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[第4回]

 自分の苦手と限界を知った今、大切にしている「自分らしい歩み方」

社会人10年目にして発達障害の診断を受けた岩本友規さん。診断名を聞いたときは「ようやく原因がわかってホッとした」といいます。そして、生きづらさの解消には特性に向いている仕事だけではなく、自分自身の働く目的が必要不可欠だと教えてくださいました。最終回は、1児の父として大切にしている事をお伺いします。

子育てのために読んだのは、育児本ではなく発達心理学

編集部:そんなご経験をされた岩本さんは、1児の父とお聞きしましたが、ご自身の経験から子育てで大切にされていることなどはありますか?

岩本:子どもはまだ小さいのですが、とにかく、だっこをしてあげるように心がけています。子どもが「だっこ」と言ったら絶対にします。

編集部:「だっこ」、ですか?

岩本:僕はマニュアル人間なので、子育てを勉強しようと、育児本の中でも発達心理学について書いてある本を勉強しました。(笑)
発達段階の中に、愛着を形成する時期があり、少なくともその間は、子どもは親への絶対的な依存が必要、とありました。なるほど、そこはクリアさせてあげたいな、と。

編集部:育児本ではなく、発達心理学の勉強から始めたのですね!        

岩本:やはり理屈っぽいといいますか、つじつまをあわせたり、理由を知るのが好きなんですね。
事実と事実がパチンとはまる瞬間が好きで、学ぶのも好きなんです。

仕事で「もう無理」と思ったら、スパっとやめます。

編集部:お子さんもいらっしゃるということで、「仕事を辞めるわけにはいかない、でも次体調が悪くなったらどうしよう」という不安もあるのではないでしょうか。

岩本:いえ、「もう無理だな」と思ったときは、さっさとやめます。スパっと。(笑)
今でも、100のキャパシティに対して、仕事が250くらい降ってくるのですが、全部受け止めようとせずに、その中から自分で重要だと思うことを選んで行うようにしていますね。

編集部:仕事を断ることもあるのでしょうか。

岩本:ええ、あります。NOというのは苦手なのですが…NOっぽく伝えたり、スルーさせていただいています。(笑)

仕事量というのは自分の限界にあわせて降ってくるわけではないのです。最近その事にようやく気づき、断るようにしています。

編集部:そうなんですね、もし自分のキャパシティ以上の仕事が来たら「出来る自分にならなくては」と思ってしまいそうですが・・・。

岩本:わかります、ついついそう思ってしまいますよね。

僕は、自分の限界を知って変わりました。キャパシテイ100に対して、やらなければいけないことだけで100を埋めてはいけないと気づいたのです。
やるべきことは50くらいに抑えて、やりたいことも50する、バランスが大事です。
・・・両方欲張って気づいたら100を超えてしまうこともあるのですが。(笑)

様々な経験が、将来自分の支えになる

編集部:自分の限界を知っていても、上手にバランスを取れるようになるまで時間がかかりそうですね。

岩本:そうですね、そのバランス感覚といいますか、しなやかさのようなものは、スキルとして後から身に付けました。うつで苦しんだあの時期を繰り返したくないという気持ちから、意識的に身に付けようとしました。

編集部:そうなんですね。

岩本:でも、意識していても枝葉が多くなってしまうこともあります。
ブログを書いていても、納得いくまで試行錯誤していたら、朝4時になっていたり。もちろん、主治医には怒られます。(笑)

編集部:岩本さんでもそんなことがあるのですね。しかし、夢中になれるほどのやりたい事を見つけるのは、社会人になるとなかなか難しそうですね。

岩本:確かに家と会社の往復だけでは難しいと思います。仕事以外の時間に、興味のありそうなことの中から、1つひとつ覗いてみたらいいのではないでしょうか。僕も、勉強会やイベントに行ってみて「あぁ思ったのとは違った」「なるほど、2回目は行かないかな」と思うものもあります。(笑)

編集部:「興味のありそうなこと」でいいと思うと、少し出来そうな気がします。子育て中の親御さんとしては、お子さんのやりたい事を見つけるために考えていることはありますか。

岩本:親としては、小さなころから自分の感動の種に出会える機会を作ってあげたいなと思っています。勉強も大事ですが、100のうち50でいいと思います。(笑)
岩本友規さん
編集部:それはなぜでしょう。

岩本:やりたい事は変わるので、子どもの頃から無理に探す必要もないと思います。

一方で、色々な経験をしておけば、いざ一人になって壁にぶち当たったとしても、過去の経験を活かして「これは好きだった」「自分はこういう場面で落ち込みやすいな」と考えられると思うのです。

その思考の幅があれば、どんな場面になっても自分でなんとかやっていけると思っています。
また、たとえその幅がなくても、1回苦しむと、その後はなんとかやっていけるのです。(笑)

編集部:なるほど、「なんとかやっていける」という言葉は心強いですね。

岩本:ええ。僕自身がちょっと辛くなり始めた時から大事にしてるのは「良いこと悪いこと、全部自分のためになっている」ということです。
結果で落ち込むのではなく、自分のこれからのために悪い結果が出たんだ、と思うようにしています。
・・・この言葉、しばらく忘れていたのですが。(笑)

編集部:え!(笑)

岩本:あはは。昔、相談に来てくれた後輩に言っていたみたいで、先日「先輩のアドバイスのお陰でここまでやってこれました!」と言われ、「あぁそんなこと思っていたな」と。(笑)
このインタビューのために、回りまわって自分に返ってきたのでしょう。(笑)

編集部:最後はユーモアを交えてお話いただき、楽しい時間となりました、ありがとうございました!

岩本:こちらこそ、ありがとうございました。今回は、3時間以内でおさまってよかったです。(笑)
発達障害の自分の育て方
岩本 友規 (著)
主婦の友社
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