生まれた息子に知的障害と自閉症が。「障害」のある子どもの親になるということ【妻から夫へのインタビュー】

ライター:みん
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知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の次男Pは現在特別支援学校の3年生です。これまで母親からの目線で私自身の考えや気持ちなどをコラムに書いてきましたが、今回は夫にインタビューをし、わが子に障害があると分かってから現在までの父親からの目線、気持ちなどを書いてみようと思います。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

障害者の親になると、今までのような生活はできなくなると想像していた

Q:わが子に障害があると分かる前は障害者の親に対してどんなイメージを持っていたか?

夫「私がこれまで障害者の親に対して持っていたイメージは、ただただ毎日暗い気持ちで過ごし、子どもの存在を隠すように静かに生活しないといけない場合が多い……といったものでした。なぜなら、わが子が他人に迷惑をかけることを恐れたり、子どもに障害があることを知られたくない気持ちになったりするのではないか?と心配していたからです。しかし実際に障害のある子の親になってからは、考え方が変わってきました。それはもちろん、これまで一緒に生活してきたので慣れもあるかもしれません。でもやはりわが子は可愛いですし、わが子に障害があっても、さまざまな支援を活用することで、今までと大きく変わることなく生活ができています。」
障害のある子どもの親になってみると、自分が持っていたイメージとは違った
障害のある子どもの親になってみると、自分が持っていたイメージとは違った
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あやしても目が合わないわが子に違和感があった日々……

Q:わが子に障害があると気付いたきっかけは?

夫「発達の遅れはうすうす感じていましたが、息子が0〜1歳くらいの時、抱っこしてあやしていても息子は私の目は一切見ず、私を透かして遠くを見ていると感じた時から違和感がありました。その時はそれがなぜなのかも分からなかったのですが、上の子と比べて何かが違うと感じていました。障害があると確信したのは、息子が2歳を過ぎた頃、妻と息子の様子について話し合った時です。日ごろから息子の様子を一番よく見ている妻の話を聞いて、何の障害かは分からないけれど、明らかに何らかの困り事を抱えていると感じ、医療機関に相談し、医師に診断してもらうことを決意しました。」
上の子と比べて「目が合わない、反応がない」と違和感があった日々
上の子と比べて「目が合わない、反応がない」と違和感があった日々
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Q:わが子に障害があると分かってからの気持ちや悩んだこと

夫「ハッキリと障害があると診断されてからは、まずはじめに将来に不安を感じました。この子はこの先どう育って行くのか?お金はどのくらい必要になるのか?自分がいなくなったら、家族はどうなってしまうのか?など当たり前のことかもしれませんが、たくさん悩みました。ただ、不思議と悲しくはありませんでした。なぜなら障害があったとしても私の目の前にいる子どもが可愛いことに違いありませんし、いくら悩んだところで受け入れるほかないと覚悟ができたからかもしれません。」

一緒に生活するのは大変で、イライラすることもあるけれど……

Q:わが子との日々の関わり方

夫「とはいえ障害児を育てるのは大変で、息子の理解できない行動やこだわりに付き合ううちにイライラし、怒りの感情が生まれることもあります。父親とはいえ私も人間なので、そんな時は子どもと距離を置きたい気持ちになります。一方で、息子の何気ない成長を感じた時に、日頃密に接する時間が少ない分、いつの間にこんなことができるようになったのだろうと驚かされることもあります。でも成長することで困り事が減ることもあれば、逆に増えることもあるので息子の成長に一喜一憂している日々です。」
息子の成長に一喜一憂する日々
息子の成長に一喜一憂する日々
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Q:これからのこと

夫「将来は私も息子と一緒に何かをつくったり、楽しいことを探したりしながら、何か夢中になってできる息子の生き甲斐のようなものを見つけてあげることができればと思っています。これから大変なこともあると思いますが、息子にはできるだけ幸せに笑って暮らせる人生を過ごしてもらいたいと願っています。」
笑顔で幸せに過ごしてほしい
笑顔で幸せに過ごしてほしい
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執筆/みん
(監修:初川先生より)
みんさんの夫氏へのインタビューをありがとうございます。発達ナビのコラムでも母親視点での語りのほうが多いので、父親目線での語りをうかがえるのは貴重ですね。わが子に障害があるかもしれないと勘づき、実際に診断されて障害があると受け取る。その大きな出来事の捉え方は人それぞれです。みんさんの夫氏は、みんさんが持っていた違和感を共に感じて受診をご決断されたということでした。このあたり、人によってだいぶ違うだろうと感じます(場合によっては夫婦でとてももめることもあるでしょう)。父親側の語りの絶対数が少ないこともあり、父である男性陣からするとご自身の葛藤や迷い、不安などをどう言葉にしていいか分からなかったり、言葉にすることで夫婦でもめそうだからあまり語らずにいたりすることもあるのではと思います。今回のエピソードを可能なら、例えば夫さんなどパートナーにも読んでいただいて家族で自分たちはどうかという話をしていただくのもよいかもしれませんね。子どもが成長するにつれ、いいこともそうでないことも起きることがあり、「一喜一憂」と語られていましたが、そのあたり、きっと皆さんも思い当たる節があるのではと思いますし、ご家族でそのあたり語らいながら子育てできると、お子さんに関わる時間は長短あれども同じ方向を向きやすくなるのではと思います。
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https://h-navi.jp/column/article/35030049
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


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