学校と家庭で実践するコミュニケーション支援
――ご講演では、特別な興味を活かした具体的な支援方法についてお話しされると伺いました。学校や療育の現場で先生方が実践する上でのポイントと、その効果をより高めるために保護者が家庭でできる連携のコツは、どのようなものでしょうか。
藤野: 教員や支援者の学校・療育の現場での支援ポイントですが、3点ご紹介します。
まず1点目は「教材や課題に特別な興味を組み込む」ことです。例えば恐竜が好きな子なら算数の問題に恐竜の絵や名前を入れる、電車が好きな子なら国語の文章題に鉄道の要素を取り入れるなどです。2点目としては「コミュニケーションの媒介に活用する」ことです。クラスで「〇〇博士」として発表の機会をつくってあげたり、子どもたちの興味のある共通の話題を通じて友だちとの交流を促すことができます。3点目は「情緒の安定や自己調整のために取り入れる」ことです。強いこだわりがストレスにならないよう興味のあることをスケジュールに組み込み、興味のある活動を安心できる切り替え時間として活用することでストレスを軽減できることがあります。
家庭での連携のコツを4点挙げるとすると、1点目は「学校と同じテーマを共有する」。学校で使った特別な興味の活用例を家庭でも取り入れるたりすると子どもが家でも同じことで認められていると感じやすくなります。2点目は「成功体験を広げる」ことです。興味をきっかけにした学習成果や作品を家庭で展示・共有したり、小さな成果を家族が喜ぶことで子どもの自己肯定感が高まります。
3点目は「視野を少しずつ広げる」です。例えば、電車好きのお子さんでしたら、電車をきっかけに地理・地図・歴史へと関連分野へ触れることのきっかけを促すようなこともできます。最後は「ストレス対処としての活用を理解する」です。特別な興味に没頭する時間は休息の仕方として尊重する、没頭時間を無理に制限せず、バランスをとる工夫を学校と共有する、などの考え方です。
まず1点目は「教材や課題に特別な興味を組み込む」ことです。例えば恐竜が好きな子なら算数の問題に恐竜の絵や名前を入れる、電車が好きな子なら国語の文章題に鉄道の要素を取り入れるなどです。2点目としては「コミュニケーションの媒介に活用する」ことです。クラスで「〇〇博士」として発表の機会をつくってあげたり、子どもたちの興味のある共通の話題を通じて友だちとの交流を促すことができます。3点目は「情緒の安定や自己調整のために取り入れる」ことです。強いこだわりがストレスにならないよう興味のあることをスケジュールに組み込み、興味のある活動を安心できる切り替え時間として活用することでストレスを軽減できることがあります。
家庭での連携のコツを4点挙げるとすると、1点目は「学校と同じテーマを共有する」。学校で使った特別な興味の活用例を家庭でも取り入れるたりすると子どもが家でも同じことで認められていると感じやすくなります。2点目は「成功体験を広げる」ことです。興味をきっかけにした学習成果や作品を家庭で展示・共有したり、小さな成果を家族が喜ぶことで子どもの自己肯定感が高まります。
3点目は「視野を少しずつ広げる」です。例えば、電車好きのお子さんでしたら、電車をきっかけに地理・地図・歴史へと関連分野へ触れることのきっかけを促すようなこともできます。最後は「ストレス対処としての活用を理解する」です。特別な興味に没頭する時間は休息の仕方として尊重する、没頭時間を無理に制限せず、バランスをとる工夫を学校と共有する、などの考え方です。
子どもたちに見られた「うれしい変化」のエピソード
――このアプローチを通じて、子どもたちのコミュニケーションや自己肯定感には、実際にどのようなうれしい変化が見られるのでしょうか。先生がこれまでにご覧になった中で、支援者や保護者にとって特に印象的だったエピソードがあれば、ご紹介いただけますか。
