子どもの睡眠障害の症状や対処法、発達障害との関係など/医師監修

ライター:発達障害のキホン

子どもの寝かしつけや夜泣きに悩まされている保護者の方も多いのではないでしょうか?自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどの発達障害の併存症として、睡眠障害があるといわれています。睡眠障害は夜驚症といったさまざまな状態が含まれる言葉で、これらは早期の適切な対処でよくなることもあります。子どもの心身の成長に欠かせない良質な睡眠について見直しましょう。

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監修: 藤井明子
さくらキッズくりにっく院長 
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年より東京都世田谷区にあるさくらキッズくりにっくで発達外来を行っている。病気に限らず、子どものすべてを診るクリニックをめざし、お子さんだけでなく、親御さん子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。3人の子どもを育児中である。
目次

睡眠障害とは?子どもがなかなか眠らないのは睡眠障害なの?

睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態を指す医学用語です。不眠症、過眠症、概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群、夢遊病、夜驚症などが含まれます。
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睡眠障害(不眠障害)は、なかなか寝付けない入眠困難、中途覚醒などが頻回におきたり、覚醒後に寝つけなくなる睡眠維持困難、早朝覚醒のいずれか1つ以上の睡眠に関する問題を呈し、苦痛や社会的な困難を伴います。
このような状態が、睡眠の適切な機会があるにもかかわらず、週に3日以上、夜の睡眠困難があり、3か月以上持続し、社会生活が困難になります。
なお、診断にあたっては、このような不眠が、ナルコレプシーや概日リズム睡眠‐覚醒障害などそのほかの睡眠―覚醒障害によるものでないこと、医薬品など物質の影響でないこと、併存する精神疾患によるものではないことの確認が必要となります。

子どもの心身の育ちにとって睡眠はとても重要です。子育て中の保護者の方にとって、子どもの睡眠は大きな悩みの一つであるかもしれません。「子どもが夜ちゃんと寝てくれなくて…」、「たびたび夜中に起きて騒ぐので、家族みんな寝不足で…」という経験がある保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

子どもがぐっすり寝てくれないと、お世話をする保護者のほうも寝不足になり、体力的にも精神的にもつらいと思います。夜泣きしたり騒いでしまったりすると、近所迷惑になっていないかというストレスを感じる方もいらっしゃるでしょう。また、うまく眠れない日が続くと、何かの病気ではないか、発育に影響はないのか、不安になったりするかもしれません。

子どもは、新生児期には昼夜を問わず短い睡眠・覚醒を繰り返しますが、乳児期から夜間睡眠が中心になり、3歳~6歳のころには昼寝をとらなくなるなど年齢と共に睡眠リズムを確立します。赤ちゃんの眠りはまだ未成熟で浅い眠りなので、夜泣きをすることも多くあります。幼児期(3歳から6 歳ごろ)までに浅い眠りと深い眠りのサイクルが大人と同様のリズムに移行していきます。そのため、幼児期になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。

特に、発達障害のある子どもは、睡眠障害を経験する場合が多いといわれています。睡眠リズムのシステムづくりになんらかの問題が生じたり、発達障害の二次障害として睡眠障害があらわれたりする可能性もあります。睡眠障害が長く続くと、日常生活に更なる影響が出ることもあります。

子どもの発育に睡眠が重要な理由は?

睡眠リズムは成長につれて確立します

子どもの睡眠のメカニズムは、脳の成長につれ変わっていきます。生まれてすぐのころは短い周期で昼夜の区別なく眠りと覚醒を繰り返します。生後6ヶ月ごろまでには昼間に長めに起きて夜に集中して眠る、約24時間の生体リズムが形成されます。その後、午前中の昼寝、午後のお昼寝の順に必要がなくなり、3歳~6歳くらいまでに夜間にまとまって寝るようになります。

