特性上の大問題!「左はどっちだ?」

また、タケルには「右と左がとっさに分からなくなる」という特性があります。
 
少し考える時間があれば大丈夫なのですが、教官に「はい、そこを左!」と指示を受けた時に瞬時に反応できません。「あわあわ」となってポイントを通過してしまうこともしばしばあり、路上教習が中止になった時もありました。
左が分からなくなった時は指を見るというタケル。
左が分からなくなった時は指を見るというタケル。
Upload By 寺島ヒロ
とはいえ、左右の判別は気をつければできるようになるというものではありません。技能教習の検定(見極めテスト)に2度落ち、さすがにこの時はタケルも落ち込んでいました。
ただ、タケルの場合「右」「左」という教官からの言葉がハンドルを切る方向と紐づいていないだけで、曲がる方向自体は分かっているわけです。そもそも、自分の目的地は分かっているのですから、教官からの「右」「左」の指示を聞く必要はありません。
「指示を聞くのは重要じゃない、つまり技能教習の検定にさえ通過してしまえば良いのだ!」と、気がつきました。

検定に使う道、全部行く!

そこで、私が車にタケルを乗せて、技能教習の検定に使う道を全て連れまわすことにしました。検定に使う道は6通り(逆順を合わせて12通り)あって検定直前にしか分かりません。教官は教習生が目的地までの道を覚えるのが大変だから「次は右へ曲がって」「ここは左へ」と教えてくれているのです。親切心なのです。
 
でも、タケルの記憶力なら検定に使われる12通り全ての道順を完全に覚えることができるはず! そして道を完璧に覚えていれば、指示を聞かずともどちらに曲がるべきか分かるはずなのです!
この作戦は当たり、タケルは教習所の卒業検定に無事合格! 運転免許試験場での本試験(学科試験のみ)も一発合格しました。

イマドキ鬼教官なんていない?

教習所では小さなトラブルはありつつも大きな困り事にはぶつからず、少し時間を消費しただけで何とか運転免許を取得できました。
おそらくフロアでも教室でもタケルは「がちゃがちゃ」していたはずですが、教習所の方がさりげなくフォローしてくれていたようです。息子によれば「みんな優しいよ? 合理的配慮とか意識してるんじゃない?」とのこと。
 
私が教習所に通っていた頃は怖ーい鬼教官もいたものですが、少しずつ時代は変わっているんだなあと思います。
執筆/寺島ヒロ

(監修:室伏先生より)
タケルさんが運転免許を取得するまでの詳細を共有くださり、ありがとうございました。
12通りもある道のりを全て完璧に記憶できるなんて、素晴らしい強みですね!
運転は右手と左手、さらには足や目を連動させて動かさなくてはなりません。視覚情報や眼球運動、体の姿勢や手足の動きなどの感覚をまとめて処理し、まとまりのある滑らかな運動を行うことを協調運動と言います。

自閉スペクトラム症がある方では、協調運動の苦手さを持つ方もいらっしゃり、運転のような瞬時にさまざまな部位を連動させて動かさなくてはならない作業が苦手だなと感じる方も少なくないと思います。
もしかしたら、運転に対してハードルが高いと感じていらっしゃる方もいるかもしれませんが、仮に苦手さがあったとしても何度も繰り返し練習することで技術は上達していきますので、焦らずにトライしていただきたいと思います。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35029671
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


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