発達凸凹長女の幼少期。耳が悪い?愛情不足じゃないの?マイペースすぎて先生や親戚中から心配されて…
ライター:ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
わが家は家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。例えば、一番年上の長女ニャーイは、猫のキャラクターです。これは彼女がマイペースで、よく寝るタイプであることを表現しています。そんな長女ニャーイの幼少期のエピソードです。
(今回のイラストは父ラクマが担当しました!)
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
独特のペースと感覚に違和感あり
わが家の一番最初の赤ちゃんとして、長女ニャーイが生まれました。ニャーイは赤ちゃんの頃から独特な雰囲気を持っていました。
普段から物音に対して敏感なところがあり、音楽をかけたり声をかけたりすると、例えそれが小さな音であってもよく反応していました。ところがいったん眠ってしまうと、大きな音がしても起きることがありませんでした。
ある風の強い日のことです。私と叔母がベッドで寝ているニャーイを見ていたところ、風で勢いよくドアが閉まりました。驚くほどの大きな音だったのですが、ニャーイはピクリともせず、ぐっすり寝たままでした。これを見た叔母が「この子は耳が悪いんじゃないの?」と心配しました。
いつもは音への反応がいいニャーイを知っている私は(そんなはずはない、逆に耳はかなりいいはずだけど)と考え込んでしまいました。
普段から物音に対して敏感なところがあり、音楽をかけたり声をかけたりすると、例えそれが小さな音であってもよく反応していました。ところがいったん眠ってしまうと、大きな音がしても起きることがありませんでした。
ある風の強い日のことです。私と叔母がベッドで寝ているニャーイを見ていたところ、風で勢いよくドアが閉まりました。驚くほどの大きな音だったのですが、ニャーイはピクリともせず、ぐっすり寝たままでした。これを見た叔母が「この子は耳が悪いんじゃないの?」と心配しました。
いつもは音への反応がいいニャーイを知っている私は(そんなはずはない、逆に耳はかなりいいはずだけど)と考え込んでしまいました。
ニャーイが成長して保育園に通うようになると、持ち前の陽気なキャラクターで近所のおばちゃんたちのアイドルになりました。スイッチが入ると歌って踊って、テレビタレントのモノマネをして周囲を笑わせていました。ところがスイッチがおしゃべりモードから空想モードに切り換わると、とたんに電池が切れたオモチャみたいに動かなくなるのです。
ある日のランチタイムのことです。ニャーイが通っている保育園で、子どもたちが水場で食事前の手洗いをする時間になりました。ニャーイが手洗いをしていると、いつの間にか担任の保育士がそばに立っていました。その保育士がニャーイの名前を呼んで言いました。「ニャーイちゃん、いつまで手を洗ってるの?」ニャーイが後ろを振り返ると、子どもたちの長い列ができていました。ニャーイは気づかなかったのですが、かなり長い時間、手を洗い続けていたようです。
当時の保育士さんは、ニャーイのことをとても心配して、何かと気にかけてくれました。
ある日のランチタイムのことです。ニャーイが通っている保育園で、子どもたちが水場で食事前の手洗いをする時間になりました。ニャーイが手洗いをしていると、いつの間にか担任の保育士がそばに立っていました。その保育士がニャーイの名前を呼んで言いました。「ニャーイちゃん、いつまで手を洗ってるの?」ニャーイが後ろを振り返ると、子どもたちの長い列ができていました。ニャーイは気づかなかったのですが、かなり長い時間、手を洗い続けていたようです。
当時の保育士さんは、ニャーイのことをとても心配して、何かと気にかけてくれました。
体は止まっていても頭の中は忙しい
どうしてそんなに長い間手を洗っていたのかと、大人になったニャーイに尋ねてみました。
「手を洗っていたら、自分が水滴になって蛇口から水道管に入っていって、浄水場に行ったあと、山に向かってどんどん進んでいって、ダムにまで行くことを連想していた」とニャーイは答えました。
ニャーイは頭の中で壮大な旅をしていたわけです。保育士さんから声をかけてもらうまで、イメージの世界で楽しく遊んでいたということです。私も頭の中は忙しいタイプですので、ニャーイの空想癖は気になりませんでした。
