小学校入学で崩れた平和

それから2年近くの間、学習用タブレットのおかげでリビングは穏やかになり、毎日の学習習慣もついて言うことなしでした。
たまに見たいものがあれば2階へ上がり、少しテレビを見たら食事やお風呂のタイミングで降りてくる。
わが家もやっとデジタルメディアと良い付き合い方ができるようになったと信じていました。

しかし長女が小学校に上がると、その様子が一変。長女が学習用タブレットに触りもしなくなったのです。
理由は、大好きだったキャラクターが画面から消えてしまったから。

小学生講座の新キャラクターに興味が持てず、タブレット教材への興味を失ってしまったのでした。
さらに環境の変化による疲れからか、まゆみは突然泣いたり怒ったりと情緒不安定になることも増えていました。
環境の変化による疲れからか、長女・まゆみは情緒不安定になることも
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そして私は、タブレットでの動画視聴を解禁してしまったのです。私の古いiPadを使い、リビングで動画サイトを見ることを許しました。
この時の判断を、後に大後悔することになります。

二転三転の方針

その日から、「たぶれっとチョウダイ」と催促される日々が始まりました。
「ま、まゆみが要求を言葉でしゃべっとる‼」と喜んだのも束の間で、すぐにイライラのほうが勝るようになりました。
まゆみに見せるからには、あずさにも見せないと不公平になります。あっという間に、姉妹ゲンカの日々に逆戻りしてしまいました。

  • タブレットでの動画視聴は15分交代 
  • トータルで1日1時間まで 
  • キッズ用アプリで見ること 

親が管理して、ルールをしっかり守らせれば大丈夫。
最初はそう考えていたのですが、次第にそれも難しくなりました。

15分で自動的に切れるように設定すると、楽しんでいた動画がブツ切りになって大爆発。
ならばと、視覚支援用のタイマーを目安にしてなるべくキリの良いところで交代するようにしても、やはり機嫌は悪くなる。
交代する時に長女が切り替えられずに泣いてしまうと、次の番の次女が「うるさ~~~い‼」と怒ってまたケンカ。
その上、次女は私の目を盗んで少しずつタイマーの残り時間を増やしている始末……。

―――ダメだ。わが家にタブレット視聴は尚早であった。

私はリビングでの動画視聴を完全に取りやめる方向へ全力で舵を切りました。
子どもたちがどこまで理解できるかは分かりませんでしたが、「明日からタブレット視聴はできなくなります」と宣言し、どうしてそうするのかを説明しました。

次女はもちろん食い下がり、「明日から仲良く見るからぁ!」と泣いてお願いしてきましたが、「今日まで我慢してきたけど、ママにはタブレットがあることで家族の仲が悪くなってるように見える。それが耐えられないくらい悲しい。まゆみとあずさが譲り合いを覚えて『もう大丈夫だな』と思える日が来るまで、タブレットはサヨナラしよう」と伝えてデバイスを子どもの前から隠しました。

そもそもが私の判断ミスだったので、楽しんでいたものをいきなり制限してしまう申し訳なさはありましたが、ダラダラ視聴とケンカが習慣になってしまっている以上、少しずつフェードアウトさせるのは難しかったのです。

動画以外の楽しみを増やすために

動画視聴をなくす代わりに、子どもたちにとって楽しめる時間を増やそうと思いました。
まず取り入れたのは、外遊びの時間を増やすこと。

晴れた日の明るい時間帯は、できるだけ子どもを庭に出す。
わが家の庭には、単管パイプで組んだ簡易アスレチックや、小さいながらもいろいろ育てている畑があり、外に出さえすればしばらくは遊んでくれました。夏はビニールプールも活用し、庭で過ごす時間を増やしました。
大体の様子であればリビングの掃き出し窓から見えるので、家事をしながら見守ることもできます。

さらに、“一人でもできる室内遊び”を充実させるべく、おもちゃの見直しもしました。

まゆみには、「こういうの大好きだよね」とタッチペン絵本やピアノ絵本を新しく用意しました。自分から欲しいものを言えず、興味の幅も狭いまゆみなので、“確実に好きなもの”を増やす狙いです。
一方あずさは、その時々のブームがはっきりしているので、本人に聞きながら工作素材や文房具を追加しました。
また、あずさはまゆみが触らなくなった小学生講座の学習用タブレットで引き続き遊んでくれているので、動画視聴が禁止になった最初こそ抵抗したものの、割とすぐ納得して受け入れてくれました。

難しかったのはまゆみです。
まゆみが新しいおもちゃで遊び始めると、あずさも気になって奪いにいってしまうのです。
そこでまたケンカが起きてしまい、しかも引きさがるのはいつもまゆみでした。
あずさを諭そうにも、4歳(当時)のあずさは自制できる時ばかりではありません。
そのうち、まゆみはあずさの手の届かない場所におもちゃを隠すようになり、あずさの前では出そうとしなくなりました。
そして私の前に来て言うのです。

「たぶれっと、チョウダイ」

私は頭を抱えました。

自分の中のデジタルメディアの線引きを見直し、まゆみが真に必要としているものについて考えた話は、次の機会にお話しします。

執筆/にれ

専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医) 

デジタルメディアとの付き合い方について、ご家庭でのさまざまな工夫を共有してくださり、ありがとうございます。
発達特性のあるお子さんにとって、動画やタブレットは単なる娯楽ではなく、安心できる刺激や気持ちを落ち着ける手段になっていることもあります。一方で、切り替えの難しさやきょうだい間のトラブルにつながることもあるため、付き合い方に悩まれている親御さんはとても多いと思います。私自身も大変参考になりました。家族が心穏やかに、笑顔で過ごせる時間を保つこと、そしてそのために保護者の心身の健康が守られていることは、子どもの成長にとってとても大切だと思います。デジタルメディアは、使い方によっては学びや興味を広げるきっかけにもなりますし、ご家族が日々の生活を回したり、少し一息ついたりするための助けにもなります。子どもにとっても保護者にとっても安全で穏やかに過ごせる時間を作るために、メディアを上手に利用することは、決して悪いことではないと思います。
一方で、子どもの年齢や発達段階、興味の変化、きょうだい関係、家庭の状況によって、ちょうど良い距離感は変わっていきます。デジタルメディアとの付き合い方は、「一度ルールを決めたらずっと守る」というものではなく、その時々の子どもと家族の状態に合わせて見直していけると良いですよね。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35030951

このコラムを書いた人の著書

今日もまゆみは飛び跳ねる ~自閉症のわが子とともに~
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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