発達障害息子幼少期。家の階段も怖くて固まり、療育園の粗大運動で号泣!滑り台が無理って大丈夫!?解決策「お母さん安全装置」って?

ライター:丸山さとこ
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神経発達症(発達障害)があるコウは、体を動かすことが苦手なようです。保育園の頃は動きの不器用さや高いところへの恐怖心が強く、公園に行っても遊具で遊べませんでした。そのため、落ち葉や石を並べたり、樹木にかけられた名札を読んだりしていました。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

遊具で遊ぶことが苦手だったコウ

モノローグ:神経発達症(発達障害)があるコウは、体を動かすことが苦手なようです。(4歳くらいのコウ。揺れる遊具を怖がって「ムリー」と涙目になっている)
モノローグ:5歳の頃に集合住宅の1階の部屋から2階建ての家に引っ越したときは、階段を数段登ったところで「落ちちゃうよ~!」と動けなくなっていたほどでした。(階段で怖がって動けなくなっているコウ)
自宅の階段も怖くて2階へ行けない!
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コウは体を動かすことが苦手でした

神経発達症(発達障害)があるコウは、体を動かすことが苦手なようです。中学生になった現在は「運動が苦手で少し不器用だな」と感じるくらいで普段は大きく気になりませんが、保育園の頃は遊具で遊べないレベルの不器用さが目立っていました。

そんな動きの不器用さも相まってか、足元が狭いところや不安定なところでは慎重に歩きたがっていたコウ。高いところは特に苦手で、5歳の頃に集合住宅の1階の部屋から2階建ての家に引っ越した時は、階段を数段登ったところで「落ちちゃうよ~!」と動けなくなっていたほどでした。

「高いところ」「揺れるもの」「よじ登るもの」は特にダメなようで……

それくらい『動きの不器用さ・高いところへの恐怖心』があるコウにとって、公園は石や落ち葉やどんぐりを並べるところでした。

公園や保育園などの子ども用の遊具は大体高いものです。おおむねどこの公園にもある3大遊具の滑り台、ブランコ、ジャングルジムで遊べないとなると、体を動かすことを促したい親としても「散歩しよう」としか言えない状態でした。
公園のサルスベリにかけられた名札を黙ってじっと見ているコウ。私が「これはサルスベリだね。幹がスベスベしているね」と言っても反応が薄い。(じーっと見ているので興味はあるようす)
現在中学生のコウは、当時を振り返って「あの頃は字を読むのが楽しかったよ」と言っている
遊具で遊ぶのが苦手なので、公園ではひたすら植物鑑賞や石並べなどをしていた幼少期
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散歩中に植物や水を眺めたり、樹木にかけられた樹種の名札や解説を読んだりして過ごしつつ、「この子はこういう感じなのか~。これはそういう個性なの?」と漠然と思っていました。

お母さんの安全保証つき? 地道な滑り台の練習開始!

療育園での粗大運動の時間はいつも大泣きだったコウ

そんな風に散歩しては石やどんぐりを並べるだけでも、「まぁコウがそれを好きならそれでいいか……」と流していた私でしたが、療育園に通うようになってから、少し考えが変わりました。

というのも、コウが通っていた療育園での粗大運動の時間(室内遊具での全身を使った遊び)は結構スパルタで、泣いても叫んでも徹底して取り組ませるスタイルだったからです。
療育園にて、はしご型の遊具を泣きながら拒否するコウ。先生に抱えられ促されつつ、手を突っ張って大騒ぎしているコウを見ながら『コウは完全拒否の構えだな~。段々慣れていくのかな……?』と思いながら見守る私。
療育園の粗大運動では大泣き!
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その特訓風景を見ている内に「このままでは遊具を見ただけで泣き叫ぶようになり、公園の前を歩けなくなるのではないか……?」と心配になった私は、近所の公園でコウと滑り台の練習を始めました。

滑り台のてっぺんで座ったコウの体を私の両手で挟むように支えながら、コウに安全性を説明しました。

「絶対にゆっくりしか滑らないので安全です」
「怖くないようにします」
「怖すぎたら途中でも抱き上げて中断できます」

滑り台の上で怖がるコウの体を前後から手で挟むようにして支えながら、「絶対にゆっくりしか滑らないので安全です」と話す私。コウは涙目で不安そうにしている。
お母さん安全装置つき滑り台!
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そうして実際に途中で抱き上げたり滑り台の途中で止めたりして『コウが嫌だと思えばいつでも安全に中断できること』を証明すると、コウは「本当かな……?」という表情をしつつも練習につき合ってくれました。

滑り台で遊べるようになった! ……と思いきや?

