簡便に利用できるオンライン検査だからこそ信頼性を重視した。LITALICO発達特性検査の開発プロセスとは
ライター:LITALICO発達特性検査 編集部

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LITALICO発達特性検査は、発達が気になるお子さまと保護者のための、オンライン完結の検査サービスです。今回はLITALICO発達特性検査がどのように作られたのか、検査としての品質をどうやって高めていったのかなどについて、尺度開発の品質担保に関するコンサルティングを担当した佐藤秀樹先生と、実際に尺度開発を担当した野田遥さんにお話を伺いました。(取材・構成:LITALICO発達特性検査編集部)

監修: 佐藤秀樹
福島県立医科大学 医学部災害こころの医学講座 助教
ふくしま国際医療科学センター 放射線医学県民健康管理センター 助教
「COSMIN Risk of Bias Checklist」の日本語翻訳や、COSMINの解説論文の執筆を行う。認知行動療法やうつ病の認知行動メカニズムに関わる心理学的研究を専門にし、東日本大震災後のメンタルケアなどの活動の取り組みも行う。
ふくしま国際医療科学センター 放射線医学県民健康管理センター 助教
LITALICO発達特性検査はどうやって作った?
LITALICO発達特性検査は、発達が気になるお子さまと保護者のための、オンライン完結の検査サービスです。保護者の方がスマートフォンやパソコンから、お子さまに関する150問程度の質問に回答することで、発達特性や困りごと、よく見られる姿やその背景要因、お子さまに合ったサポートの方向性などを知ることができます。
受検される保護者の方にとって、「LITALICO発達特性検査は信頼できる検査なのか」は大きな関心事の一つだと思います。そもそも検査がどのように作られているのか、信頼性をどう判断したらいいか、よく分からないという方も多いと思います。そこで今回は、LITALICO発達特性検査の開発プロセスや、品質をどうやって高めていったのかなどについてお話を伺います。
※LITALICO発達特性検査は 医学的診断を行なうものではなく、お子さまの発達特性やその背景、適切なサポートの方向性などの情報を提供するためのものです
受検される保護者の方にとって、「LITALICO発達特性検査は信頼できる検査なのか」は大きな関心事の一つだと思います。そもそも検査がどのように作られているのか、信頼性をどう判断したらいいか、よく分からないという方も多いと思います。そこで今回は、LITALICO発達特性検査の開発プロセスや、品質をどうやって高めていったのかなどについてお話を伺います。
※LITALICO発達特性検査は 医学的診断を行なうものではなく、お子さまの発達特性やその背景、適切なサポートの方向性などの情報を提供するためのものです

LITALICO発達特性検査とは。特徴、対象、検査で分かること、受検方法などを解説
尺度開発のコンサルティングをいただいた佐藤秀樹先生
佐藤先生:公認心理師、臨床心理士の立場から関わらせていただいた佐藤秀樹です。今回のプロジェクトでは、検査での質問項目や、質問の仕方、選択肢が適切かどうかなど、検査の妥当性や信頼性の質を担保する観点からアドバイスをしています。
開発を担当した野田遥さん
野田さん:作業療法士としてのお子さまの支援経験を活かし、LITALICOで研究開発をしています。LITALICO発達特性検査では、プロダクトマネジメントや尺度の研究開発、コンテンツのディレクションなどに関わりました。
