自閉症息子を育てる困りや悩みは「誰にも分かってもらえない」…心を閉ざした母を救ったのは?

ライター:よいこ
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自治体で行われた3歳児健診で、長男あーの発達相談をしたものの、保健師さんの対応に違和感があった私。後日、別の保健師さんから自宅訪問のお伺いがありました。気は進まないけど一応受けとくか(失礼にも程があるが当時の正直なお気持ち)……ということで、保健師さんがわが家にやってくることになりました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

保健師さんの自宅訪問に気が進まなかった理由。それは......

わが子の行動や困りが理解されず、「小さい子どもにはよくあること」と言われてしまう
わが子の行動や困りが理解されず、「小さい子どもにはよくあること」と言われてしまう
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当時のあーに見られた困りごとは、2歳3歳の子どもにありがちな行動との差別化……というか区別が難しく、それが私の悩みや不安を複雑にしていました。

例えば、あーのこだわり行動(おもちゃ屋さんで帰ろうねと言っても聞く耳持たずで帰れない、公園のすみっこでひたすら水路に石を投げている、同じお友達と帰らないと気が済まない、その子と絡むわけではない……など)を人に話しても、「あるある!子どもってそうだよね~!」と「共感」されてしまうんです。

でもね、違うのよ、体感すれば分かると思う、アナタ(定型発達の子どもの親)の困りとわたし(ASD(自閉スペクトラム症)の子どもの親)の困りはおそらく種類が違う。よしんば行動が同じでも、意思疎通が可能か否かで両者には大きな隔たりがあるのだ……と大賢者のように頭でっかちになり、友達に悩みを話すことすらはばかられ、1人悶々としていたわけです。なので、前回の保健師さんと違う方とはいえ、話したところでどうせ分かってはもらえないだろう……わたし以外はみんな他人ですから……とひねくれまくっておりました(仕方ないと笑って許してやってくれ)。
謎の遊びを繰り返す息子に、母はヘトヘト…カオスな状態のわが家
謎の遊びを繰り返す息子に、母はヘトヘト…カオスな状態のわが家
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そんなわけで心閉ざしまくり、ひねくれまくりの母、アニメのセリフを絶叫しながらクローゼットから飛び降りる(下にマットレスを敷いて安全確保)謎すぎる遊びを繰り返している息子、当然だが雑然としている禍々しい部屋にとうとうやってきました。保健師さんが……。

心を閉ざした母、謎すぎる遊びを繰り返す息子のもとに、保健師さんがやってきた!

玄関先であいさつをした瞬間から感じの良かった保健師さん
玄関先であいさつをした瞬間から感じの良かった保健師さん
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わが家にやってきた保健師さんは、玄関先で明るく挨拶をしてくれました。その時から、「なんか感じが良いかもしれない……」と少しだけ心のドアが開いたわたし(ちょろい)。

保健師さんはあーと楽しく遊んだあとに、わたしから普段のあーとの生活ややりとり、困りごと、悩みなどの聞き取りをしてくれました。

具体的に「あーくんこんな時どうですか?これは苦手ですか?お母さんこういう時困ります?」という問いかけがあったおかげで答えやすかったのもあり、話せば話すほど永遠に語れるんじゃないかというくらい、どんどんどんどんするするするする出てくる出てくる……。自分でも驚くくらいに……(保健師さんも驚いたかもしれない)。

保健師さんと話すうちに気づいた、自分の気持ち

育児の悩みや困りごとについて、保健師さんに話すことができてスッキリ!
育児の悩みや困りごとについて、保健師さんに話すことができてスッキリ!
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でも、話すうちに、悩みや困りがなくなるわけではないけど、心の奥底に溜まっているドロドロとした何かをいったん外に出して、少し軽くなれたような気がしたんです。つき物が落ちてスッキリしたような、そんな気分……。

わたしはここまで、あーの育児の悩みを相談できる専門の方に全く巡り会うことができていなくて(幼稚園の担任の先生は当時新任のフレッシュさんでした)、とにかくあーについていろいろ話してみたかったんです。あーのこんなところはどうなのか、あんなところは何なのか、こんなところに困ってます……と。話して、聞いてほしかった。

欲しかったのはあーを「普通」にする魔法でも、よく効く療育でもなくて、「悩みを分け合える誰か」だったのかもしれないなって今は思います。
執筆/よいこ
(監修:室伏先生より)
あーくんとの生活の中でのさまざまな葛藤や悩み、そして保健師さんとお話しされた時のお気持ちについて共有してくださりありがとうございました。ただでさえ育児中は、親子だけで過ごす長い時間に孤独感やストレスを感じられる親御さんは少なくないと思いますが、非言語コミュニケーションも含めた意思疎通の難しさのあるASD(自閉スペクトラム症)のお子さんと一生懸命に関わり、しかもほかの親御さんと悩みを共有できずに、孤独や不安を深めてしまう親御さんもいらっしゃることと思います。誰かと共有したり、相談したりすることの必要性はとても大きいです。親御さん同士の情報交換や経験の共有ができる場所や、専門スタッフに相談しやすい環境がもっと増えることで、負担が少しでも軽くなるよう願っています。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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