コウが泣かない程度の地道な練習を続けたところ、意外にも数日で滑れるようになりました。「やったー」と言い、跳ねてうれしそうにニコニコするコウに「もう1回滑る?」と聞くと「滑らない」とのお返事で、その素っ気なさにコウらしさを感じつつ家に帰りました。
滑り台を滑れたことでうれしそうにニコニコしながら、私とハイタッチをしているコウ。その様子を見た私が「もう1回滑る?」と聞くと「滑らない」と即答するコウ。私は「滑らないんだ……!」と驚きつつ「じゃぁ家に帰ろうか」と提案した。
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次の日もすんなりと滑れたため滑り台は克服できたのかと思いきや、ほかの滑り台は完全拒否でした。私から見れば『大体同じ高さで同じつくりの滑り台』も、コウにとっては『全く別の滑り台』だったようです。

「ほかの滑り台はどんな感じかな? 調査しに行こう」とコウに言いながら(これまた無理のない範囲で)いくつかの公園を回って複数の滑り台にチャレンジしていき、1ヶ月経った頃にはベーシックな形の滑り台であれば大体滑れるようになりました。
こうして、ブランコ、はしご、ロープの遊具などを少しずつ克服していったコウは、休日に市内の大型公園へ行くと喜んで遊ぶようになりました。

喜んで遊ぶといっても、年齢相応の動きではありません。膝程度の高さであっても必ず何かにつかまりながらソロリソロリと降り、階段は一段ずつ足を揃えて登るなど、『動きの不器用さ』はその後も目立ちました。

動きの不器用さは今でもあるけれど

道を歩いている中学生を見かけた私。「あのフワフワした歩き方は……コウじゃないかな?」と思って見ている。(フワフワした歩き方なのに、移動スピードは速いコウ)
中学生になった今は……
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中学生になった現在のコウも、歩く姿を遠目に見て「多分コウだな」と分かるような歩き方をしています。

それでも、あの時に遊具で遊べるようになったことは、親子共に「練習してできるようになることもあるんだな」という微かな自信になったと思います。それと同時に、「練習しても(少なくともその時点では)どうにもならないこともあるんだな」という『現状の受け入れ』の土台も整ったような気がします。

『〇〇ができるのなら□□もできるだろう。〇〇ができないなら□□もできないだろう』という見通しが立たない育ち方に親子で翻弄されながら、そのときどきにできることを試していきたいなと思います。
「やってみてできなかったら『今はこの方法ではできない』ことが分かるからね」と言う私に「そうだね。そうしたら他の方法や対策にしよう」と言うコウ。
『やってみてできなかった』ことも大切な経験。
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執筆/丸山さとこ

(監修:鈴木先生より)
球技などの運動が苦手で不器用なお子さんは、発達性協調運動症と診断されることが多いです。発達性調教運動障害があるお子さんへの支援は、病院のリハビリなどでは感覚統合訓練をOTと呼ばれる作業療法士さんが実施しています。また、私のクリニックでは音楽療法の中に感覚統合も含めてトレーニングと評価を行っています。
病院へ行けない場合は、公園の遊具やアスレチックなどでトレーニングすることもできますので、親子で楽しみながら取り入れてみることもお薦めですよ。

もし、お子さんの様子が気になる親御さんがいらっしゃいましたら、今後きちんと向き合うためにも、ASD、ADHD、発達性協調運動症など具体的な診断、医師の診察を受けられることも視野に入れられてはいかがでしょうか。

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。


ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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