今回は、実際にどのような手順を踏んで開発していったか、開発するうえで大事にしたことなども、佐藤先生と一緒に分かりやすくお話しできればと思います。
今回は、実際にどのような手順を踏んで開発していったか、開発するうえで大事にしたことなども、佐藤先生と一緒に分かりやすくお話しできればと思います。
品質担保を重要視したLITALICO発達特性検査の尺度開発
野田さん:LITALICO発達特性検査は「質問紙法の尺度を用いた検査サービス」です。そもそも、尺度や質問紙といった用語も馴染みがないかもしれませんが、質問紙法は、分かりやすく言うと質問項目の文章と、回答の選択肢で構成されたアンケート形式のことで、対象となる方、つまり受検者は、自ら質問文を読んでそれに回答します。その回答を判断するための基準も含めて「尺度」と呼んでいます。
今回、質問紙の開発を進める中で、2つの点で品質の担保がより重要であると感じるようになりました。検査を製品として販売する以上、誤解を与えるような品質なものであってはならないということ。そして、このLITALICO発達特性検査がオンラインのソフトウェアという形であり、人の解釈を介さない検査であるため、尺度自体の品質がより重要になってくるという点です。
そこで、実際にどのように尺度を開発し、品質を担保するかというところで、佐藤先生にご相談し、コンサルテーションをお願いしたという経緯です。尺度や質問項目をつくるのは一見簡単そうに見えますが、高い専門性がある方のアドバイスがないと、どうしても内容が偏ってしまったり、間違った方向に進んでしまうという危険性があると感じています。
LITALICO発達特性検査は、COSMINという国際的な基準に基づいて開発しています。それは、COSMINに関して日本語版の翻訳に携わるなど、心理尺度の品質保証についての知見がある佐藤先生のお力を借りることができたからです。
今回、質問紙の開発を進める中で、2つの点で品質の担保がより重要であると感じるようになりました。検査を製品として販売する以上、誤解を与えるような品質なものであってはならないということ。そして、このLITALICO発達特性検査がオンラインのソフトウェアという形であり、人の解釈を介さない検査であるため、尺度自体の品質がより重要になってくるという点です。
そこで、実際にどのように尺度を開発し、品質を担保するかというところで、佐藤先生にご相談し、コンサルテーションをお願いしたという経緯です。尺度や質問項目をつくるのは一見簡単そうに見えますが、高い専門性がある方のアドバイスがないと、どうしても内容が偏ってしまったり、間違った方向に進んでしまうという危険性があると感じています。
LITALICO発達特性検査は、COSMINという国際的な基準に基づいて開発しています。それは、COSMINに関して日本語版の翻訳に携わるなど、心理尺度の品質保証についての知見がある佐藤先生のお力を借りることができたからです。

COSMINに準拠したLITALICO発達特性検査の開発とは?信頼性や妥当性のある尺度開発のガイドラインについて解説します
佐藤先生:LITALICOについては以前から、「発達障害のある方の支援や就労支援を、幅広い年代に画一的なサービスを提供するのではなく、ニーズに応じて関わっている企業」として知っていました。しかも「質問紙の妥当性を評価し、検査の質をどう高めて担保するか」という、私としても関心が高い分野だったので、関われてとても光栄でした。
サービス自体は簡便に。内容や結果は妥当で信頼できるものを
尺度開発のプロセスとは?
