つらい出来事が私自身の転機に

子育てのプレッシャーが重くのしかかってしました
子育てのプレッシャーが重くのしかかってしました
Upload By もっつん
タクが将来困らないように、一般常識をしっかり教えたい、命に関わるような危険な行動を止めたい、さまざまな思いが交錯する中でいつしか「強く叱りすぎる」ようになっていたわが家。それは外部から指摘されなければ気付けないような状態になっていました。

児童相談所が介入してからは、繰り返し保護者の面談が行われて、認知やコミュニケーションを見直すための援助を受けました。児童相談所に通報されて保護されてしまった時のことは、思い出しても胸が苦しくなる出来事でしたが大きな人生の転機になりました。私自身が病院やカウンセリングに通うきっかけになり、発達に関する勉強をして資格を取得して、タクのことをより理解しようという気持ちが強くなりました。今、わが家はすごく穏やかで、時には喧嘩する時もあるけど何でも話せる家族関係になっていると思います。

一人で抱え込まずに、周りの人を頼ってほしい

相談できる場所はたくさんあります
相談できる場所はたくさんあります
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発達障害のある子を育てていると、負担がかかる場面も多くて親は常に悩み、疲労困憊な状態が続きやすいと思います。実際に、心身に不調をきたしてしまう人もいます。そして、問題行動の多さから、周りから「しつけがなってない」と思われることもあり、実際に面と向かって指摘されることもあります。

そんな時、真面目な人はますます「私がしっかりしなくちゃ!」と自分を追い詰めてしまうのではないでしょうか。つらい時期を過ぎた今だから分かることは、子育ての悩みを自分だけで抱え込んではいけないということです。発達障害のある子の子育てをしていることは恥ずかしいことではないと、当時の私に伝えたいです。義母に指摘された時も、自分自身のできない面を隠さずにさらけ出して関わってもらえばよかった。実親や先生や市の職員さんにも弱音を吐いて、親がカバーしきれない部分をサポートしてもらえば、もっと精神的にも穏やかな子育てができていたのかもしれません。

今、当時の私のように悩んでいる方がいたら、決して一人で抱え込まずに、周りの人に頼ってください。そして、自分自身の心も大切にしてほしいと思います。そうすることで、子どもへの関わり方においても気負いすぎることなく、適切に関われるようになっていくのではないかと思っています。
執筆/もっつん
(監修:初川先生より)
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のあるタクくんを育てる中での母もっつんさんの葛藤、苦しみ、気負いなどつらい時期を経て今感じていることのシェアをありがとうございます。多動や衝動のあるタクくんを守るために、常識的な立派な子に育てるために頑張ってこられたがゆえに、強く𠮟りすぎてしまったこと。そして、ステップファミリーがゆえの難しさ、再婚されたパパが自分の連れ子であるタクくんを叱るときの複雑な思い。タクくんが成長とともに「問題がある」と周囲から思われる中で、もっと追いつめられる構図。児童相談所に一時保護されたという保護者からするととても衝撃的かつ大きな出来事。そこからの関係やコミュニケーションの修復やご自身の特性についても捉えなおす機会となったこと。どれもこれも本当に大変な局面だったと思います。

もっつんさんが最後に書かれていましたが、1つには、大変な時に弱音を吐く(弱音とは限らずに、大変だと言う)ことがその後の支援を得やすくするきっかけになります。子育ては親が責任もって、他人様に迷惑かけずに頑張るものだという風潮があるために、まじめな方や一生懸命な方は困りごとを抱え込んでしまうかもしれませんね。支援職である私からすると、そもそも子育ては家庭でのみ行えるものではなく、園や学校、地域などさまざまな大人に支えられながら進むものだと感じます。どんなお子さんでも少なくとも園や学校の先生にはお世話になっているはずで、だからこそ、お子さんを真ん中に据えて、育てる上での困りごとや悩みをお子さんに関わる大人たちが一緒に考えていけたらいいなと思っています。

また、タクくんの幼少期にもっつんさんは「発達に違和感」を感じられていたとのこと。この違和感も大事にしていただきたいと思います。健診などで相談しても「大丈夫」あるいは「様子を見ましょう」と言われてしまうこともあるかもしれませんが、それでもその後の折々に「違和感があります」と言い続けてほしいと感じます。それを聞いた側(支援者や先生方など)は、そのお子さんをよく見るようになるからです。一番お子さんのことをよく知っている保護者がそう感じるには何かがあるかもしれない。そう思いながら、お子さんのことを見てもらい、保護者のサポーターになっていただけたらと感じます。

そして、「強く叱りすぎてしまう」。それほどまでにお子さんの行動を変えたり、言って聞かせたことを実行させたりするのに苦労される場合、あるいは保護者の側が叱らずにはいられないくらいに感情的になるのを抑えられない場合。ぜひとも相談機関や医療機関に相談していただきたいと感じました。地域の子育て支援センターや児童相談所、かかりつけの小児科、小学生以上ならスクールカウンセラーや教育相談室などさまざまな機関があると思います。どこでもいいので、強く叱らざるを得ない、強く叱りすぎてしまうその状況をお伝えいただいて、一緒に考えていけたらいいなと思いました。お子さんに発達障害の特性や症状がさまざまあり、行動面に危うさがあっても、強く叱られ続けていいことはありません。強く叱られることでお子さんが一時的によい行動を取ることができても、別の場面ではまた同じようなエラーや問題行動を起こしてしまうことが発達障害のある子の場合よくあります。それは叱ることが最適解ではないということです。

お子さんにどのような対応をしたらよいのか、あるいはお子さんがエラーや問題行動を起こさないようにする事前の工夫はどんなものがあるのか。お子さんはコミュニケーションを学ぶ時期でもあります。強く叱るコミュニケーションをモデリングとして取り入れていくのではなく、よきコミュニケーションを見せていくためにはどんな工夫ができるか。そのあたりをぜひ支援者や先生方と保護者の方が一緒に考えていけるといいなと思います。
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https://h-navi.jp/column/article/35030442
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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