自閉症娘ときょうだい児2人を育てて14年、「親のエゴ」と悩んだことも…今思うことは
ライター:SAKURA

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広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘は、中学3年生。弟が2人います。
私はよく、読者さんから「発達障害のある子がいて、ほかのきょうだいもいて大変じゃないですか?」と聞かれることがあります。たしかに、過去を振り返ってみると、たくさんの「大変」がありました。

監修: 森 しほ
ゆうメンタル・スキンクリニック理事
ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。産業医として一般企業のケアも行っている。
・ゆうメンタルクリニック(上野/池袋/新宿/渋谷/秋葉原/品川/横浜/大宮/大阪/千葉/神戸三宮/京都/名古屋):https://yuik.net/
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広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘と2人の弟の関係は……
広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘は、中学3年生。弟が2人います。小学3年生の、おしゃべりでお調子者の長男と……
3歳の、気が強くて食いしん坊の次男です。
娘の発達の遅れが分かった時、私たちは2人目の子はいずれ欲しいとは、思っていましたが、具体的な時期は、まだ考えていませんでした。私たち夫婦は話し合い、今は2人目のことを考えるのはやめ、娘に集中しようという結論になりました。
その後、娘は療育に通い、3歳を過ぎた頃から少しずつ会話ができるようになり、4歳で診断を受けました。そして5歳の時、2人目である長男が生まれました。
そこからは、思い通りにならず、意思の疎通が簡単にはいかない小さい子が、常にいる状態だった娘。
1人で静かに過ごしていた時に、よく泣く長男が生まれ、長男との関係がうまくいくようになり始めた頃、次男が生まれています。
私はよく、読者さんから「発達障害のある子がいて、ほかのきょうだいもいて大変じゃないですか?」と聞かれることがあります。
たしかに、過去を振り返ってみると、たくさんの「大変」がありました。
長男が生まれた時、聴覚過敏だった娘が、赤ちゃんの泣き声に過剰に反応したり……
たしかに、過去を振り返ってみると、たくさんの「大変」がありました。
長男が生まれた時、聴覚過敏だった娘が、赤ちゃんの泣き声に過剰に反応したり……

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その時、その時で私は頭を抱えて、悪戦苦闘していました。
娘もそうだったと思います。
きょうだいをつくったのは、きつい言葉で言ってしまえば「親のエゴ」。2人目の時は、娘が聞いてもまだ分からない状態だったため、「きょうだい欲しい?」とは聞かなかったのですが……娘はきょうだいが欲しくなかったかもしれないのに、こんなに泣き声に苦しませてよかったのだろうかと、悩んだことも何度もあります。
悩んだことはたくさんありましたが、長男が産まれて、娘に初めてきょうだいができて、8年半経った今……大変だったことより、よかったことのほうが大きかったと感じています。
人とのコミュニケーションが苦手な娘にとって、弟たちはたくさん失敗ができる相手です。弟たちとの関わりで、娘は多くのことを学び、コミュニケーション力は大きく成長しました。
人とのコミュニケーションが苦手な娘にとって、弟たちはたくさん失敗ができる相手です。弟たちとの関わりで、娘は多くのことを学び、コミュニケーション力は大きく成長しました。