野田さん:検査をどうやって作っていったのか、一般の方には開発フローがイメージしにくいかなと思います。
佐藤先生:一般的な尺度開発として広く行われている方法は、研究者のチームが中心となって、質問項目をたくさん準備するところから始まります。まず、検査でどんなことを知りたいのか(つまり測りたいのか)を検討したうえで質問項目を多めに集めて、質問紙の案を作ります。次にチーム内での話し合いや予備調査を行ないます。その結果をふまえて問題のある項目を見つけて修正するといった工程を経て、項目数を絞った素案を作ります。
その後に、検査対象の方に実際に回答していただき、その数量的な結果をもとに、妥当性と信頼性を検討し、優れた項目だけをピックアップして質問紙を完成させるというプロセスです。
佐藤先生:一般的な尺度開発として広く行われている方法は、研究者のチームが中心となって、質問項目をたくさん準備するところから始まります。まず、検査でどんなことを知りたいのか(つまり測りたいのか)を検討したうえで質問項目を多めに集めて、質問紙の案を作ります。次にチーム内での話し合いや予備調査を行ないます。その結果をふまえて問題のある項目を見つけて修正するといった工程を経て、項目数を絞った素案を作ります。
その後に、検査対象の方に実際に回答していただき、その数量的な結果をもとに、妥当性と信頼性を検討し、優れた項目だけをピックアップして質問紙を完成させるというプロセスです。
品質の鍵になった内容的妥当性
野田さん:今回の開発で特徴的なのが、こうした一般的なプロセスよりも踏み込んで丁寧に行なった「内容的妥当性」の担保だったと思います。
佐藤先生:内容的妥当性は、「質問紙の内容が妥当かどうか」ということです。「質問の仕方が適切であるか」「検査で測定したい状態がきちんと測定できているか」といった観点が必要になるため、専門家でも判断するのはとても難しい部分です。
また、内容的妥当性は専門家だけでなくユーザーの方の立場からも判断しなければいけないので、これまでの質問紙開発では内容的妥当性が十分に担保できていないものもあったと思います。LITALICO発達特性検査の開発では、たくさんの保護者の方や専門家の方にご協力いただき、質問項目、質問の仕方、回答の選択肢が的を射ているのかなどについて繰り返し評価をして、尺度を開発できたというのが大きな強みだと思います。
野田さん:LITALICO発達特性検査は、保護者の方がオンラインで回答する検査サービスということもあって、サービス自体は簡便に受けられるけれども、その内容や結果については妥当で信頼できるものであるべき、という点から、品質の担保に関してはできる限りのプロセスを踏んでいます。COSMINを基準に尺度開発を行ったこと、特に専門家だけではなく検査対象となる保護者の方への認知的インタビュー(※)を繰り返し行なうことで内容的妥当性を担保することができたことは、今回の開発の大きな特徴だと思います。
LITALICOの尺度開発チームによる質問項目の素案を作成後、妥当な質問項目になっているか、その質問項目で検査で調べたい内容がきちんと測れるか、質問の文章が適切かなどについて、専門家と保護者の視点でそれぞれ改善を繰り返しています。専門家はデルファイ法(※)、保護者の方には認知的インタビュー※という手法で実施しています。時間も手間もかかる方法で、なかなか採り入れるのが難しいのですが、検査の品質を保つための重要なステップだと考えました。そのため、内容的妥当性を担保するために、保護者と専門家それぞれの認知的インタビューを1年以上かけて行なっています。
※認知的インタビュー:「質問がきちんと理解できて意図された通りに解釈されているかどうか」を評価するために、参加者に尺度の内容について自身の考えや解釈を聞くインタビュー方法
※デルファイ法:複数の専門家が質問項目をチェックし、意見に基づいて修正するプロセスを繰り返すことで、質問項目を精査していく方法
佐藤先生:内容的妥当性は、「質問紙の内容が妥当かどうか」ということです。「質問の仕方が適切であるか」「検査で測定したい状態がきちんと測定できているか」といった観点が必要になるため、専門家でも判断するのはとても難しい部分です。
また、内容的妥当性は専門家だけでなくユーザーの方の立場からも判断しなければいけないので、これまでの質問紙開発では内容的妥当性が十分に担保できていないものもあったと思います。LITALICO発達特性検査の開発では、たくさんの保護者の方や専門家の方にご協力いただき、質問項目、質問の仕方、回答の選択肢が的を射ているのかなどについて繰り返し評価をして、尺度を開発できたというのが大きな強みだと思います。
