「発達障害かも?」不安で保育士さんに相談するも「大丈夫」と言われてしまい…SOSが出せなかった次男の幼少期

ライター:ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
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わが家は10人家族です。家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。

いまは社会人5年目になる、おっとりキャラの次男ウッシーヤの未就学のころをふりかえります。
(今回のイラストは父ラクマが担当しました!)

監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

おっとりキャラの末っ子、次男ウッシーヤの幼少期

わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。たとえば、末っ子の次男ウッシーヤは、牛のキャラクターです。これは彼がなにをしても動作がゆったりしているところを表現しています。
次男ウッシーヤの幼児期から現在に至るまでに見られた特徴や困りごと一覧。現在は保育士5年目。
次男ウッシーヤの幼児期から現在までをご紹介します
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(※)わが家の当事者キャラクターは、外出のときは透明なヘルメットを身につけています。このヘルメットは「パニック対策の工夫」を表現しています。パニックになると呼吸困難のような状態になるので、ヘルメット=工夫で身を守っているという設定です。
次男ウッシーヤはとても良く寝る赤ちゃんで、あまりに長い間身動きもせず寝ているので、呼吸をしていないのではと恐怖を感じ、ティッシュをかざして確かめるところ
あまりによく寝るので呼吸をしていないのではと恐怖を感じ、ティッシュをかざして確かめるところ
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とにかくよく寝ていた赤ちゃんのころ

赤ちゃんのころのウッシーヤは、よく寝る子でした。あまりにも長い間、身動きひとつせずに寝ていることに、ふと気がつきました。

私は急に不安になって、ティッシュペーパーを1枚つかむとベビーベッドに走りました。呼吸が止まっているのではないかと怖くなったのです。ウッシーヤの顔の前にティッシュをかざすと、小さく揺れるのが分かり、安心しました。

私は安心のあまり、その場にへたりこみました。思わず「生きてて、よかったぁ」とひとりごとを言うと、夫がすぐ後ろに立っていることに気がつきました。ふと見あげると彼は恐怖で凍りついています。

「頼むから、そんな心臓に悪い確認のしかたはやめてくれないかな」
夫の真剣な顔を見て、つい苦笑してしまいました。

発育がゆっくりすぎて不安がどんどん積み重なる

その後、ウッシーヤはハイハイをして立ちあがり、よちよち歩きだし、少しずつ言葉が出るようになりました。でも1歳ごろになると、上の3人の子どもたちと比べて発育がゆっくりすぎるということが気になっていました。
次男ウッシーヤは、上の3人の子どもたちと比べて発育がゆっくりすぎるということが気になっていました。
ほかの子どもたちと比べて発育が遅すぎることがとても不安
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発達のかたよりが独特で分かりづらい

ウッシーヤは誰にでも抱っこをされるので、てっきり人見知りをしないタイプの子どもだと思いこんでいました。いまにして思えば、彼は緊張で固まっていたのです。私はウッシーヤの微妙な表情の変化に気づいていませんでした。

また、ウッシーヤは喘息でした。でもゼーゼーと苦しそうにしながら、笑っているのです。小児科のお医者さんから「お母さん、気をつけてね。この子は、かなり苦しいはずなのに顔に出ないから」と言われました。でも忘れっぽい私は、気をつけることができませんでした。

家族で食事をしているときは、子どもたちがそれぞれその日の出来事やテレビのことなどをおしゃべりして、にぎやかに過ごします。でもウッシーヤだけは会話に加わりません。様子を見ていると、幼いから会話に加われないというよりも、人と話すこと自体に関心がないように見えました。

食事をしているとき以外は、ずっと指しゃぶりをしていました。指しゃぶりの間はずっと誰とも目が合わず、なにを考えているのか分かりませんでした。指しゃぶりをやめさせるために、ウッシーヤの指にカラシをぬったり、彼の好きな植物図鑑などで気を引いても効果がありませんでした。
「ウッシーヤは発達障害なのでは?」と保育士さんに相談すると「お母さん、きっと大丈夫ですよ」と励まされ、ますます不安は消えませんでした。
保育士に相談したら励ましを受け、ますます不安は消えず
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ

得体の知れない不安でいっぱいに

日がたつにつれ不安になってきた私は、保育園でウッシーヤを担当してくれていた保育士さんに「ウッシーヤは発達障害なのでは?」と質問してみました。なにしろ今から20年以上前のことなので情報もあまりなかったのです。

すると保育士さんは少し考えてから「お母さん、きっと大丈夫ですよ」となだめるように答えました。その表情から、とにかく安心させてあげたいという気持がくみとれました。保育士さんの気配りには感謝でしたが、不安は消えませんでした。

子育てのSOSの出し方を知らない

夫ラクマは広告マンとして独立開業したばかりで忙しくて、ほとんど子育てに関われませんでした。私も夫の仕事の手伝いをしなければならないはめになって、ますます忙しくなりました。ウッシーヤの発達のことは、すごく気になりながらも日々の生活に流されていました。

いまにして思えば、子育てのSOSの出し方がまるで分かっていませんでした。もしいまの私が当時の自分にアドバイスをするとしたら、知人や友人に手あたりしだい相談するようにと言ってあげたいです。
少人数制の小さな保育園に転園後、慣れない環境の中パニックで泣いているウッシーヤに「おねえちゃんだよ」と駆け寄る長女ニャーイ
少人数制の小さな保育園に転園後、パニックで泣いているウッシーヤに駆け寄る長女ニャーイ
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理想的な環境の保育園に転園し、両親は喜んでいたが…

私と夫ラクマは、子どもの個性を尊重してくれる少人数制の学校を探し続けていました。というのも私は不登校になった経験があり、きっと子どもたちも人の多い学校は苦手ではないかと考えたからです。

そんななか、保育園から高校までオールイングリッシュで教えてくれる、少人数制クラスの小さなミッションスクールを見つけ、4人の子ども全員を転校させました。長年思い描いてきた理想的な学校でした。

ウッシーヤは当時3歳でした。いろいろな国からやってきた先生や生徒の中で、最初は肌の色の違う大人を見るだけで怖がって泣いていました。でも、きょうだいが全員一緒の学校なので、ウッシーヤが困っているときなどは、すぐにきょうだいが手助けできていました。たとえばウッシーヤが不安がって泣いているときは、すでに高校生になっていた長女ニャーイが助けに行くことができましたので、何とか過ごすことができていました。

その後ウッシーヤが小学生になり、さらに困ったことが次々に起きるとは、このときは知る由もなかったのでした…。

執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
(監修:初川先生より)
ご家族皆さんを動物のキャラクター化して語られていて、とても面白く拝読しました。それぞれの特性を客観視できているからこそのキャラクター化なのかなと感じます。
さて、次男ウッシーヤくんの20年以上前の幼少期について、今の話であればそれが発達のつまずきのどんな状態か分かることは多くあるかもしれないですね。この20年の間で、発達障害や発達のつまずきについての認知度は飛躍的に伸びました。ただ、「子育てのSOSの出し方を知らない」のは、もしかしたら20年経ってもあまり変わっていない面はあるかもしれません。相談先が増えた、相談された側の知識が増えたのはあるにしても、どう相談したらいいのか、どうSOSを出していいのかは、忙しい子育てや仕事、家事の中で後回しになっていくこともあり、どうしたらいいか分からないと同じように感じている読者の方もいらっしゃるかもしれないですね。ワッシーナさんの助言は「手あたり次第に相談する」。これも1つのいい方法ですね。ウッシーヤくんが小学生になった後のお話も楽しみにしています。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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