藤野: 大学で開催している会話型のロールプレイゲームで遊ぶ会で見られたことを紹介します。キャラクターに扮してストーリーを展開していく活動なのですが、自分が決めたキャラクターに仮装するとほかのキャラクターに仮装した子どもたちと自然で自発的な会話が生まれます。日常会話ではほとんど言葉が出てこない子どもでもです。
それから、ゲームの中で、キャラクター同士でなく、ゲームに関する話題で子ども同士の会話が見られるようになります。そして、ゲームが終わったあとに、ゲームの世界の外で、子どもたち同士の会話が生まれてきます。このゲームを体験してから「雑談ができるようになった」「会話が楽しくなった」という子どもたちの声も聞こえてきました。興味の対象(ゲーム、キャラクター)を拠点として、そこからコミュニケーションを広げていった例になるかと思います。
藤野: 大学で開催している会話型のロールプレイゲームで遊ぶ会で見られたことを紹介します。キャラクターに扮してストーリーを展開していく活動なのですが、自分が決めたキャラクターに仮装するとほかのキャラクターに仮装した子どもたちと自然で自発的な会話が生まれます。日常会話ではほとんど言葉が出てこない子どもでもです。
それから、ゲームの中で、キャラクター同士でなく、ゲームに関する話題で子ども同士の会話が見られるようになります。そして、ゲームが終わったあとに、ゲームの世界の外で、子どもたち同士の会話が生まれてきます。このゲームを体験してから「雑談ができるようになった」「会話が楽しくなった」という子どもたちの声も聞こえてきました。興味の対象(ゲーム、キャラクター)を拠点として、そこからコミュニケーションを広げていった例になるかと思います。
支援者、保護者が明日から試せる「はじめの一歩」は?
――講演に参加された支援者の方や、この記事を読んだ保護者の方々が、それぞれの立場で明日からすぐに試せる「はじめの一歩」となるとしたら、どのような関わり方が考えられるでしょうか。
藤野: こちらも支援者と保護者に向けての関わり方をそれぞれご紹介します。
【支援者(学校・療育スタッフ)の「はじめの一歩」】
【保護者の「はじめの一歩」】
などが挙げられます。
藤野: こちらも支援者と保護者に向けての関わり方をそれぞれご紹介します。
【支援者(学校・療育スタッフ)の「はじめの一歩」】
- 1.話題に取り入れてみる
・授業や活動中に子どもの特別な興味のキーワードをひとつ加えてみる。
(例:算数の問題に好きなキャラクターを登場させる) - 2.興味を認めて声にする
・「〇〇が好きなんだね!」「それ、すごく詳しいね」と一言添える。 - 3.交流のきっかけに使う
・「〇〇さんは電車博士だから、教えてもらおう」と友達とのつなぎ役を意識する。
【保護者の「はじめの一歩」】
- 1.毎日の会話に取り入れる
・「今日は〇〇についてどんなことを考えたの?」と、興味をテーマに会話を広げる。 - 2.小さな成功を褒める
・興味をきっかけにした作品や発見を「すごいね!」と共有する。 - 3.関連分野を少しだけ紹介する
・例:恐竜好きなら「この恐竜はどの時代にいたのかな?」「地球の歴史とつながってるね」と自然に広げる。
などが挙げられます。
――最後に、支援者と保護者がより良いパートナーシップを築いていくために、学校の先生方をはじめとした支援者の皆さまと、お子さんの最も身近な支援者である保護者の皆さまへ、それぞれメッセージをお願いいたします。
藤野: まずは支援者(学校・療育スタッフ)の方へのメッセージです。特別な興味は、子どもにとって世界とつながる大切な窓口です。先生や支援者の皆さまが、その興味を尊重し、学びや交流の場に生かしてくださることは、子どもの安心感と成長につながります。保護者と共に、子どもの小さな変化や喜びを共有しながら、一歩ずつ歩んでいける存在であっていただければと思います。
次に保護者の方へ、お子さんの特別な興味は、単なるこだわりではなく、その子らしさと可能性の源です。ご家庭でその興味を受け止め、楽しみ、支援者と共有してくださることが、お子さんの成長を支える大きな力になります。先生や支援者は、保護者の皆さまと同じように、お子さんの未来を共に支える仲間です。安心して歩みを分かち合ってください。