野田さん:LITALICO発達特性検査は、保護者の方がオンラインで回答する検査サービスということもあって、サービス自体は簡便に受けられるけれども、その内容や結果については妥当で信頼できるものであるべき、という点から、品質の担保に関してはできる限りのプロセスを踏んでいます。COSMINを基準に尺度開発を行ったこと、特に専門家だけではなく検査対象となる保護者の方への認知的インタビュー(※)を繰り返し行なうことで内容的妥当性を担保することができたことは、今回の開発の大きな特徴だと思います。
LITALICOの尺度開発チームによる質問項目の素案を作成後、妥当な質問項目になっているか、その質問項目で検査で調べたい内容がきちんと測れるか、質問の文章が適切かなどについて、専門家と保護者の視点でそれぞれ改善を繰り返しています。専門家はデルファイ法(※)、保護者の方には認知的インタビュー※という手法で実施しています。時間も手間もかかる方法で、なかなか採り入れるのが難しいのですが、検査の品質を保つための重要なステップだと考えました。そのため、内容的妥当性を担保するために、保護者と専門家それぞれの認知的インタビューを1年以上かけて行なっています。
※認知的インタビュー:「質問がきちんと理解できて意図された通りに解釈されているかどうか」を評価するために、参加者に尺度の内容について自身の考えや解釈を聞くインタビュー方法
※デルファイ法:複数の専門家が質問項目をチェックし、意見に基づいて修正するプロセスを繰り返すことで、質問項目を精査していく方法
佐藤先生:内容的妥当性や信頼性が重要であるということ、このようなプロセスを踏むことが望ましいということは専門家も理解していて、これらを完全に無視した尺度開発というのはないと思います。ただ、認知的インタビューやデルファイ法は繰り返し実施する必要があるため、コストも時間もかかります。そのため、開発者としてはやりたいけれども、実際にはなかなか難しいというのが本音だと思います。調査にご協力いただける専門家や対象者を募集し、場所を確保するだけでも大変なことです。
LITALICO発達特性検査の開発では、何より、ユーザーの方から直接話を聞き、一緒にプロダクトを作っています。同意が得られるまできちんと説明し、調査を繰り返し行なったということに頭が下がります。
ーー佐藤先生がご存じの中でも、しっかりプロセスを踏んだ開発だったということでしょうか?
佐藤先生:私の知っている中ではベストですね!
野田さん:たくさんの保護者、専門家のみなさまにご協力いただいてなんとか実現できたところです。
佐藤先生:一般的な予備的調査だと、1回だけ意見を聞いて、それを質問紙に反映するということも多いと思いますが、今回の開発では、同じ方にも質問紙の改定案をその都度見ていただいて、意見をもとに修正する、というのを繰り返し行ったというのが大きな(品質担保上の)強みだと思います。
野田さん:インタビューして「ここは〇〇だった」という前回の意見をもとに改善して、そのアップデートしたものを見ていただいて合意を取って、そのうえで気になった点について意見をいただき、さらに直すというプロセスを数回繰り返しています。
このような形で品質を重視する開発は、前例として多くなかったということもあって、方法論もあまり確立されていない部分もありました。その点は、佐藤先生に具体的なアドバイスをいただきながら進めていったところです。その中で、COSMINの基準についても、佐藤先生に教えていただいて採り入れることができました。
佐藤先生:これまで、こういった尺度開発の手続きは、研究者独自のやり方で進めていることが多かったと思うんですよね。妥当性や信頼性の質に関しても、専門家がそれぞれ自分の判断で質を高めようとしていた部分が多いのですが、COSMINはそれらの手続きや質の評価を可視化するためにチェックリストを作成しています。
COSMINチェックリストは検査の項目、尺度の質を評価する際の国際的な基準です。基準はさまざまな専門家や当事者の声も採り入れて設定され、妥当性や信頼性などの特性ごとにたくさんの項目があります。今回の検査は、COSMINの基準を満たすように開発されているので、国際的な基準に沿った開発になっていると言えます。その点で、内容的妥当性の質の担保がよくできているのがこの検査の強みだと思いますね。
ーーこうした質の担保ができないと、どうなってしまうのでしょうか?