「手を洗っていたら、自分が水滴になって蛇口から水道管に入っていって、浄水場に行ったあと、山に向かってどんどん進んでいって、ダムにまで行くことを連想していた」とニャーイは答えました。
ニャーイは頭の中で壮大な旅をしていたわけです。保育士さんから声をかけてもらうまで、イメージの世界で楽しく遊んでいたということです。私も頭の中は忙しいタイプですので、ニャーイの空想癖は気になりませんでした。
変わった言葉づかいが愛情不足だと心配されてしまう
ニャーイは感情表現や言葉づかいが独特かつオーバーで、そのうえ愛嬌たっぷりであいさつ上手だったため、近所のおばちゃんたちのアイドル的な存在でした。でも一方では、大げさ過ぎたり大人びて感じる言葉づかいに、愛情不足を指摘する方がたくさんいました。
ある日のことです。私がニャーイの手を引いて歩いているときに親戚のおばさんに会いました。するとニャーイは「洋服、お似合いだね」「おばちゃん、若いね」と、まるでドラマの子役のように感情を込めて言うのです。
その親戚は、私のそばに近寄ると声をひそめて「愛情不足じゃないの?」と深刻な表情で注意してきました。当時は実家で子育てしていたので、ニャーイは私の母やきょうだいからもかわいがられていました。育児放棄や厳しすぎるしつけはなかったので、決して愛情不足ではないということが分かっていました。でも、まだ子育て経験が少ない当時の私は、なんと説明するべきか分からず、黙り込んでしまいました。
もしいま、同じ場面に出合ったら「ニャーイは発達の偏りがある個性的なタイプなので、年齢相応ではないオーバーすぎる表現があるけど、いずれ落ち着くから大丈夫」と言って、相手を安心させてあげることができたと思います。
ある日のことです。私がニャーイの手を引いて歩いているときに親戚のおばさんに会いました。するとニャーイは「洋服、お似合いだね」「おばちゃん、若いね」と、まるでドラマの子役のように感情を込めて言うのです。
その親戚は、私のそばに近寄ると声をひそめて「愛情不足じゃないの?」と深刻な表情で注意してきました。当時は実家で子育てしていたので、ニャーイは私の母やきょうだいからもかわいがられていました。育児放棄や厳しすぎるしつけはなかったので、決して愛情不足ではないということが分かっていました。でも、まだ子育て経験が少ない当時の私は、なんと説明するべきか分からず、黙り込んでしまいました。
もしいま、同じ場面に出合ったら「ニャーイは発達の偏りがある個性的なタイプなので、年齢相応ではないオーバーすぎる表現があるけど、いずれ落ち着くから大丈夫」と言って、相手を安心させてあげることができたと思います。
執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
(監修:井上先生より)
感覚の過敏性や、おしゃべりな反面自分の空想の世界に没頭しやすいなどの特性は、それがそのまま社会的に問題になることはありませんが、周囲の人から見ると違和感を感じることがあるかもしれません。ワッシーナさんのように、お子さんの視点から理解していくことで、その特性の良い部分に着目したり、個性として見てあげることもできるようになると思います。また、もし人から何か誤解されるようなことを言われたときに備えて、親として短い言葉で返答する台詞を何バージョンか考えておくと楽になるかもしれません。将来お子さんに「ママは感覚過敏について聞かれたら、こう言っていたよ」と伝えてあげることもできるといいですね。
感覚の過敏性や、おしゃべりな反面自分の空想の世界に没頭しやすいなどの特性は、それがそのまま社会的に問題になることはありませんが、周囲の人から見ると違和感を感じることがあるかもしれません。ワッシーナさんのように、お子さんの視点から理解していくことで、その特性の良い部分に着目したり、個性として見てあげることもできるようになると思います。また、もし人から何か誤解されるようなことを言われたときに備えて、親として短い言葉で返答する台詞を何バージョンか考えておくと楽になるかもしれません。将来お子さんに「ママは感覚過敏について聞かれたら、こう言っていたよ」と伝えてあげることもできるといいですね。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。