「ばあば」を変えた母の日のプレゼント
「でも、母の日にタブレット端末をもらったから、インターネットでニュースが読めるようになった。新聞屋さんにもタブレットで読むから要りませんは言える」。母が新聞をやめたきっかけはタブレット端末を手に入れた事だったのです。
「タブレットだとピンチアウトでいくらでも拡大できるので、これまで読んでなかったような記事も読むようになった」と、母。
「タブレットだとピンチアウトでいくらでも拡大できるので、これまで読んでなかったような記事も読むようになった」と、母。
そのうち発達障害についての記事も目に入るようになり「発達障害ってこういうことだったんだ!」と、初めて知ったのだと。そして孫たちが小さかった頃のことを、夜になるといろいろと思い出すようになったのだそうです。
「今思えばタケルは本当にふざけてなかったし、体が思ったように動いていなかったのだ。その時は腹立たしく、そのまま放ってしまったが、何か良くないことをしたという思いが私の中にも残っていたのだろう……。忘れられなかった」と母は言いました。
「その時にタケルが『(祖母からそれをふざけていると言うんだと叱られたので)これがふざけているということなのか……?』とポツリと言った言葉と、幼稚園児とは思えないような深刻な表情が今でもまざまざと思い出される」「妹のいっちゃんにも私はいろいろしとるやろうなあと思う」と続けました。
「その時にタケルが『(祖母からそれをふざけていると言うんだと叱られたので)これがふざけているということなのか……?』とポツリと言った言葉と、幼稚園児とは思えないような深刻な表情が今でもまざまざと思い出される」「妹のいっちゃんにも私はいろいろしとるやろうなあと思う」と続けました。
15年の時間とデジタルの進化のおかげ
母親の私からすると、まあまあそういう事があったんだろうなあ、とは思っていました。子どもたちは祖母の家から帰ってくると不安定になったり、誤学習をしていたりしたので、後からのフォローも大変でした。しかし、それでも当時は実家に預ける他に選択肢はなかったのです。
母は今年80歳です。元職は学校の職員でした。私の子どもだけではなく、発達障害のある子どもに不適切な接し方をしたことは一度や二度ではない、むしろ忘れていることの方が多いのかもしれません。それだけに「子どもたちに謝りたい」と言ってくれたことには驚きました。
意外と子どもたちには「意外ではない」?
子どもたちを「ばあば」とのWeb電話に呼んだところ、「やっぱね、そうじゃないかと思ってたよ」「昔の教育を受けた人だもん、仕方ないよ。気にしてない」と2人して同じようなことを言っていました。
若い時分に家を出た私と違い、子どもたちは老いた母と一緒の時間を過ごしていたので見抜いていた部分があったようです。もしかしたら、娘には弱みを見せないようにしていたのかもしれませんが……。
若い時分に家を出た私と違い、子どもたちは老いた母と一緒の時間を過ごしていたので見抜いていた部分があったようです。もしかしたら、娘には弱みを見せないようにしていたのかもしれませんが……。
以前発達ナビのコラムで、シルバー世代の親には理解を求めない、「分からないから」と任せてもらえた方が気楽と書かせてもらったのですが……
自閉症カミングアウトに祖母は「そういうこと言うもんじゃない」…!?孫の発達障害「あえて理解を求めない」わが家のバランス
歳月とデジタル技術の進歩のおかげで、私と母との距離は少し縮まったかもしれないと感じています。
執筆/寺島ヒロ
(監修:新美先生より)
すごいエピソードで感動して読ませてもらいました。
寺島さんも以前に書かれていたように、シルバー世代の方々は生きてきた時代が違うので、発達障害について理解してもらえない場合は、無理に理解してもらおうと思いすぎないほうがいいと思うことは多いです。
そんなシルバー世代のお母さまが、80代になって、タブレット端末で情報を再び得られるようになったら、お孫さんの幼い頃のことを振り返って、謝らなければというお気持ちになってくれるなんて、柔軟な思考の素晴らしいお母さまですね。
老眼で新聞を読むのをあきらめていた20年がもったいないように思ってしまいますが、80代になっても情報を保障してくれるタブレット端末というものが出てきたこともうれしく思います。情報を正しく受け取れれば、人間の思考も変化してくるということでもありますね。
これは発達障害のお子さんの情報保障にもつながる話だと思いました(本人に分かるように視覚支援等を用いることで、理解できること、できるようになることが増えるという構図が重なると感じました)。
興味深いエピソードを聞かせていただきありがとうございました。
(監修:新美先生より)
すごいエピソードで感動して読ませてもらいました。
寺島さんも以前に書かれていたように、シルバー世代の方々は生きてきた時代が違うので、発達障害について理解してもらえない場合は、無理に理解してもらおうと思いすぎないほうがいいと思うことは多いです。
そんなシルバー世代のお母さまが、80代になって、タブレット端末で情報を再び得られるようになったら、お孫さんの幼い頃のことを振り返って、謝らなければというお気持ちになってくれるなんて、柔軟な思考の素晴らしいお母さまですね。
老眼で新聞を読むのをあきらめていた20年がもったいないように思ってしまいますが、80代になっても情報を保障してくれるタブレット端末というものが出てきたこともうれしく思います。情報を正しく受け取れれば、人間の思考も変化してくるということでもありますね。
これは発達障害のお子さんの情報保障にもつながる話だと思いました(本人に分かるように視覚支援等を用いることで、理解できること、できるようになることが増えるという構図が重なると感じました)。
興味深いエピソードを聞かせていただきありがとうございました。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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