佐藤先生:回答はしたけれども理解しにくい質問だったり、自身の経験や考えとは的外れな質問などが含まれている可能性があるので、回答者にとって負担になってしまうリスクがあります。また、受検するたびにばらついた結果が出てしまい、検査結果が安定しない恐れもあります。こうした問題は、検査の妥当性や信頼性を損ねる要因となります。
野田さん:そういったことがないように、COSMINの基準をクリアできているか、というのをチェックしていくということです。どのようなプロセスを経たらいいか、どの程度のユーザー数でテストすればいいか、といったさまざまな論点について、基準をもとに開発で満たすように進めていったということですね。もし、クリアできていない場合、佐藤先生にアドバイスいただいてプロセス自体を改善し、なるべく高い基準を満たすように開発できたというのは大きかったです。
佐藤先生:お子さまの状態像は一人ひとり異なりますし、支援者の専門分野が多様になると、その分さまざまな意見が出てきます。そのため、実際には認知的インタビューでの意見を完全に集約させて尺度に反映するのは難しいこともあります。こうした研究上の限界点はどうしても出てきますので、COSMINの基準を完全には満たせない項目が含まれてしまうことも少なくありません。その中でも、今回のプロダクトは厳しい基準をできるだけいい評価でクリアできるように開発されていると思います。
野田さん:内容的妥当性の担保方法に関する知見があまり広まっていなかったこともあり、COSMINを基準に作成しようと決めるまでは、今回のようなインタビュー研究をこの規模で行なうことは計画されていませんでした。佐藤先生のCOSMINに基づいたコンサルテーションがなければ、このレベルで内容的妥当性を担保することは難しかったと思います。
LITALICO発達特性検査の開発では、何より、ユーザーの方から直接話を聞き、一緒にプロダクトを作っています。同意が得られるまできちんと説明し、調査を繰り返し行なったということに頭が下がります。
ーー佐藤先生がご存じの中でも、しっかりプロセスを踏んだ開発だったということでしょうか?
佐藤先生:私の知っている中ではベストですね!
野田さん:たくさんの保護者、専門家のみなさまにご協力いただいてなんとか実現できたところです。
佐藤先生:一般的な予備的調査だと、1回だけ意見を聞いて、それを質問紙に反映するということも多いと思いますが、今回の開発では、同じ方にも質問紙の改定案をその都度見ていただいて、意見をもとに修正する、というのを繰り返し行ったというのが大きな(品質担保上の)強みだと思います。
野田さん:インタビューして「ここは〇〇だった」という前回の意見をもとに改善して、そのアップデートしたものを見ていただいて合意を取って、そのうえで気になった点について意見をいただき、さらに直すというプロセスを数回繰り返しています。
このような形で品質を重視する開発は、前例として多くなかったということもあって、方法論もあまり確立されていない部分もありました。その点は、佐藤先生に具体的なアドバイスをいただきながら進めていったところです。その中で、COSMINの基準についても、佐藤先生に教えていただいて採り入れることができました。
佐藤先生:これまで、こういった尺度開発の手続きは、研究者独自のやり方で進めていることが多かったと思うんですよね。妥当性や信頼性の質に関しても、専門家がそれぞれ自分の判断で質を高めようとしていた部分が多いのですが、COSMINはそれらの手続きや質の評価を可視化するためにチェックリストを作成しています。
COSMINチェックリストは検査の項目、尺度の質を評価する際の国際的な基準です。基準はさまざまな専門家や当事者の声も採り入れて設定され、妥当性や信頼性などの特性ごとにたくさんの項目があります。今回の検査は、COSMINの基準を満たすように開発されているので、国際的な基準に沿った開発になっていると言えます。その点で、内容的妥当性の質の担保がよくできているのがこの検査の強みだと思いますね。
ーーこうした質の担保ができないと、どうなってしまうのでしょうか?
