近すぎる距離をその都度注意するものの

何度も何度も繰り返し説明しました
何度も何度も繰り返し説明しました
Upload By もっつん
お友達との距離を近くしすぎて、嫌がられることも多々ありました。そこまで仲が良い訳ではないクラスメイトに急に抱きついて、びっくりさせてしまったり。私が気づいた時には注意して、一緒に謝ることを繰り返しました。

それでも、一方的に注意をしないように気を付けていました。「お友達がびっくりして嫌な気持ちになってしまうよ」と説明しつつ親子で適切な接し方を何度もシミュレーションしてみたり、「仲良くしたい時には抱きつくのではなくて、言葉で伝えたほうがかっこいいんだよ」と根気強く伝えたり……いろいろ試す中で、タクに伝わっていると感じることもあれば、あまり伝わっていないこともありました。

周りの目が厳しいと感じるが故に真っ先に注意や駄目出しをしてしまいがちですが、注意されて嫌な気分になるとそこしか記憶に残らなくなってしまうように思います。パーソナルスペースを教え込むのはとても大変なことですが、間違った距離感ばかりに目を向けずに、正しい距離感を分かりやすく伝えることができたら、きっと良い方向に成長してくれると信じていました。

就学して落ち着く過ごし方を見つけたタク

無理に友達の輪に入るより、落ち着ける環境も必要ですね
無理に友達の輪に入るより、落ち着ける環境も必要ですね
Upload By もっつん
小学校に入学すると、男女別のグループができ始めたり同級生たちがよりパーソナルスペースを大切にするようになる中、空気感を読み取れないタクは苦労しているようでした。この調子で小学校でお友達と仲良くできているのかな?と私は毎日心配していました。

ある日、「今日は誰と遊んだの?」という問いかけに対して「くうき君と遊んだ」と答えたことがありました。くうき君というのは、空気のことでした。

誰とも遊べてないということを知った私はショックを受けてとても心配しました。「くうきくんは優しいし怒らないから好きなの」というタク。それを聞いた夜は私は、眠れないほど悩んでしまいました。

しかし今になって振り返ってみると、友達と遊ぶということを最優先にする必要はなかったと思います。タクは大人数でルールのある遊びをするよりも、自分のペースで石を探したり昆虫観察をする事のほうが好きでした。その事実を優しく受け止めて「友達の輪に入ってほしい」という私の願望を切り離して考えられたら、感じなくて良いストレスも多かったのではないかと思います。

型にはまった幸せというものを無意識に求めてしまいますが、その型がわが子と自分を苦しめることも多いものです。タクが成長して友達付き合いに関して、親の私が気にしたりストレスを感じてしまうこともあります。そんな時は、あの時の「くうき君」のことを思い出して自分の中にできてしまった型を取り払うように意識しています。

型にはまりに行くことは、子育てにとって余計なストレスを増幅させてしまうのでこれからも気をつけようと思います。ちなみに適切な距離感を前よりもとれるようになったのは、社会的ルールを少しでも身につけさせてあげたいと願い、根気強く言い聞かせてきたことが少しずつ効いてきたのだと感じています。

執筆/もっつん
(監修:森先生より)
もっつんさん、お子さんの幼少期の体験談をありがとうございます。タクくんは、後追い、人見知りがあまりないお子さんだったのですね。好奇心旺盛で人と近い距離で接することができるという良さもありますが、迷子になったり、相手によってはびっくりされてしまうこともあるので、保護者としては心配になりますよね……。これは大人にも言えることですが、「心地よい」と感じる他人との距離感は、お子さんそれぞれで違います。「心地よい」と感じる人との距離感に、「間違っている」とか「正しい」という決まりがあるわけではありません。一方的に注意するのではなく、もっつんさんのように「お友達がびっくりしない距離感」、「お友達と仲良くなれる方法」を根気強く伝えていけると良いのではないでしょうか。

また、「人以外のもの」への関心や愛着の度合いも人によって違います。本だったり、音楽だったり、景色だったり、自分の好きなものに囲まれて過ごす時間は、友達と過ごす時間と同じく大切なのです。タクくんの場合は、「くうき君」や「石」「昆虫」などなど、大切なものがたくさんあったということですね。実際、大人だって毎日毎日誰かと会う予定が入っていたら疲れてしまいますよね。たまには一人で趣味の時間を楽しむ日もないと安まらないのではないでしょうか。

お友達と遊びたい時間と自分の好きな世界にひたりたい時間のバランスは、人によって違います。親としてはついつい自分の考える幸せの型を求めてしまいがちですが、もっつんさんのように、お子さん自身の求める幸せを考えてあげられると良いですね。これからも、タクくんももっつんさん自身も、「こうあるべき」という型にこだわらず、のびのびと生活できるよう、応援しております。
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https://h-navi.jp/column/article/35030135
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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