児童相談所(児相)とは、役割は?どんな相談ができる?/専門家監修

ライター:発達障害のキホン
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「子どものわがままに困っている」「叱り方が分からず、ついきつくあたってしまう」などの子育ての悩みを相談したいときはありませんか?児童相談所は、子育ての悩みや障害児福祉といった、子どもに関わるあらゆる相談に応じる機関です。また保健相談や虐待対応など、子どもの健やかな育ちを守るための中心的な役割も持っています。今回の記事では、児童相談所について詳しく説明します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

児童相談所(児相)は悩める親子のための相談機関、さまざまな支援も

児童相談所(児相)とは

児童相談所(児相)は、子どもに関するあらゆる問題の解決のために、児童福祉法に基づいて設置された専門的な相談機関です。18歳未満の子どもに関することであれば、本人・家族・学校の先生・地域の住民等、どんな立場からでも相談することができます。

児童相談所のスタッフは児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司、医師などの専門家から構成され、すべての都道府県と政令指定都市に設置されています。

児童相談所の仕事は、子どもに関するあらゆる問題の相談窓口として相談に応じ、周辺の機関との連携によって必要な援助を行っていくことです。具体的には、親の事情や子どもの問題行動等による子育ての悩み、障害児福祉、虐待の対応などの問題に対して、助言や治療の補助、さまざまな手当ての案内などの支援を行います。

いきなり学校や病院に相談することは気が引けるけれど、自分だけでは解決が難しいというとき、誰かに相談に乗ってほしいときには、相談先の一つとして児童相談所を検討してみてはいかがでしょうか?

子育てをしていると、たくさんの悩みが出てきます。児童相談所では、子どもの性格や行動、健康管理、進路など幅広い困りごとに対応した支援が用意されています。保護者からどのような相談があり、それに対してどのような支援を行っていくのか、具体的に説明していきます。

※地域によっては児童相談所の対応件数が多く、申し込まれた相談に対して細やかな対応ができない場合もあります。その場合は、児童相談所から地域の機関を紹介してもらうようにしましょう。

主な相談内容

・養護相談
保護者の家出、失踪、死亡、離婚、入院、服役などにより養育が困難とされる子どもについての相談、棄児、迷子、虐待を受けている子どもについての相談、養子縁組に関する相談など

・保健相談
未熟児、虚弱児、内部機能障害、小児喘息、そのほかの疾患(精神疾患を含む)などがある子どもに関する相談

・障害相談
肢体不自由、視聴覚障害、言語発達障害、重症心身障害、知的障害、発達障害などに関する相談

・非行相談
家出、浪費、乱暴、飲酒、喫煙などの問題行動がある子どもに関する相談

・育成相談
家庭内暴力や生活習慣の著しい乱れ、不登校や学業不振、そのほか家庭内での子育ての悩みに関する相談

在宅支援

継続的な支援によって状況の回復が見込める場合は、在宅のまま支援が行われます。訪問型の相談や助言や施設の紹介、施設利用の際のアセスメントを行ったりします。ほかにも、子育ての情報に関するセミナーをしているところもあるので、ぜひチェックしてみてください。

そのほかにも、メンタルフレンドというサービスがあります。メンタルフレンドとは、心に傷を負った子どもを、遊びや学習の手伝いをしながらケアをする青年ボランティアのことです。
参考:児童相談所の運営指針について:図表
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-soudanjo-kai-zuhyou.html
メンタルフレンドとは?|東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/jicen/ji_annai/m_friend/gaiyou.html
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児童相談所(児相)による支援

カウンセリングや手当、施設の紹介など、障害のある子どもに対する児童相談所の支援

子どもに知的発達の遅れ、肢体不自由、ことばの遅れ、虚弱、自閉傾向があるのではないかなどと気になったときには、児童相談所に相談することができます。
◆助言・指導
・1歳6ヶ月、3歳の健康診査において知的発達面に詳しい検査が必要だと診断された場合は、児童相談所が助言と指導を担当します。
・医師、児童福祉司などによる訪問相談、発育相談会、親子へのカウンセリングが行われます。
・「子どもの困った行動にどう対応すればいいのか分からない」「周りからの理解が得られず子育てがつらい」などの相談について専門家が具体的な提案をしたり、心理的なケアを施します。
◆WISCや田中ビネーなどの知能検査を受ける
児童相談所では、「その子どもにどのような支援が必要なのか」を判断する基準のひとつとして、ウェクスラー式知能検査や田中ビネー式知能検査などの知能検査を行う場合もあります。

田中ビネー式知能検査は2歳~成人が受けられるのに対し、ウェクスラー式知能検査は年齢に応じて幼児用(2歳6ヶ月~7歳3ヶ月)のWPPSI、児童用(5歳0ヶ月~16歳11ヶ月)のWISC、成人用(16歳0ヶ月~90歳11ヶ月)のWAISの3種類があり、受けられる年齢に限りがあります。
田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】のタイトル画像