佐藤先生:回答はしたけれども理解しにくい質問だったり、自身の経験や考えとは的外れな質問などが含まれている可能性があるので、回答者にとって負担になってしまうリスクがあります。また、受検するたびにばらついた結果が出てしまい、検査結果が安定しない恐れもあります。こうした問題は、検査の妥当性や信頼性を損ねる要因となります。
野田さん:そういったことがないように、COSMINの基準をクリアできているか、というのをチェックしていくということです。どのようなプロセスを経たらいいか、どの程度のユーザー数でテストすればいいか、といったさまざまな論点について、基準をもとに開発で満たすように進めていったということですね。もし、クリアできていない場合、佐藤先生にアドバイスいただいてプロセス自体を改善し、なるべく高い基準を満たすように開発できたというのは大きかったです。
佐藤先生:お子さまの状態像は一人ひとり異なりますし、支援者の専門分野が多様になると、その分さまざまな意見が出てきます。そのため、実際には認知的インタビューでの意見を完全に集約させて尺度に反映するのは難しいこともあります。こうした研究上の限界点はどうしても出てきますので、COSMINの基準を完全には満たせない項目が含まれてしまうことも少なくありません。その中でも、今回のプロダクトは厳しい基準をできるだけいい評価でクリアできるように開発されていると思います。
野田さん:内容的妥当性の担保方法に関する知見があまり広まっていなかったこともあり、COSMINを基準に作成しようと決めるまでは、今回のようなインタビュー研究をこの規模で行なうことは計画されていませんでした。佐藤先生のCOSMINに基づいたコンサルテーションがなければ、このレベルで内容的妥当性を担保することは難しかったと思います。
心理尺度や質問紙という形式の検査自体の強みと限界
診断はできないが、広く簡便に受検できて情報を得られる検査
佐藤先生:広くたくさんの方に簡便に回答していただきやすいのが質問紙法という検査形式の強みだと思います。
例えば、発達検査の中には対面式の検査もありますが、お子さまや保護者の方と支援者が対面で検査をして所見をまとめるとなると時間もかかりますし、検査を実施できる専門機関や専門家の数も必要になってきます。特に地方にお住まいの方にとってはシビアな問題です。
質問紙の場合、受検者に配布した質問紙の説明文を読んで回答していただくので、より気軽に受検できますよね。ただし、回答者の主観的な判断に基づいての回答になることについては、少し注意が必要です。回答だけをもとに、原因を確定したり診断したりすることはできません。それが限界点になりますね。
野田さん:おっしゃる通りで、ユーザーとしては「検査」というと「診断」が出るということを期待される方も多いと思うのですが、LITALICO発達特性検査は医学的診断を行なうものではありません。
しかし、診断がなくとも特性や困りとそれらの背景という観点で測定して、すぐにデジタルである程度個別化された情報を届けられるということが、このプロダクトの特徴だと佐藤先生のお話を伺って改めて感じました。
検査結果レポートでは、診断の有無にかかわらず理解や支援の助けになる情報を、監修者の先生方と厳選しています。実際に自分のお子さまについて、なぜお子さまが困っているのか分からない、どうサポートしたらいいか分からないという場合に、お子さまの状況を把握するため受検していただくといいのかな、と思っています。そして状況に変化があるかを追っていくための確認としても使っていただけるようになるといいな、と。
佐藤先生:そうですね。アンケート形式はとても回答しやすいと思いますし、いつでもどこでも回答できるというのはメリットです。この検査を糸口にして、より専門的な支援サービスを受けることを検討するなど、最初の一歩になりやすいツールだというのが強みだと思いますね。
野田さん:逆に言うと、お子さまを支援したり、環境を作ったりするときに、検査だけで完結することはもちろん無理で、専門家を始め、周囲の関わる人たちが一緒に協業していかないと難しい部分は確実にありますね。
また、ほかの検査の代わりに受検するというよりは、この検査のメリットを活かすことで、早期かつ簡便に、ある程度適切な情報や個別化された情報を得ていただいて、適切な支援や相談できる場所とつながる、より詳しい情報を調べるという形で使っていただけるといいなと思います。