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特に次男との関係は、娘が小学校高学年~中学にかけての関わりだったため、表面上だけではなく、もっと深い説明や理解ができることで、影響は大きかったと思います。
そして、息子たちもまた、娘のように特性を持つ人との関わり方を学びました。
そして、息子たちもまた、娘のように特性を持つ人との関わり方を学びました。
感覚過敏で、パニックを起こした時の娘は小さい子どものように、泣きじゃくることがよくあります。長男は、それを見ても、姉を笑うことなく、静かに見守ってくれます。
言葉を組み立てるのが苦手な娘。うまく文章にできず、説明するのに時間がかかるのですが、長男は急かすことなく、娘がしゃべり終わるのを待ってくれます。
突然の事態や予定変更に弱い娘。
慌てふためいている時、次男は落ち着くように、言葉と態度で伝えてくれます。
慌てふためいている時、次男は落ち着くように、言葉と態度で伝えてくれます。
周りを気にかけることが苦手な娘は、外出時、みんなから遅れてしまうことが多いのですが、次男は常に、娘がどこにいるか気にしていて、少しでも私たちから遅れると、私たちに待つように注意してくれます。
わが家の子どもたちは、不思議で……それぞれ個性は強いですが、なぜかバランスが取れています。
娘は、マイペースで苦手なことも多いけど、最年長ともあって、私たちは一番信頼しています。そのため、長男と次男の前で、娘を特別扱いすることも多いのですが、娘は弟たちに威張ることはせず、弟たちの目線になって遊んだり、考えます。
娘は、マイペースで苦手なことも多いけど、最年長ともあって、私たちは一番信頼しています。そのため、長男と次男の前で、娘を特別扱いすることも多いのですが、娘は弟たちに威張ることはせず、弟たちの目線になって遊んだり、考えます。
長男は、よくしゃべるので、状況説明がとても上手。娘と一緒にいて、なにかトラブルが起きた時も、どうしてそうなったかをうまく説明できない娘の代わりに、誰がどうしてどうなったかということを鮮明に伝えてくれます。娘のことをよく理解している子です。
次男は、まだ小さくてわがままな部分もたくさんありますが、思った以上にしっかり者。私に叱られると、娘はパニックになって思考が止まってしまい、長男は、急激に凹んでしまうことがよくあります。そんな時、次男は3歳児なりに2人を引っ張ってくれます。パニックになって、凹んで、動きが遅くなる姉と兄を、誘導してくれ、状況をよく見て行動する子です。
自分でいうのもなんですが……こんなポンコツな私の子育てで、みんな素晴らしい子に育ったな~と感心してしまいます。
それぞれ、苦手な部分、気になる部分はありますが、3人いるからこそ、過度に1人を気にせずに、「おいおい、頼むよ〜」というぐらいの気持ちでいられる部分もあります。
それぞれ、苦手な部分、気になる部分はありますが、3人いるからこそ、過度に1人を気にせずに、「おいおい、頼むよ〜」というぐらいの気持ちでいられる部分もあります。
娘の発達上の特性で、頭を抱えてしまうことはいまだに起きていますが、典型的な小学生男子の長男がやるおバカな行動や、まだまだ赤ちゃん感が残る癒しの塊次男に癒されたり……その逆で、長男次男コンビの激しい男同士の喧嘩の仲裁に疲れた時は、ほのぼのした娘に愚痴を聞いてもらったりして、私も精神的なバランスを取れているように思います。
子育て歴14年。振り返り感じることは……
子育て歴14年……
私は、こういう(コラムを書く)仕事をしているので、子どもたちの昔を振り返ることが頻繁にあるのですが、大変だったな~と思いはするものの、機会がない限りはもう細かくは思い出せません(笑)。
長男の泣き声に、娘が苦しんでいたことも、娘は今となってはうっすらしか覚えていないようで、家族の中では笑い話。わが家の子どもたちは、自分が小さい時のこと、大変だった時のことを聞きたがるので、よく聞かせることがあるのですが、「ママ大変だったんだぞ~わっはっは~!」と武勇伝のように話しています。
「昔の大変」が今笑い話なら、「今の大変」もいつか、笑って話せる時が来る。子どもの数の分だけ、大変だったけれど、学びと笑いがあると思っています。
私は、こういう(コラムを書く)仕事をしているので、子どもたちの昔を振り返ることが頻繁にあるのですが、大変だったな~と思いはするものの、機会がない限りはもう細かくは思い出せません(笑)。
長男の泣き声に、娘が苦しんでいたことも、娘は今となってはうっすらしか覚えていないようで、家族の中では笑い話。わが家の子どもたちは、自分が小さい時のこと、大変だった時のことを聞きたがるので、よく聞かせることがあるのですが、「ママ大変だったんだぞ~わっはっは~!」と武勇伝のように話しています。
