメッセージアプリなど、各ご家庭の都合に合わせて手軽に取り組めそうなものを自由な発想で活用していただければと思います。
うちでは基本の「できた日記」はスクラップブックで子どもたちに1人1冊ずつつくりましたが、家族限定SNSや、壁デコ、A4ファイルなどを活用した簡単バージョンの「できた日記」もあります。

おうちで「できた日記」にチャレンジしてみるときの、基本のつくり方のコツは…

コツ1:いい情報だけを、見えるように

「できた日記」で特に大事なのは、その子にとって”いい情報”だけをピックアップすること(ココさえ当てはまれば、どんなカタチでも「できた日記」です)。
"いい情報”とは、例えば…

・子どもの「できた!」体験(自転車に乗れた、料理をつくれたなど)
・好きなこと、お気に入りのモノ(アート作品、〇〇コレクションなど)
・成長の記録(服やおもちゃの変遷、読書歴など)
・初めての経験や挑戦、行動範囲の広がり(一人でできた買い物のレシート、バスの乗車券など)
・人とのプラスの関わり(家族との日常、友達からのお手紙、先生のほめ言葉の添削など)
・すごく頑張ったこと、毎日頑張っていること(苦手な行事への参加、いつも続けていることなど)

…などの写真や、実物の切り抜き、コピーなどの"証拠"を集めて、スクラップブックなどに貼って「見えるカタチ」にします。このとき、「〇〇できたね」「いっぱい練習したね」「よく頑張ったね」などのほめメッセージを添えるとさらにGood!(ただし、「次は〇〇にも挑戦しよう」「〇〇もできるといいね」…なんて、うっかり欲張らないこと)

また、中高生の子などへの手軽な「できた日記」として、いつも使っているメッセージアプリなどで、”いい情報”をできるだけ多めに投稿して、親子間や家族グループで共有するように心がけるだけでも、その子の心の支えや励みになると思います(特に受験期など)。

コツ2:自分自身と比較できるように

「できた日記」〜自転車のページ例のイラスト
「できた日記」〜自転車のページ例
Upload By 楽々かあさん
「できた日記」と通常のアルバムとの違いは、【〇〇のできた!】や【〇〇の記録】などの「カテゴリー別」にページを分けること。例えば…

【自転車のできた!】
三輪車・ストライダーに乗れた→補助輪つき自転車に乗れた→補助輪が取れた→自転車で〇〇に行けた→自転車で一人旅した…など、乳幼児期から思春期まで、自転車に関する「できた!」を同じページに集めて貼る。

こうすると、その子のその部分に関する成長が一目瞭然に。カテゴリー別で分ける目的は「自分自身と比較しやすくするため」です。
なぜなら、親がどんなにほめても、子どもが成長するにつれ、自分と周りの子たちとを比較するようになってくると、自分のできないことや苦手なことばかりが気になって、自信をなくしてしまうことがあるからです(親だって、周りの同じ年頃のお子さんと比べると「あれ? うちの子だけ〜ができないのかな」とか、「〇〇ちゃんは、もうそんなことが自分でできるんだ…」なんて、不安になることもあるでしょう)。

でも、「できた日記」で1年前、5年前の自分自身とのタテ軸で比較すれば、周りがどうであれ、”自分なり”の成長が見えるように実感できます。

コツ3:いつも目に入る・手に取れる場所に

「できた日記」を作ったら、扉つきの立派な本棚に大事にしまわずに、その辺に無造作に置いておくのがオススメです。子どもが自分のタイミングでいつでも手に取れるように、リビングや子ども部屋のいつも目に入る場所にさり気なくあるといいでしょう。
簡単バージョンの場合も、例えば…

【料理のできた!】→キッチンの収納棚や冷蔵庫に、マスキングテープで直接写真を貼る
【おもちゃの記録】→おもちゃの収納棚にミニアルバムを一緒に入れておく

…など、その「できた!」に関係した場所で、いつも目に入るようにするといいと思います。
日常生活の中に「できた日記」がさり気なく存在していると、いつでもどんなときも、例え親に余裕がないときだって、子どもの心に寄り添ってくれます。
そして、子どもが落ち込んだときや自分を勇気づけたいときなどに、何度も繰り返し「できた!」体験を思い出し、見直すことができるでしょう。

うちの子たちも、学校でイヤなことがあったり、なんとなく元気が出なかったりするときなどに、何度も「できた日記」を手にとって、自分の「できた!」を振り返って成長を実感し、気持ちを立て直したり、心を落ち着けたりしていました。

「できた日記」を続けていると…

「できた日記」は子どもの自己肯定感UP&自信回復のための子育てツールですが、もう一つ、続けていると親にもいいことがあるかもしれません。
それは、自然なかたちで親の肯定的な目線を自分で育てるペアレント・トレーニングにもなるということ。

「できた日記」を気長に続けていると、わが子の「できた探し」が上手になってくると思います。
日常生活の中で「あ、ラクガキに夢中になってる。シャッターチャンス!」とか、「あれ、ちょっと字がうまくなったかも。保存しとこ」とか…。子どもの小さな「できた!」や、毎日の当たり前のような頑張り、ささやかな成長などに気づきやすくなるんです。
そうすると、次第に「できないことより、できたことのほうにフォーカスする」という、ものの見方のくせがついてくるので、子どものことを肯定的に見る練習になるだけでなく、親が自分自身にも温かい目を向けられるようにもなると思います。

子育ては長期戦ですから、「いつでもどんなときでもポジティブに」とはいかないこともありますよね。特に、学校ではうまく行かないことが多い子どもや、思春期の子どもなどとは、親子のコミュニケーションに悩まれることもあるでしょう。
それでも、今に至るまでの、その子の小さな頑張りや成長の積み重ねと、それを支えて見守り続けてきた親の目線があることを、「できた日記」はちゃんと見ていてくれますからね。
文とイラスト、写真提供:大場美鈴(楽々かあさん)
(監修:初川先生より)
「できた日記」、素晴らしい手立てですね。長男くんの言っていた通り、(話した)言葉は消えてしまいます。そして、何かで苦戦すると芋づる式にうまくいかなかった記憶がずるずると思い出されてしまうことがあります。「できた」ことだけを記録する、手軽に手に取れる場所に置く、気合いを入れてつくると疲れてしまうから簡単なものでもよい。こうしたコツをシェアしていただけると、「やってみようかな」と試してみたくなりますね。幼いときは特にちょっとしたことができただけで、すごい!とほめられてきますが、年齢を重ねるにつれ、できて当たり前とみなしてしまうことが増えがちで、ほめポイントも分かりづらくなります。大人が小さな目盛りで子どもの成長を見つけてほめることができるか、それが結構大事なことです。「できたほうのことにフォーカスする」という見方のくせをつける。大人がこつこつと身につけていきたいことですね。

このコラムを書いた人の著書

大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
https://www.amazon.co.jp/dp/4866672129
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大場美鈴 (著)
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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