大学中退後の模索。障害者雇用、就労移行支援、就労継続支援A型などでの働き方と感じたこと

大学を辞めてから、私はさまざまな働き方を経験しました。それぞれで行ったこと、感じたことをお話しします。

パソコンスキルが役立った障害者雇用

私は身体障害者手帳を持っていたので、障害者雇用でいくつかの人事総務系の仕事に就きました。雇用形態は契約社員かパートです。
高校では挨拶の大事さを学んでいたので、挨拶だけはどこに行っても褒めていただきました。あとはWord、ExcelなどのOffice系のソフトにも高校から触れていたので、その点も困らずに済みました。

会社によっては任せる仕事がないのか、電話の応対以外はただぼーっとパソコンを眺めたり、書類整理の単純作業が多かったです。逆に信頼していただけたことでは、いろいろ任せていただき、その結果キャパオーバーに……。さまざまなことがありました。

この時、私は抽象的な指示が通りにくいと感じるようになりました。少しでも強みが増えればと、ビジネス系の検定を取得しました。

※「Word」「Excel」は、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における商標または登録商標です。

就労移行支援。どこも出だしこそ順調なのですが……

就労移行支援は複数利用しました。どこも出だしこそ順調なのですが、「通院後にも来て欲しい」とか「目標を高く持って欲しい」と少しずつ要求が高くなると、体力的にも精神的にもついていけなくなりました。また、「相談しすぎです」というスタッフと「もっと頼ってもらっていいい」というスタッフの板挟みになったり、ほかの利用者さん同士の口論で過呼吸を起こしたこともあります。

実習で、「姿勢が悪い」とフィードバックを受けたこともあります(脳性麻痺の特性で座位の保持が大変なのを、支援する側も、企業側にも理解いただけていないことを痛感しました)。

常に緊張感を感じた就労継続支援A型

常に緊張感があったA型。仕事内容についてスタッフも利用者も皆手探り状態で、ストレスを強く感じました
常に緊張感があったA型。仕事内容についてスタッフも利用者も皆手探り状態で、ストレスを強く感じました
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A型では事務補助全般をやらせていただきましたが、個人情報を扱っている入力メインの職場だったので常に緊張感がある職場でした。当時新規で新たに施設を増やしたところだったので、スタッフも利用者も皆手探り状態で、ストレスを強く感じました。

学びなおしへの一歩、通信制短大を卒業

このように働く中で私は発達障害の可能性を指摘され、24歳でASD(自閉スペクトラム症)、LD・SLD(限局性学習症)の診断を受けました。境界知能や視覚認知に困難さがあることも分かりました。その後、精神保健福祉手帳を取得しています。医師から「一般的にこんな簡単に仕事を辞めない」と言われ、自分の社会性の弱さに気づかされましたが、逆に「これで自分の特性を知ることができた」とほっとした部分もありました。

そんな中も、私は法学を学び直したいという気持ちが消えませんでした。ただ、独学で法律を勉強するのは難しいとわかっていたので、次に興味のあった、高齢者福祉と心理学を通信制短大で学び、何とか2年間で卒業することができました。

基本的にスクーリングは金土日の週末で開催され、さまざまな年齢や立場の方が参加されていました。「一緒にがんばろう!」と過ごす3日間はとても貴重な時間でした。
中でも特に手話のスクーリングは印象的で、最後の単位認定試験が手話の自己紹介だったので、仲良くなった方々と何度も練習したのが良い思い出です。また学生同士の集まりも多く、年齢的にまだ一番年下くらいだった私は、いつもありがたいことにいろんな先輩に可愛がっていただけました。

周りには短大を卒業後、そのまま大学3年次に編入される方も多かったのですが、私は経済面に加え、残り2年間をこのまま突き進むには体力面で不安があるため、一旦編入は見送りました。

選択肢はAかBだけではなく、Cを作ることもできる

今、私は創作活動を中心とする就労継続支援B型事業所で、イラスト制作やピアノ演奏に取り組んでいます。最近ではクリスマスカードが商品化され、これからもっと多くの作品を作っていきたいと思っています。

これまでの経験で感じているのは、「選択肢はAかBだけではなく、Cを作ることもできる」ということです。そう考えることで、開く道があるのだと思います。大学への登校中、「もう無理だ」と糸が切れたあの日から思いもしなかった道を歩む自分がいます。今後の目標は、通信制大学で学び直し、最終的に卒業することです。
選択肢はAかBだけではなく、Cを作ることもできる!
選択肢はAかBだけではなく、Cを作ることもできる!
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今も自分の特性に悩むことは多いです。でも「頑張る」のではなく、自分が笑顔でいられることを指標にした「顔笑る(がんばる)」気持ちで、一歩ずつ進んでいこうと思っています。

エピソード提供/YOSHIMI
イラスト/マミヤ
(監修:初川先生より)
卒業、そして福祉的就労の今という流れを共有ありがとうございます。さまざま大変な思いをされたり、理解されないつらさもありながらもご自身がつらくない道を開拓され、また学びたいことを大事に持ち続けられていることが印象的です。

発達ナビをご覧の保護者の方には、高校・大学や特別支援学校高等部などをお子さんが卒業したら、そのままどこかしらに就職し、そこでずっと働いていくものだというイメージを持たれていることもあるかもしれません。もちろんそうした場合もありますが、お子さんの発達的な特性や得意不得意と仕事やその職場が合っているかどうかは、予想しきれない面もありますし、つらいところで無理して働くことがよいわけでもありません。さまざまな経験の中で、自分にはこれが合っている、これができる、こうしてくれると助かるということをつかみながら、仕事や職場を変えることもあることは知っておきたいところですね。

また、仕事をするうえでは、発達的な特性や得意不得意がなかなか作用してくる面もあります。指示の出し方1つにしても、言葉での指示がよいのか、文字による視覚的なものがよいのか。1つずつがよいのか、あらかじめリストのように見通しを持ちつつまとまった指示出しがあるとよいのか。そうしたあたりについて、今は民間事業者でも合理的配慮が義務になりましたが、まずは本人が自分の特性や得意不得意をわかったうえで、事業者や企業側と話し合っていくプロセスを経由するということです。

YOSHIMIさんも語られているように、経験の中でこうしてくれると助かった、こういった配慮がないと難しかったなどを、できれば学齢期から積みながら仕事選びや大学での学びの継続等に活かしていけるとよさそうですね。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。


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