自閉症息子の細切れ睡眠と夜泣き。服薬や21時消灯ルール…絶望の日々を経て特別支援学校に通う今は

ライター:かさはらあやこ
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春は就学や進級など大きな環境変化が原因で入眠や起床のバランスが崩れないか不安を抱えるご家庭も多いと思います。

今回は、長男の睡眠の壁を乗り越えたからこそ築けた「生活リズム」について書いてみました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

21時消灯、朝6時起床というリズムを身につけるまで

放課後等デイサービスの先生にも睡眠に関するお願いをしています
放課後等デイサービスの先生にも睡眠に関するお願いをしています
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療育手帳A判定・知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)、DCD(発達性協調運動症)の息子は生後まもなくから就寝リズムが定まらず、21時消灯から2~3時間入眠できずに泣き叫び、寝ついたと思えば深夜2時に覚醒して泣き叫ぶ、2時間後に再び眠ったかと思えば5時にギャン泣き起床。

十分に午睡をしてくれるわけもなく、日中は食事・排泄の全介助、癇癪対応。こんな状態があと何年続くのか、終わりはあるのかと、朝を迎えるたびに絶望し、寝不足で思考力や体力も奪われ、未来の想像など全くできず。

そんな日々が5〜6年も続いていたため、睡眠障害も診断に加わり、年長のときにメラトベルを服薬開始。すると入眠がスムーズになり、夜中の覚醒も激減。

結果として特別支援学校小学部の2年生である現在は、21時消灯 → 朝6時起床というリズムが身につき、声がけするだけで決まった時間に自らベッドに行き、スッと眠るようになりました(疲れて眠れそうな日は飲まないなど、様子を見て日によって使い分けています)。

薬を飲んだからといって、簡単に生活リズムが整ったわけではありません。薬の効果を最大限に発揮し、リズムを身につけるポイントを医師に指導していただき、ずっと実践していることがあります。

下記の方法はわが家の場合です。
夜中に覚醒してしまい、朝方に眠った場合、たとえどんなに寝不足でも、癇癪を起こすかもしれなくても、かわいそうだからと寝かせたままにはせず、必ず決まった時間に起こし、カーテンを開けて朝日を浴びさせること、曇りの場合は、電気をつけて光を当てることを徹底しています。

それから学校や放課後等デイサービス(就学前は保育園)に、その日の睡眠の状態を伝えて共有し、午前中はどれだけ寝てしまっても構いませんが、14時以降の昼寝はさせないでください、万が一、寝てしまった場合は必ず15分で起こしてくださいとお願いしています。

家族みんなで「21時消灯」を守る!

決まった時間にベッドに行き眠れるようになりました
決まった時間にベッドに行き眠れるようになりました
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「21時消灯」を守ることも、決して楽なことではありません。

帰宅→夕食→入浴→就寝までのすべてが時間勝負で、消灯後は物音を立てずに息を潜めなくてはならないため、家事や翌日の準備は全て日中から消灯前に完璧に終わらせる必要があります。もちろんゴールデンタイムにテレビは観られないなど、自らと、家族に課した制約がたくさんありすぎて皆それぞれ常に小さなストレスを抱えています。

しかしこのリズムができたことで規則正しく生活できるようになり、小学校入学を前に生活リズムが崩れてしまうことへの不安はほとんどなく入学後の安定を支える大きな土台となりました。初めての夏休みも、リズムを崩さないように生活しなければと思っていましたが、心配をよそに早寝早起きすることができました。

また、いつもは必ず21時に寝るのに寝つきが悪いな、夜中に覚醒したな、と思ったら高熱があったなど、体調の異変に早く気付けることも、よかったなと思っている部分です。

睡眠が整ったことで日中も穏やかに過ごせるように

息子は我慢することや妥協することを練習中です
息子は我慢することや妥協することを練習中です
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息子は新しい環境になじむまで時間がかかるタイプなので、入学直後は夜泣きや覚醒が絶対に再開する、半年から一年は大変になるだろうと覚悟していました。

しかし息子はいつの間にか自分のペースで変化を受け入れる力を身につけていたようです。年長の時からドライブコースに特別支援学校を追加していたため、学校までの道のり自体はすでに安心エリアで行き渋ることなどもなく、予想に反して入学後の夜も安定し、夜泣きは再発しませんでした。

今でも日中の癇癪やパニックは起こりますし、季節の変わり目や刺激によっては長泣きに繋がることもありますが、夜中に数時間ギャン泣きされることに比べたら、何ということはありません。息子は睡眠が整ったことで、日中は穏やかに過ごせることが多くなったり、言葉も増えて認知も広がり、指示が通るようになったり、成長を感じられることが多くなりました。

今、眠れない夜を過ごしている方、先の見えない不安に押しつぶされそうな方、私もかつて同じ場所にいました。産まれてから続いた睡眠障害、寝不足で苦しかった日々の経験で私自身も成長し、強くなりました。

いまだに出口が見えない日もありますが、それでも今日をなんとか終えた。それだけでもう、じゅうぶん偉い!そう自分を讃えながら、もうすぐやってくる夏休みに備えていけたらと思います……(ため息)。
執筆/かさはらあやこ
(監修:新美先生より)
生活リズムづくり、特に睡眠のリズムを一定にするために行ったことについて具体的にきかせてくださりありがとうございました。
ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの中には、睡眠障害がある方も少なくありません。乳幼児期から寝かし付けに時間がかかったり、夜中に起きてしまったり、早朝覚醒したり、入眠・覚醒の時刻がずれていってしまって睡眠リズムが一定に保てなかったりすることはあります。養育者の疲弊も大きいし、お子さん自身も安定しませんよね。睡眠リズムをつくっていくことは、とても大変ですが、とても大切なことですね。
家族全員が21時に就寝して、なにも物音を立てられない、どんなに癇癪が起きるかもしれなくても不規則な時間に寝ていたら起こすなど、読んでいるだけでも大変さが伝わってきます。それでも、何を差し置いても睡眠リズムを一定に保つことを大事にすることで、お子さんの体調が一定し、日中の情緒も安定してきて、成長を実感できたのではないでしょうか。
睡眠の問題がありそうな場合、やはりお薬の力も使った方がずっと楽になることも多いです。かさはらさんも、メラトベルを使っていらっしゃるのですね。睡眠障害に関しては副作用は少なく依存性のないお薬もあるので、発達障害があって睡眠で困っている方は早めに担当医に薬のこともご相談されるといいかもしれません。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030567
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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