田中ビネー知能検査、就学児版 田中ビネー知能検査について【専門家監修】

ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】のタイトル画像

ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS)の内容や費用など【専門家監修】

◆特別児童扶養手当の判定
特別児童扶養手当とは、20歳未満で精神又は身体に障害のある児童を家庭で育てる保護者に支給されます。
この手当を受けられるかの判定は役所の児童福祉課か児童相談所が担います。
参考:特別児童扶養手当について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html
特別児童扶養手当とは?対象者や認定基準、支給日、手続き方法などを解説【専門家監修】のタイトル画像

特別児童扶養手当とは?対象者や認定基準、支給日、手続き方法などを解説【専門家監修】

◆療育手帳の交付
療育手帳とは、知的障害のある方に付与される障害者手帳です。知的障害のある人が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。児童相談所では、療育手帳の申請受付、調査、交付を担当しています。

療育手帳は、自治体ごとに受けられるサービスが異なるだけでなく、手帳の名称が異なる場合があります。東京都や神奈川県横浜市は「愛の手帳」、青森県や愛知県名古屋市では「愛護手帳」という名称で呼ばれています。
参考:児童相談所運営指針の改正について:第6章 事業に係る留意事項|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-soudanjo-kai-honbun6.html
療育手帳とは?受けられるサービスや他の障害者手帳との違いなど【行政書士監修】のタイトル画像

療育手帳とは?受けられるサービスや他の障害者手帳との違いなど【行政書士監修】

◆施設の紹介
子どもに必要な支援に合わせて、近隣の施設の情報を紹介します。ここで紹介される施設は、就学中の子どもの放課後の居場所を提供する放課後デイサービスや、必要な日常生活の支援や技術の指導をする社会福祉施設などがあります。

虐待問題に対する児童相談所(児相)の支援

虐待の疑いのある家庭が近くにある、自分が虐待の被害者である、虐待してしまっているのではないかと悩んでいる、など虐待に関する相談に対応します。児童相談所が持っている役割をいくつか羅列していきます。
◆虐待の通告窓口
虐待の疑いがある場合や、SOSを出したい場合には児童相談所に通告をしましょう。全国の児童相談所共通ダイヤルである「189(いちはやく)」に電話をかけると近隣の児童相談所につながります。通話料は通告者の負担となりますが、相談は無料です。
◆調査
通告を受けた後は、児童相談所の専門的なスタッフが、行政や民生委員、学校などの関係機関を巻き込んで家庭の様子を調べます。虐待の有無や重軽度を調べて必要な措置を検討した後、関係機関を巻き込んでの支援を開始します。
◆支援措置
調査の結果に応じて、在宅支援社会的養護の2種類の支援が施されます。

在宅支援の場合、児相職員・民生委員などによる定期的な訪問相談、ペアレントトレーニング、カウンセリングなどの保護者向けサポートや、学校・保育施設での子どもへのヒアリングなどを通して、虐待の再発を防ぐと同時に、家族関係を改善することを目指します。

社会的養護とは、子どもを分離する必要性が認められた場合に児童養護施設や里親に預けることです。一時保護の第一の目的は、子どもの安全を守るためです。ほかにも保護者も子どもと一時的に離れることで落ち着いたり、援助を受けるきっかけになったり、子どもにも安全な環境にいることでより正確な情報を聞き取ることが期待されます。

このような理由から、必要がある場合は児童相談所が子どもを保護することが認められています。親子の関係修復が望めるときは、再び家族が統合されることもあります。

虐待は子どもの生命に関わる問題であるため、調査から行動措置において児童相談所は強い権限を持っています。
虐待かもと思ったら。判断基準、相談機関など…子どもを救うためにできることのタイトル画像

虐待かもと思ったら。判断基準、相談機関など…子どもを救うためにできること

子どもを育てることが難しい家庭のための養護相談

虐待と同様、さまざまな事柄によって子どもを育てることが難しい家庭があります。養育困難とみなされる場合には、以下のような事例が挙げられます。

・父または母等保護者の家出、失踪、死亡、離婚、入院をした子ども
・保護者の稼働及び服役など等による養育困難に陥っている子ども
・子どもが棄児、迷子、虐待を受けている子ども、親が親権を喪失しているた親の子ども、子どもが後見人を持たず養育環境に問題があるぬ児童等環境的問題がある子ども
など

このように、やむなく家庭での育成が難しくなった子どもを一時保護所や児童養護施設で保護したり、または里親に預けたりします。

児童相談所(児相)に助けを求めるときは?

児童相談所は全ての都道府県と政令指定都市にあります。地域によっては「児童相談所」の名称ではない場合もあります。なにか児童相談所に相談したいことがあるときは、最寄りの相談所に電話をするか訪問してみましょう。訪問するときは、事前に電話で予約をすることもできます。下の一覧表から最寄りの児童相談所を探すことができます。
全国の児童相談所一覧
https://h-navi.jp/support_facility/child_guidance_center
また、児童相談所には虐待かもと思ったときなどにかけられる全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」があります。この番号に電話をかけて音声案内に従うと、最寄りの児童相談所につながります。
こんなときにはすぐ「189(いちはやく)」にお電話ください
こんなときにはすぐ「189(いちはやく)」にお電話ください
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