藤野: まずは支援者(学校・療育スタッフ)の方へのメッセージです。特別な興味は、子どもにとって世界とつながる大切な窓口です。先生や支援者の皆さまが、その興味を尊重し、学びや交流の場に生かしてくださることは、子どもの安心感と成長につながります。保護者と共に、子どもの小さな変化や喜びを共有しながら、一歩ずつ歩んでいける存在であっていただければと思います。
次に保護者の方へ、お子さんの特別な興味は、単なるこだわりではなく、その子らしさと可能性の源です。ご家庭でその興味を受け止め、楽しみ、支援者と共有してくださることが、お子さんの成長を支える大きな力になります。先生や支援者は、保護者の皆さまと同じように、お子さんの未来を共に支える仲間です。安心して歩みを分かち合ってください。
日本LD学会第34回大会 開催概要
一般社団法人 日本LD学会第34回大会
■藤野博先生のご登壇
・大会企画シンポジウム【会場+オンデマンド配信】
10月18日(土)13:40~15:40
「よかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―」
企画者・話題提供者:加藤 浩平先生
企画者:藤野 博先生
司会者・話題提供者:日戸 由刈先生
話題提供者:平尾 直志先生
指定討論者:本田 秀夫先生
・教育講演【オンデマンド配信のみ】
「スペシャル・インタレスト ―特別な興味に基づくコミュニケーション支援―」
藤野 博先生(東京学芸大学)
※会場参加の申し込みは締め切りました。オンデマンド参加の申し込みは以下期間で行っております。
2025年10月9日(木)~11月19日(水)
詳細は日本LD学会第34回大会Webサイトをご確認ください。
- テーマ:一人ひとり自分の学び方との出会いがそこにある -好奇心が伸びていく-
- 開催:星槎大学
- 会場:国立オリンピック記念青少年総合センター+オンデマンド
- 日時:2025年10月18日(土)~19日(日)
■藤野博先生のご登壇
・大会企画シンポジウム【会場+オンデマンド配信】
10月18日(土)13:40~15:40
「よかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―」
企画者・話題提供者:加藤 浩平先生
企画者:藤野 博先生
司会者・話題提供者:日戸 由刈先生
話題提供者:平尾 直志先生
指定討論者:本田 秀夫先生
・教育講演【オンデマンド配信のみ】
「スペシャル・インタレスト ―特別な興味に基づくコミュニケーション支援―」
藤野 博先生(東京学芸大学)
※会場参加の申し込みは締め切りました。オンデマンド参加の申し込みは以下期間で行っております。
2025年10月9日(木)~11月19日(水)
詳細は日本LD学会第34回大会Webサイトをご確認ください。
※ボタンをクリックすると日本LD学会第34回大会公式Webサイトに遷移します

【10/18.19開催】学習障害の子どもの好奇心や自己肯定感の育み方は?【日本LD学会第34回大会長・星槎大学阿部利彦先生に聞く】

まとめ読み!専門家監修「マンガで学ぶ子どもの学習障害」ーーLD・SLDの特徴や治療、療育方法、手立てまで詳しく解説

2歳児のASD(自閉スペクトラム症)の特徴は?こだわりが強い・コミュニケーションが苦手などチェックリストや相談の目安を解説【小児科医監修】

「こだわり」はないほうが生きやすい?登園ルート、弁当のおかず…発達障害息子の「ルーティーン回避」と「安心感」のバランス、試行錯誤の歴史

ルールやマナーに強いこだわり、予定変更でパニック!発達障害息子の気持ち、どう受け止める?【専門家アドバイスも】
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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