中1でも作文を一人で書けない…自閉症息子の「気持ちの言語化」の難しさ

ライター:まゆん
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自閉スペクトラム症の太郎は、見たこと、聞いたこと、触ったこと、感じたことなどを言語化するのに時間を要する。もしくは言語化することができない。

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監修: 森 しほ
ゆうメンタル・スキンクリニック理事
ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。産業医として一般企業のケアも行っている(産業医のご依頼を随時受付中)。 ・ゆうメンタルクリニック(上野/池袋/新宿/渋谷/秋葉原/品川/横浜/大宮/大阪/千葉/神戸三宮/京都/名古屋):https://yuik.net/ ・ゆうスキンクリニック(上野/池袋/新宿/横浜):https://yubt.net/ ・横浜ゆう訪問看護ステーション(不登校、引きこもり、子育て中の保護者のカウンセリング等お気軽に):https://yokohama.yuik.net/shinyoko-houkan/

特に苦手なのが、作文

自閉スペクトラム症の太郎は、勉学で特に苦手としているものがある。それは作文だ。

小学生の頃から中学生になった今でも、先生に手助けをしてもらわないと作文を仕上げることができない。具体的には、先生に例文を挙げてもらい太郎が考えてみるのだが、結局ほぼ例文と同じような文章に仕上がっていることが多いようだ。

作文は自分の気持ちを整理して文章に表す。太郎にとって、これは超高度な作業だ。自分が何を感じたか、今自分がどういう心境なのか、自身を見つめることを不得意とする太郎なのだ。
作文は自分の気持ちを整理して文章に表す。自閉スペクトラム症のある太郎にとってはこれは超高度な作業だ。
特に作文が苦手な太郎
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言語化がスムーズな時と難しい時

しかし、言語化することがまったくできないというわけではない。時と場合によって、太郎もすらすらと言語化することができる。気持ちを伝えることもできる。

たとえば家庭内では日常のコミュニケーションに困難さはない。「今日のシチューおいしいね! 誰がつくったの?」「星三つやね!」と流暢に気持ちを言葉にする。
自閉スペクトラム症のある太郎は、言語化がスムーズな時も
言語化がスムーズな時の太郎
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しかし、そのシチューを皿ごとひっくり返してしまった時。こぼれたシチューを前に、太郎は固まって動けなくなってしまう。

こうしたイレギュラーな出来事が起こった時に太郎の特性はハッキリと見えてくる。「どうしよう!こぼしてしまった!」「おいしいシチューがなくなった!」「つくってもらったのに!」など考えているに違いない(これは憶測)。

その後、しばらくすると声をあげずにその場をウロウロと回り出す場合と、そのまま微動だにしなくなる場合がある。完全に固まってしまうのは、慣れない環境で多く見られる傾向にある。
自閉スペクトラム症のある太郎は、言語化が難しいときも
言語化が難しいときの太郎
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社会科見学のことを3年後に…?

小学4年生の行事で社会科見学があり、感想を作文にする課題が出た。その時も、太郎は感想が出てこないため作成にずいぶん苦労したと先生から聞いた。

その社会科見学から3年後、社会科見学を行った工場の前をプライベートでたまたま通った。すると太郎がその時のことを自ら話し出した。

「ここは小学4年の時に学校のみんなと来たところで……」と、見学したその日のことを詳しく話し続けた。感想ではなく、事実を話していた。
社会科見学の3年後に当時のことを話し出した、自閉スペクトラム症のある太郎
3年前のことを話し出すことも
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当時は、「社会科見学どうだった?」「何を見て来た?」といった質問をしても、「覚えていない」「分からない」と答えていた太郎。3年後に急に話し出す様子を見て、不思議だなあと感じ印象に残っている。
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緘黙になる太郎を見ていると

太郎が3年後に言葉にしたことを、文章に表せるかといったらあやしいところです。いまだに放課後等デイサービスの先生がつきっきりで作文作成を手伝ってくださっているからです。

社会科見学のことだけでなく、日常の中で何年も前の出来事をつい最近のことのように話し出すことが時々あります。太郎には頭の中にはたくさんの気持ちや感覚が記憶されているんだろうと思っています。

言語化につまっている太郎に歯がゆさを感じることも以前は多々ありました。それは言語化につまるだけではなく癇癪も伴っている時期でした。

太郎の癇癪がおさまってきた頃にはある程度の「YES」「NO」のやり取りができていたので、私も落ち着いて接することができるようになりました。緘黙になる太郎を見ていると胸がつまることもありますが、「今の太郎はどういう状況なのだろう」と私が見守ることで、太郎の気持ちも変わってくるのではないかと思い、客観的に太郎と自分の状況を見るように心がけています。

執筆/まゆん
(監修:森先生より)
発達障害のある方の中には、頭の中での情報が多すぎて処理に時間がかかり、周りから見るとフリーズしているように見えることがあります。本人の中である程度パターン化して蓄積されているケースでは問題がなくても、「こぼしてしまった時」など、あまり経験がないアクシデントに遭遇するとパターン化されていないために情報処理に時間がかかってしまいます。

さて、その意味で、作文はかなり複雑な課題となります。基本的には初めての経験に対して、まず事実関係を本人の中で整理して、その中で書くべきことを選別しないといけません。そしてその事実に対しての感想を書くわけですが、「作文向き」でないといけないわけです。
たとえば学校行事で工場見学に行った場合、本人としては「〇〇線の電車に初めて乗った、電車内のこんな出来事が印象に残った」「工場の案内をしてくれた人の口癖がこんなふうで面白かった」など、実際には大量の事実と感想があるわけです。しかし、作文として提出するには、その中から先生の期待する事実と感想を選び出して「工場見学の感想文」らしく仕上げないといけません。これは、特に発達障害のある子どもにとっては重い作業です。

たとえ感想を述べることが苦手であっても、本人の中ではしっかりと記憶に残っていて、多くのことを感じているので、安心して見守りましょう。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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