睡眠量だけでなく、睡眠の質(睡眠構造)も年齢・成長にともない変化します。人間の睡眠は、レム睡眠(浅い眠りで身体は眠っているのに、脳が活発に動いている状態)とノンレム睡眠(脳も身体が休んでいる深い眠りの状態)の2つに分けられますが、生後間もなくはレム睡眠に似た浅い動睡眠が睡眠全体の約半分を占めます。
生後3ヶ月ごろにはレム睡眠が減少し、入眠もノンレム睡眠から始まるようになります。、3歳から6歳ごろまでにはノンレム睡眠とレム睡眠を90分ほどの周期で繰り返す、大人とほぼ同じ睡眠リズムができてきます。そのために睡眠のシステムが形成される時期に良質な睡眠をとることは、大切であるといわれています。

また、1歳ごろまでにメラトニンという体内時計を調整する役割をもつホルモンの分泌が急速に始まり、最終的には10歳頃までメラトニン分泌の高い状態が続き、睡眠と覚醒のリズムが確立されていくといわれています。メラトニンは、覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながしますが、日中に光をたくさんあびることで分泌されるので、早寝早起きの生活リズムを続けることでより分泌量が増え、より眠れるようにもなります。

乳児期はこれらの睡眠のシステムが形成される途中であるため、睡眠が浅かったり、細切れになりますが、3歳以降になってもこのシステムがうまくできていない場合、対策を考えたほうがよいかもしれません。

睡眠が発達をうながします

細胞組織の生成と新陳代謝を促す成長ホルモンは、身長を伸ばしたり、筋肉をつくったりするのに欠かせません。また、脳の発達や記憶などにも関係するホルモンです。この成長ホルモンは、睡眠中、特に入眠後最初に訪れるノンレム睡眠中に多く分泌されるといわれています。つまり睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで、身体の組織や脳が構築され発達するのです。

このように、子どもにとって睡眠は日中の疲労を回復するだけではありません。乳幼児から思春期の睡眠は、心身が大きく成長する時期に必要なホルモンが分泌される、発達に欠かせない大切な時間といえるでしょう。

そのため、子どもの睡眠の問題には早期に対処することが重要です。睡眠障害が改善されることで発達障害にもよい影響を与えると考える医師や研究者もおり、さまざまな研究も進められています。
「子どもの睡眠と脳の発達 ─睡眠不足と夜型社会の影響─」|大川匡子
https://doi.org/10.5363/tits.15.4_34

子どもの睡眠障害とは?どんな場合に疑われる?

眠りになんらかの問題がある状態を睡眠障害といいます。「眠れない」不眠症をイメージする人が多いのですが、眠りすぎやいびきなども含め、眠りの質と量にまつわるさまざまな問題を広く含みます

子どもに見られる症状の目安として、以下のうち、1つでも当てはまる場合、睡眠障害ではないかを検討するほうがよいとする専門家もいます。
①夜間睡眠中に何度も目を覚ます
②強くいびきをかく
③日中不機嫌でイライラしている
④よく泣く
⑤保育園や幼稚園に行きたがらない
⑥頭痛や腹痛が多い
⑦1日中ねむけを訴える
⑧朝起きて学校に行くまでにぐずぐずと時間がかかる
⑨土曜・日曜日・休日はお昼まで寝ている
⑩成績や部活の伸びが止まってしまった、あるいは急激に伸びた(がんばっている)、朝起きることができず学校にも行けなくなった

(『子どもとねむり<乳幼児編>』三池輝久著 メディアイランド刊 P83より引用)
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4904678273
このほか、以下の様子が見られるときも睡眠障害が原因の可能性があります。

・夜中に突然大声で叫び、パニックを起こす
・手足のムズムズ感や違和感、痛みで眠れない
・夜中に歩き回る
・夜普通に寝ているが、日中眠そうにしていたり居眠りしたりする
・寝る時間が遅くて不規則な生活が続き、直せない
・睡眠が十分に取れなくて頭痛や体調不良が続いている
・落ち着きがなく、衝動性がある

睡眠時間や睡眠中に起きる問題のほか、一見睡眠と関係なさそうなことも睡眠障害が原因かもしれません。子どもが良質な睡眠ができているか、普段の様子や生活をチェックしましょう。

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