今回、認知的インタビューで保護者の方の意見を聞く中で、困りが一元的ではなくて、本当に多面的なんだなということが印象的でした。それは「質問紙で必要十分なのだろうか」「この形で本当にいいのだろうか」と制作の過程で問いなおすきっかけになりました。その意味でもインタビュー研究という形で尺度の質を確認していく、実際にユーザーの方にお話を聞くことが重要なんだなということを痛感しました。これが質問紙開発以外のプロダクト作りにおいても、ユーザーインタビューを積極的に行なうことにもつながったと思います。
やはり、多様な困りに対して一つの形で答えていくしかないというのが質問紙という形式の限界でもあります。強みと限界があるうえで、既存の検査や人を介した直接的な支援と相反するものではなく、両立して使っていただけるものになったかな、というのが個人的に感じているところです。
例えば、発達検査の中には対面式の検査もありますが、お子さまや保護者の方と支援者が対面で検査をして所見をまとめるとなると時間もかかりますし、検査を実施できる専門機関や専門家の数も必要になってきます。特に地方にお住まいの方にとってはシビアな問題です。
質問紙の場合、受検者に配布した質問紙の説明文を読んで回答していただくので、より気軽に受検できますよね。ただし、回答者の主観的な判断に基づいての回答になることについては、少し注意が必要です。回答だけをもとに、原因を確定したり診断したりすることはできません。それが限界点になりますね。
野田さん:おっしゃる通りで、ユーザーとしては「検査」というと「診断」が出るということを期待される方も多いと思うのですが、LITALICO発達特性検査は医学的診断を行なうものではありません。
しかし、診断がなくとも特性や困りとそれらの背景という観点で測定して、すぐにデジタルである程度個別化された情報を届けられるということが、このプロダクトの特徴だと佐藤先生のお話を伺って改めて感じました。
検査結果レポートでは、診断の有無にかかわらず理解や支援の助けになる情報を、監修者の先生方と厳選しています。実際に自分のお子さまについて、なぜお子さまが困っているのか分からない、どうサポートしたらいいか分からないという場合に、お子さまの状況を把握するため受検していただくといいのかな、と思っています。そして状況に変化があるかを追っていくための確認としても使っていただけるようになるといいな、と。
佐藤先生:そうですね。アンケート形式はとても回答しやすいと思いますし、いつでもどこでも回答できるというのはメリットです。この検査を糸口にして、より専門的な支援サービスを受けることを検討するなど、最初の一歩になりやすいツールだというのが強みだと思いますね。
野田さん:逆に言うと、お子さまを支援したり、環境を作ったりするときに、検査だけで完結することはもちろん無理で、専門家を始め、周囲の関わる人たちが一緒に協業していかないと難しい部分は確実にありますね。
また、ほかの検査の代わりに受検するというよりは、この検査のメリットを活かすことで、早期かつ簡便に、ある程度適切な情報や個別化された情報を得ていただいて、適切な支援や相談できる場所とつながる、より詳しい情報を調べるという形で使っていただけるといいなと思います。
今回、認知的インタビューで保護者の方の意見を聞く中で、困りが一元的ではなくて、本当に多面的なんだなということが印象的でした。それは「質問紙で必要十分なのだろうか」「この形で本当にいいのだろうか」と制作の過程で問いなおすきっかけになりました。その意味でもインタビュー研究という形で尺度の質を確認していく、実際にユーザーの方にお話を聞くことが重要なんだなということを痛感しました。これが質問紙開発以外のプロダクト作りにおいても、ユーザーインタビューを積極的に行なうことにもつながったと思います。
やはり、多様な困りに対して一つの形で答えていくしかないというのが質問紙という形式の限界でもあります。強みと限界があるうえで、既存の検査や人を介した直接的な支援と相反するものではなく、両立して使っていただけるものになったかな、というのが個人的に感じているところです。
