発達障害の大学生のよくある困り事、合理的配慮の具体例も【公認心理師・井上雅彦先生にきく】

ライター:発達障害のキホン
発達障害の大学生のよくある困り事、合理的配慮の具体例も【公認心理師・井上雅彦先生にきく】のタイトル画像

発達障害や発達に特性がある大学生、どんなことに困りやすい? どこに相談したらいい? 悩んだとき、専門の先生の解説があると心強いですよね。ここでは「発達障害の大学生への合理的配慮や悩み」について、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生が分かりやすく教えてくれます。(取材/LITALICO発達ナビ編集部)

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

発達障害のある大学生が受けられる「合理的配慮」って?

大学生への合理的配慮

合理的配慮とは、障害のある人が社会生活を送るにあたって、社会の中にあるバリアによって生活が送りづらかったり、困ったりしている際に周りの人や事業者などが負担が重くない範囲で対応することが求められるものです。

令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化され、学校や事業者と障害のある人が対話を重ね、一緒に解決策を検討していくことがより重要になってきます。
参考:リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html

発達障害の大学生、どんなことに困りやすい?

発達障害(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、SLD/LD(限局性学習症)など)のある大学生は以下のようなことに困りやすい傾向にあります。

・朝起きられない(睡眠トラブル)
・友達トラブル
・突然の予定の変化が苦手
・マルチタスクの作業が苦手
・空気を読むのが苦手
・課題を溜め込んでしまう
・履修表の登録方法が分からない
・大勢の前での発表ができない
・不器用さ
・整理整頓ができない
・時間が守れない
・字を書くのが苦手、読むのが苦手、簡単な計算ができない
など
※上記は一例です

このコラムでは、「支援の手厚い大学」の見分け方、大学の合理的配慮の具体例、大学への伝え方、よくある困りや対策など、発達障害のある大学生の困りについてのギモンを専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。

発達障害のある子どもの大学生活が不安!大学選び、合理的配慮の具体例、よくある困りなど専門家が回答

ここからは鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生に、発達障害のある子どもの大学生活についての質問にお答えいただきます。

「支援の厚い大学」の見分け方は?

Q:子どもに発達障害があります。大学進学を目指していますが、大学によって支援の手厚さは異なりますか? 異なる場合は、どのようにしたら手厚い支援が受けられる大学なのかを見分けられるでしょうか?

A大学の規模、学生の人数、学部によって受けられる合理的配慮の幅は異なります。オープンキャンパスなどで直接学部を見学し、必要であれば質問してみましょう。特に、実習が卒業の必須条件になっている場合、その内容や必要な配慮について予め調べておくことが大切だと思います。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
Upload By 発達障害のキホン

合理的配慮の具体例が知りたい!

Q:発達障害のある生徒は大学でどのような合理的配慮が受けられるのでしょうか? 具体例が知りたいです。

Aすべてのニーズに対して合理的配慮が得られるわけではありませんが、提出物の期限の延長とリマインドや授業中の配布物や板書の撮影、別教室での試験や試験時間の延長、パソコンの使用などがあります。これらは本人との話し合いの中で決定されます。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
Upload By 発達障害のキホン

配慮してほしいけれど過保護な親と思われないか心配

Q:子どもに発達障害があり、配慮してほしい項目がいくつかあるのですが、大学にどこまで伝えていいのか悩みます。過保護だと思われないでしょうか?

A過保護だと思われるかもとのご心配は不要です。修学に際しての保護者からの相談を受けることはありますが、合理的配慮の実施に関しては基本的に本人からの申し出が必要となります。できれば高校生の頃から、親御さん以外に自らのニーズを相談できる体験をしておくと良いと思います。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
Upload By 発達障害のキホン

発達障害のある大学生のよくある困りって?

Q:一人暮らしで起きられない、提出物の期限が守れない、単位の計算ができず卒業できなかったらどうしよう……大学入学後に起こりそうな困りに不安を感じています。
合理的配慮の範疇からは外れてしまう場合もあるかもしれませんが、発達障害のある大学生のこのような困りへの対策が知りたいです。


A合理的配慮で解決すべきか、個々の工夫や対応によって解決すべきことかの判断はケースバイケースで変わってきます。
それらを整理していく意味でも学内の相談機関を利用していくことが大切です。
本人が大学の学生相談室に行けることで単位履修や授業への出席、実習中の困り事などさまざまなことに対して相談が可能になります。入学前に学生相談室や相談センターについて情報を集めておくと良いと思います。
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
Upload By 発達障害のキホン
受験・授業・単位取得…発達障害のある学生が受けられる具体的な支援は?――大学、短大、高専での障害学生支援について日本学生支援機構に聞く【事例も紹介】のタイトル画像

受験・授業・単位取得…発達障害のある学生が受けられる具体的な支援は?――大学、短大、高専での障害学生支援について日本学生支援機構に聞く【事例も紹介】

持ち物の管理・整理整頓が上手くできず、いつも部屋や机が散らかっているのタイトル画像

片付けようと思っても、量が多すぎてなかなか進められない…そんなときは

通信制の大学「放送大学」ならではの支援とは?合理的配慮を受けたいときの相談の仕方、集中力が続かない・タスク管理が苦手・友達関係を広げたい場合はどうしたら?ーー障がいに関する学生支援相談室に聞くのタイトル画像

通信制の大学「放送大学」ならではの支援とは?合理的配慮を受けたいときの相談の仕方、集中力が続かない・タスク管理が苦手・友達関係を広げたい場合はどうしたら?ーー障がいに関する学生支援相談室に聞く

高校入試中にパニック発作、進学先は支援が薄く…大学見学で「障害学生支援」に出合って【読者体験談】のタイトル画像

高校入試中にパニック発作、進学先は支援が薄く…大学見学で「障害学生支援」に出合って【読者体験談】

バーンアウト、ひきこもり…有名大学への進学からの挫折。青春を勉強に捧げたASDの私が今思う「学生時代に学ぶべきだった」ことのタイトル画像

バーンアウト、ひきこもり…有名大学への進学からの挫折。青春を勉強に捧げたASDの私が今思う「学生時代に学ぶべきだった」こと

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。