「精神科に通うのはやめて」障害者手帳取得に大反対の両親。ADHD、双極性感情障害がある私の就労支援への道【読者体験談】

ライター:ユーザー体験談
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【発達ナビでは読者からのエピソードを募集中!今回は「障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の取得」についてのエピソードをご紹介します。】私は大人になってからADHDと診断され、現在は就労移行支援を受けて、企業で働いています。精神障害者保健福祉手帳は大人になってから取得しましたが、両親から取得を反対されたり、父自身に特性が見つかったりと、一筋縄ではいきませんでした。

監修者鈴木直光のアイコン
監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

「仕事しないで家にずっといればいい」そう言われても…。親なきあと、私はどうなるの?

私は、幼いころから衝動性が強い子どもでした。ですが当時は発達障害についての社会の理解が低かったこと、また両親も私のそんな特性に気づかなかったこともあり、ADHDの診断を受けることはありませんでした。

短大を卒業し就職しましたが、仕事自体はできても環境になじめずにすぐに辞めて…を繰り返すようになりました。「なんでうまくいかないんだろう」「私ってダメなのかな」と感じる場面は日に日に増えていき、そんな中私は「こんなにうまくいかないのには、何か理由があるのかもしれない」と感じるようになりました。

そんな私に同居している両親は、「仕事なんてしないで家にずっといればいい。体調が悪ければ家で寝ていればいい」と言います。ですが、そんなことを言われても、親がいなくなったら私はどうなるの?という焦り、不安、心配に押しつぶされそうな毎日でした。

私は、自立をするためには働かなければならないと決意しました。
「病院で診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得、その後就労移行支援を受けて就業する」という目標を立て、行動を始めたのです。
「仕事なんてしないで家にずっといればいい。体調が悪ければ家で寝ていればいい」と言う両親
「仕事なんてしないで家にずっといればいい。体調が悪ければ家で寝ていればいい」と言う両親
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自分の人生を生きたい!でも、手帳取得、就労移行支援に大反対する両親

私は精神科を受診し、ついにADHDの診断を受けました。そして、精神障害者保健福祉手帳を申請する段階となったときに、そのことを両親に伝えました。ところが、両親は手帳取得も就労移行支援事業所に通うことにも大反対!しかもADHDの診断も認めない!と言うのです。

「おまえは障害者じゃない。精神科に通うのはやめてくれ」
「手帳を取るのも自分たちがなくなってからにしてくれ。おまえくらい養うから」


その言葉は、到底受け入れられるものではありませんでした。
私は仕事をしたい!何より自分の人生を生きたい!
人生で初めて、親に対して抵抗をしました。
「私は仕事をしたい!何より自分の人生を生きたい!」人生で初めて、親に対して抵抗をした私
「私は仕事をしたい!何より自分の人生を生きたい!」人生で初めて、親に対して抵抗をした私
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私に障害があると認めたくない両親に、私は手帳を取るために必死にプレゼンをしました。

発達障害、特性、生きづらさについて、そしてこれらにどのような支援があるか、資料を広げて詳しく説明をしました。すると、資料を見ていた父が突然、父自身に自閉スペクトラム症の特性があるかもしれないと、つぶやいたのです。

そして後日、私の精神科の受診に父も同行することになりました。話を聞いてくれた主治医は、「お父さんには自閉スペクトラム症の特性がありますね」と言いました。昔から父は、ほかの人に何か言われても全く気にしないタイプでした。私は、父にもやっぱり特性があるんだと、改めて感じました。私の手帳取得に反対するのも、この特性がかかわっているのかもしれないとも…。

その後、双極性感情障害の診断も受け精神障害者保健福祉手帳を取得した私は、グループホームを検討したいと思うようになりました。そこで、主治医に意見書を書いてもらう機会があったのですが、そこには『父親に自閉スペクトラム症の特性あり。父親による決めつけなどの精神的負荷が大きく、早く別居してグループホームに入居した方がよい』と書かれていました。父はこの意見書を読み、さすがに思うところがあったようで、その後は私の障害ややることについて過度に干渉することはなくなりました。
意見書を読んだ父、さすがに思うところがあったようで、その後は私の障害ややることについて過度に干渉することはなくなりました。
意見書を読んだ父、さすがに思うところがあったようでした。
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自分の人生を大切にしていきたい。いつかグループホームを検討しています

昨年、家のルールについて父と対立し、「出ていけ!」と言われたためウィークリーマンションを借りて一時別居した時期がありました。その生活のなんて快適なこと!ストレスの原因は、過干渉な両親だったんだな…とつくづく感じる結果になりました。その後、高齢の両親が心配になり実家に戻ったのですが、同じ敷地内でも住む建物を別にしたので、両親との距離を取りながらなんとか暮らしています。

私は、企業に勤めています。就労移行支援事業所に2年通い、就職することができました。リモートワークができる会社なので、在宅で仕事をしているのですが、その仕事時間中にも両親が私の部屋へ来ることがあり困っていました。
「◎◎を買ってきて」など、業務中にできないお願いをしてくるので、やめて欲しいと何回も注意したら、最近ようやく来なくなりました。一度、ウィークリーマンションを借りて別居したことも、よいきっかけになったのかもしれません。

今後は両親とよい距離感をたもちつつ、将来はグループホームを検討して、自分の人生を大切にして暮らしていきたいと思っています。
今後は両親と良い距離感をたもちつつ、将来はグループホームを検討して、自分の人生を大切にして暮らしていきたいと思っています。
将来はグループホームを検討して、自分の人生を大切にして暮らしていきたいと思っています。
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エピソード参考/はっちゃん

(監修:鈴木先生)
神経発達症(発達障がい)に対する社会の無理解やSNSによる情報が広まったことで「診断を受けないまま大人になってしまった神経発達症」の方の受診が増えています。障がいを認めたくない親御さんの元で育ったため、まだ診断のついていない方が藁をもつかむ心境で相談に来られています。

たとえ母親と受診したとしても、特性の強い父親などは外来へは一緒に来ない場合も多いです。子どもの障がいを認めたくないのと、自分の特性についてとやかく言われたくないからだと思います。お子さんに対する投薬や部活などに関しても反対するケースが多くみられます。

精神障害者保健福祉手帳は取得することで、さまざまな補助が得られます。私のクリニックでは、主にマル福(医療福祉費支給制度)(※)が過ぎた18歳以上の方に書いています。診断名はASD+ADHDで書くことが多いです。手帳は「障害」ですが、ご本人には「ASDは特性、ADHDは慢性疾患」だとお伝えしています。

(※)茨城県において、小児・妊産婦・ひとり親家庭・重度心身障害者などの医療福祉受給対 象者の方が、医療保険で病院などにかかった場合の一部負担金相当額を公費で助成し、医療費の負担を軽減 する制度
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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