「昔の大変」が今笑い話なら、「今の大変」もいつか、笑って話せる時が来る。子どもの数の分だけ、大変だったけれど、学びと笑いがあると思っています。
執筆/SAKURA
(監修:森先生より)
SAKURAさん、子育ての中でたくさんの困難を乗り越えてきた体験談をありがとうございます。
聴覚過敏やコミュニケーションの難しさなどに向き合いながら、ご家族みんなが互いに学び、支え合ってこられたのですね。長男くんの状況説明のうまさや、次男くんの思いやり、そして娘さんのマイペースながらも信頼されるお姉さんぶりと、それぞれの個性が輝き、家族としてバランスが取れていてとっても素晴らしいですね。
さて、発達障害の傾向がある方には、感覚過敏や言葉の組み立ての難しさ、予定変更への対応の困難などが特徴として表れることがあります。相手の意図や感情を読み取る「心の理論」や、表情やジェスチャーの理解が難しい場合があります。療育を通じて言語やコミュニケーション能力が向上するケースも多くあります。早期介入が鍵となり、言語療法や行動療法が有効です。
同年代の子どもとの関わりも重要になってきます。学校にもよく相談して、連携して特性に応じた対応をしていけるといいでしょう。
きょうだいとの日常的な関わりも、社会的スキルの向上につながります。ただ、どうしても親としては発達の偏りのある子どもの対応を中心に考えてしまうことがあります。きょうだいは多かれ少なかれそのことを感じ取って、時に自分の感情を後回しにしてしまうことがあるかもしれません。
家族全員で楽しめる活動、たとえばボードゲームや散歩、簡単な工作などをする時間を設けるのがおすすめです。また、時には、きょうだいの一人ひとりとの時間をとったり、短時間でも1人ずつ抱きしめたり対話したり、といったことを意識するといいですね。発達障害の有無に関わらず、複数の子どものニーズに応えるのは大きな負担です。子育ての忙しさの中でも、SAKURAさん自身のリフレッシュを忘れないようにしてください。10分程度でもお茶のタイムをもつ、好きなドラマを1話観るなど、小さな楽しみを意識的に取り入れてみてくださいね。
発達の偏りがあるケースでは、適切な支援と環境調整で大きく成長が促されます。家族みんなが自分らしく輝けるよう、これからも小さな一歩を積み重ねてください。SAKURAさん家族の笑顔と学びがさらに増えていくことを心から応援しています。
(監修:森先生より)
SAKURAさん、子育ての中でたくさんの困難を乗り越えてきた体験談をありがとうございます。
聴覚過敏やコミュニケーションの難しさなどに向き合いながら、ご家族みんなが互いに学び、支え合ってこられたのですね。長男くんの状況説明のうまさや、次男くんの思いやり、そして娘さんのマイペースながらも信頼されるお姉さんぶりと、それぞれの個性が輝き、家族としてバランスが取れていてとっても素晴らしいですね。
さて、発達障害の傾向がある方には、感覚過敏や言葉の組み立ての難しさ、予定変更への対応の困難などが特徴として表れることがあります。相手の意図や感情を読み取る「心の理論」や、表情やジェスチャーの理解が難しい場合があります。療育を通じて言語やコミュニケーション能力が向上するケースも多くあります。早期介入が鍵となり、言語療法や行動療法が有効です。
同年代の子どもとの関わりも重要になってきます。学校にもよく相談して、連携して特性に応じた対応をしていけるといいでしょう。
きょうだいとの日常的な関わりも、社会的スキルの向上につながります。ただ、どうしても親としては発達の偏りのある子どもの対応を中心に考えてしまうことがあります。きょうだいは多かれ少なかれそのことを感じ取って、時に自分の感情を後回しにしてしまうことがあるかもしれません。
家族全員で楽しめる活動、たとえばボードゲームや散歩、簡単な工作などをする時間を設けるのがおすすめです。また、時には、きょうだいの一人ひとりとの時間をとったり、短時間でも1人ずつ抱きしめたり対話したり、といったことを意識するといいですね。発達障害の有無に関わらず、複数の子どものニーズに応えるのは大きな負担です。子育ての忙しさの中でも、SAKURAさん自身のリフレッシュを忘れないようにしてください。10分程度でもお茶のタイムをもつ、好きなドラマを1話観るなど、小さな楽しみを意識的に取り入れてみてくださいね。
発達の偏りがあるケースでは、適切な支援と環境調整で大きく成長が促されます。家族みんなが自分らしく輝けるよう、これからも小さな一歩を積み重ねてください。SAKURAさん家族の笑顔と学びがさらに増えていくことを心から応援しています。

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
