号泣、自傷、暴言!自閉症娘のパニックに深く悩まなかった理由は?ーー2歳から思春期を振りかえり
ライター:SAKURA
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。
特性上の娘のパニックとは、長く付き合ってきました。
2歳ごろから始まった娘のパニック。10年経った今、振り返って思うのは……
監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
特性上の娘のパニックとは、長く付き合ってきましたが……
広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。特性上の娘のパニックとは、長く付き合ってきました。
娘は、物がなくなったり、忘れ物をしたり、飲み物をこぼしたり、物を落としたり……突然の、予期していなかった事態にパニックを起こし、落ち着くまでとても時間がかかりました。
娘は、物がなくなったり、忘れ物をしたり、飲み物をこぼしたり、物を落としたり……突然の、予期していなかった事態にパニックを起こし、落ち着くまでとても時間がかかりました。
娘は、まだ会話ができなかった小さな頃から、癇癪を起こしやすい子でした。のちに産まれる息子二人を育てた今思うのは、それはイヤイヤ期とはちょっと違うということ。
何か「嫌なこと」があるのだろうということは分かるのですが、娘はそれを母親である私に対して伝えたり、求めたりということがなく、こちら側の声かけに一切反応せず、ただひたすら泣いていました。
何が原因かは、それまでの経験やパターンや勘を働かせ、私が予測するしかありませんでした。
何か「嫌なこと」があるのだろうということは分かるのですが、娘はそれを母親である私に対して伝えたり、求めたりということがなく、こちら側の声かけに一切反応せず、ただひたすら泣いていました。
何が原因かは、それまでの経験やパターンや勘を働かせ、私が予測するしかありませんでした。
声掛けにも応じず、泣くだけの状態だった娘。当時は、きっと話が理解できるようになれば、おさまっていくだろうと思っていましたが、言い聞かせが通じるようになってもちょっとしたきっかけでパニックを起こすことは変わりませんでした。
なくした物が見つかるまで、泣き叫び続けたり……
要求が通らないと、自分の腕を噛んだり、頭を叩いたり……
イライラしたら、全身を掻きむしったり……
思い通りに行かなかったら、怒りだしたり……
失敗したら、呼吸が荒くなったり……。
パニックに関しては、あまり深く悩まなかった。その理由は……
私は今まで、娘の発達のことでたくさんのことを、悩んだり迷ったりしましたが、パニックに関しては、あまり深く悩んだことはありませんでした。
それは、娘の気持ちが理解できたからです。私自身、予想外の事態が苦手で……
それは、娘の気持ちが理解できたからです。私自身、予想外の事態が苦手で……
娘のように激しいパニック状態にはなりませんが、内心パニックは起こしていますし、他人の前では落ち着いていても、旦那の前では動揺を隠せません。
娘がパニックになる気持ちは理解できたので、ほかの特性と違い、特別な療育はしませんでした。
小さい頃は、避けられそうなパニックは避けるようサポートしていましたが、それでも避けられずパニックを起こした時は、基本的な声かけをするだけでした。
外でのパニックは周りの人の迷惑にもなるのでしっかり対応していましたが、家の中では、怪我や事故など最低限のことだけ注意しつつ、あえて気が済むまでパニックを起こさせることもありました。
パニック状態の娘に「パニック起こさないで!」と怒っても意味がないと思い、家でのパニックに関しては、そうか、そうか……どうぞ、どうぞ……という感じで、「どうにかしてやめさせよう」という気持ちはありませんでした。
小学校4年生ぐらいからは、思春期・反抗期になり、私に怒りをぶつけるようになってからは、発達外来の先生のアドバイスに従い……
発達外来で反抗期の困りを相談!同席していた発達障害娘が「なんで悪口いうの!」とショックを受けるも医師の話で矛盾が解けて…!?
パニックの回避をしてあげることをやめ、パニックが起きても自己責任。今まで以上に冷静な対応にしたところ……
だんだんと娘のパニックは間隔が空いていき、回数も少なくなっていきました。
娘が中学一年生になった今、振り返って思うこと
パニックをおさめようと、特別に頑張ったことはありません。たんたんと同じ声かけを繰り返し、成長過程で課題が起きれば、それに合わせて対応を調整していきました。
中学一年生になった今は、たまに「どうしよう!どうしよう!」と慌てたり、呼吸が早くなったり、泣くことはまだありますが、自分を傷つけることはなくなりました。
時間はかかりましたが、焦ることなく流れに身を任せて、今はよかったと感じています。
中学一年生になった今は、たまに「どうしよう!どうしよう!」と慌てたり、呼吸が早くなったり、泣くことはまだありますが、自分を傷つけることはなくなりました。
時間はかかりましたが、焦ることなく流れに身を任せて、今はよかったと感じています。
執筆/SAKURA
(監修:新美先生より)
娘さんのパニック起こしたときのおさめ方の変化について、長年の経過を教えてくださりありがとうございます。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、脳内のイメージをパッと切り替えて行動することがスムーズにいかないということがあります。このため、こうだと思っていたのと異なることが現実に起きると(想定外)、思っていたイメージを切り替えてじゃぁこうしようと次の対処の道筋をスムーズに思いつきにくく、行動が停止してしまったり、感情があふれてしまったりします。こういう想定外のことが起きた時にもこうすれば大丈夫という、経験を積むことや脳内マニュアルが増えることで、脳内イメージをマニュアルに従って切り替えやすくなったりします。また、感情のコントロールも年長するにしたがって上手になる面もあるでしょう。
SAKURAさんの娘さんが、年齢が大きくなるにしたがって、徐々に納め方が上手になったのも、経験の積み重ねと感情コントロールの上達なのかもしれません。記事内でも書いていただいたように、パニック中に、泣いたり怒ったりすることを叱責したり、説得したり、なだめたり対処法を提案したりなど、過度に関与することは逆効果になることがあります。パニック中は安全を確保して、可能ならその場からいったん離れて、本人が落ち着くことを待つのがよいでしょう。
そうしたことを重ねてきたことで、娘さんなりにパニック時の混乱のおさめ方、想定外に対処する経験値を増やしてこれたのかなと思いました。
(監修:新美先生より)
娘さんのパニック起こしたときのおさめ方の変化について、長年の経過を教えてくださりありがとうございます。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、脳内のイメージをパッと切り替えて行動することがスムーズにいかないということがあります。このため、こうだと思っていたのと異なることが現実に起きると(想定外)、思っていたイメージを切り替えてじゃぁこうしようと次の対処の道筋をスムーズに思いつきにくく、行動が停止してしまったり、感情があふれてしまったりします。こういう想定外のことが起きた時にもこうすれば大丈夫という、経験を積むことや脳内マニュアルが増えることで、脳内イメージをマニュアルに従って切り替えやすくなったりします。また、感情のコントロールも年長するにしたがって上手になる面もあるでしょう。
SAKURAさんの娘さんが、年齢が大きくなるにしたがって、徐々に納め方が上手になったのも、経験の積み重ねと感情コントロールの上達なのかもしれません。記事内でも書いていただいたように、パニック中に、泣いたり怒ったりすることを叱責したり、説得したり、なだめたり対処法を提案したりなど、過度に関与することは逆効果になることがあります。パニック中は安全を確保して、可能ならその場からいったん離れて、本人が落ち着くことを待つのがよいでしょう。
そうしたことを重ねてきたことで、娘さんなりにパニック時の混乱のおさめ方、想定外に対処する経験値を増やしてこれたのかなと思いました。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。