親子で試行錯誤。ルールは「安全に使うための手すり」

ルールは安全に生活するためにある
ルールは安全に生活するためにある
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スマホは、一歩間違えると生活に大きな影響を与えるツールですが、上手に使えば社会とのつながりや自信につながる「心強い相棒」でもあります。実際スマホを持ってから、タクは友だちとの関係を築くのがスムーズになりました。今では待ち合わせも部活の連絡事項もスマホが重大な役割を担ってます。スマホで人と繋がれることが、本人の自己肯定感にも少しずつ良い影響を与えているように感じます。

もちろん、今もトラブルがゼロになったわけではありません。でも、親が一緒に悩んで考えて環境を整えていけば、子どもは少しずつ学んでいけるんだなと思えるようになりました。

特性のある子にとって「ルール=制限」ではなく「安全に使うための手すり」みたいなもの。その感覚を、親子で共有しながら進めていけたらと思っています。わが家にとってスマホはまだまだ「試行錯誤の真っ最中」。でも、だからこそこれからも親子で話し合いながら、少しずつアップデートしていきたいと思います。
執筆/もっつん
(監修:森先生より)
もっつんさん、お子さんとのスマホをめぐる試行錯誤の体験談をありがとうございます。
実際、スマホとの付き合い方に関しては、お子さんからお年寄りまで悩まれる方が非常に多い問題です。スマホは生活から切っても切れない便利なツールであると同時に、気を付けて使わないと「スマホ依存」となってしまうこともあるため、お子さんの利用ルールに迷う保護者の方が少なくありません。
実際、勉強に役に立つようなアプリ、興味関心をのばすようなアプリをスマホに取り入れているお子さんも大勢いらっしゃいます。たとえば趣味の将棋のアプリを使って隙間時間を有効活用したり、CADアプリを入れて設計の学習を深めたり、といった使い方もできますね。
スマホを通じて友だちとのつながりを築いたり、学びを深めるために使うこともあるため、「禁止すればいい」「制限すればいい」とは言えないないのが難しいところです。もっつんさんの、「ルールは制限ではなく、安全に使うための手すり」という考え方は大変素晴らしいですね。親子で一緒にルールをつくり、貼り出して共有すると、お子さんも安心できますし、親子の信頼関係が深まるのではないでしょうか。

さて、発達の偏りのあるお子さんの場合、社会的ルールの理解や優先順位の調整が苦手なことがあります。また、特定の物事への強いこだわりやのめり込みが見られることがあるため、スマホに強い興味をもってしまうこともあり得ます。そのため、友だちとのメッセージ交換やスマホゲームなどに夢中になって、時間管理が難しくなってしまうなど、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
また衝動性から、その場の欲求や好奇心に抗えず、ルールを破ってしまうこともあります。もっつんさんが書いてくださったように、「目の前の興味にリスクがすっぽ抜ける」のは衝動性からくる特徴ですね。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)が併存する場合、ASDの「ルールや予測可能性を好む」傾向と、ADHDの「衝動性や注意力の散漫さ」が混在し、行動のコントロールがより難しくなることがあります。セキュリティを解除して深夜までスマホを使ったエピソードは、ADHD(注意欠如多動症)の衝動性とASD(自閉スペクトラム症)の強い興味が組み合わさった結果かもしれませんね。

スマホはお子さんにとって、とっても刺激の強いツールです。ただし、適切な環境設定とルールで、ポジティブな道具にもなり得ます。もっつんさんが実践している「親子でのルールづくり」や「環境を整える」アプローチが有効です。勉強中や夜はリビングで充電すると決める、といったルールを定め、ルールを破った場合、罰よりも「次はどうすればいいか」を一緒に考えるアプローチが有効です。
また、ツールや設定をうまく使うことも大切ですね。タイマーやリマインダーなど、時間管理を助けるツールを使いましょう。たとえば「ゲームは◯分まで」と決めておいてタイマーをセットするなどです。スマホの通知音や画面の明るさが過剰な刺激になっていないか確認する。必要なら、通知オフやブルーライトカット設定を活用する。視覚的なルール設定が効果的な場合も多く、もっつんさんが実践しているように「ルールを紙に書いて貼る」といった視覚的なリマインダーを使うといいでしょう。
「うちの子はスマホ依存かも?」というお悩みをお持ちの保護者の方は多いものです。スマホへの依存を減らすためには、単に制限したり禁止するよりも、楽しい「代替行動」を用意してみましょう。いわゆる「デジタルデトックス」ですね。家族で会話を楽しむ時間をつくったり、カードゲームやボードゲームをしたり、工作などタクさんが好きな趣味を楽しむ時間にするといいのではないでしょうか。親子でスマホの使い方を振り返る時間を設けるのも手です。「今週のルールは守れた?」「何か困ったことあった?」と話し合い、必要ならルールを調整していきましょう。
これからも、もっつんさんがお子さんの成長のためのサポートをしていけるよう応援しております。
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https://h-navi.jp/column/article/35030603
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に
公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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