LD・SLD(限局性学習症)とは?診断や検査内容、他の発達障害との関係は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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「勉強ができない」「なまけている」などと言われがち…実はLD・SLD(限局性学習症)かもしれません。LD・SLD(限局性学習症)は知的発達に遅れがないため、気づかれにくい発達障害です。小学生をはじめ、中学・高校生のみならず、近年では大人になってから診断される人も増えています。正しい診断を受けることで、その人にとって最適な環境が見つかりやすくなります。まずはLD・SLD(限局性学習症)の特性を知り、多く当てはまるようなら専門機関で検査を受けてみましょう。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

LD・SLD(限局性学習症)とは?チェックポイントは?

LD・SLD(限局性学習症)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習の機会があるにもかかわらず特定の領域に苦手さが生じてしまう、という場合に限り診断されます。
学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。

読字不全(ディスレクシア)

…読む能力に困難があり、文字が読めない、単語を理解できない。
読字不全(ディスレクシア)のチェックリスト。文字をスムーズに読むのが難しい、文章を読んでいるとどこを読んでいるのかわからなくなる、読み飛ばし適当読みをするなど読み方に特徴がある、音韻認識が弱くひらがなやカタカナひとつずつは理解していても漢字(単語)になると理解ができなくなってしまう、漢字の音読みと訓読みの使い分けができない、形態の似た字である「わ」と「ね」や「シ」と「ツ」などを理解できない、小さい文字「っ」「ゃ」「ょ」を認識できない、音声などの耳から入る情報は理解しやすい場合が多い、など
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書字表出不全(ディスグラフィア)

…文字を書く動作が困難、文字を書き写すのが苦手など。
書字不全(ディスグラフィア)のチェックリスト。鏡文字や雰囲気で「勝手な文字」を書く、誤字脱字や書き順の間違いが多い、文字に余分な線や点を書いてしまうことが多い、黒板やプリントの字が書き写せない時間がかかる、何度注意しても。(まる)や、(てん)などの句読点をつけ忘れる、漢字が苦手で覚えられない、文字の形や大きさがバラバラでマス目からはみ出したりする、年相応の漢字を書くことができないことが多い、間違った助詞を使ってしまうことが多い、など
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算数不全(ディスカリキュリア)

…数字に関する能力や、物事を考え答えを導く推論に困難がある。
算数不全(ディスカリキュア)のチェックリスト。簡単な数字や記号を理解しにくい、繰り上げや繰り下げの筆算ができないことが多い、数の大きいや小さいがよく分からない、文章問題が苦手で理解できないことが多い、数を覚えるのに時間がかかることが多い、九九を習得している年齢なのにも関わらず九九を覚えられていない、九九を暗記しても計算に応用できない、など
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なお、読字不全があると、結果的に書くことも難しくなるため書字表出不全を合併している場合も多くあります。
これらのほかにも、「話す能力」や「聞く能力」が低い場合もあります。
LD・SLD(限局性学習症)の症状は一人ひとり異なり、複数のタイプが混在している場合や、困難の重さにも差があるため、発見に時間がかかることがあります。

もし上記の各チェック項目に多く当てはまる場合は、LD・SLD(限局性学習症)の可能性が考えられます。気になることがあれば、専門機関に相談してみてください。診断を受けたい場合は専門機関で紹介してもらい、専門医を受診してください。
このチェックリストはあくまで参考程度のものです。自己判断はしないようにしましょう。
学習障害(LD)の定義|文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1396626.htm

LD・SLD(限局性学習症)はいつ分かる?小学生になって診断される人が多い?

LD・SLD(限局性学習症)は発達障害の中でも判断の難しい障害の一つです。その理由は、知的面の遅れがなく、日常生活で気づくことが少ないからです。

本格的な学習に入る就学前までに気づくのは困難と言われ、未就学児の読み・書き・算数の困難は単なる年齢相応の「苦手」とも考えられます。確実な検査・診断ができる年齢は特に決められていませんが、症状が現れやすい就学後、何らかの学習面での困難が大きくなったときに検査を行うのが一般的です。中学生や高校生、あるいは大人になってから気づく場合もあります。

【発達ナビQ&Aコーナーより】わが子にLD・SLD(限局性学習症)があるか悩んでいる保護者のギモン

Q.今年度で小学2年生になりましたが、娘の学習に対して以下のような症状があります。

・板書が書きとれず、連絡帳はいつも真っ白。
・ノートを見てみると文字の大きさがバラバラ、ひらがなはかける。漢字が苦手。文字の大きさが揃えられない。
・時計の見方がわからない。
・数字の数え方が理解できていない(2と5ではどちらが数が多いのかがわからない)

これだけでは判断しづらいと思いますが、小学2年生で時計が読めないのは珍しいのではないかと思って・・・
家でも気にして教えるようにしていますが、覚える様子なし。
学習障害に詳しい方、ご意見ください。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/27899
※学習障害(またはLD)は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっておりますが、引用のためこの章では学習障害やLDと記載しています。

こちらの質問には、発達ナビ会員の方から以下のいくつかの回答が寄せられました。
A.学習障害の症状は人それぞれ違うと思われます。
特に文字の見え方は様々あります。
文字が動いて見えたり、ぼやけて見えたり所々文字が消えて見えたり。などいろんな見え方があります。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/27899
A.息子がLDとADDです。

LDと診断された時は、

⚪︎字は、筆圧が弱く 汚く 読み辛い。
⚪︎漢字は、一画 多いか少なく、
もしくは 勝手に作る。
⚪︎ローマ字、アルファベットが 全くダメ。
読めず、書けず、挙句 吐き気がするそうです。
⚪︎ 余り黒板を模写しない。
⚪︎空間認知が出来ない。
⚪︎図形が書けない。

こんな感じでしょうか…
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/27899
A. 息子は、学校の板書で気が付きました。
息子さんは連絡帳が真っ白という事は、家でお困りですよね。

あと、息子は、時計の針の長さの違いが見えにくかったようです。

漢字も線が1本多いのは多くありました。
また、読みも、当初は読み飛ばしで大変そうでした。
出典:https://h-navi.jp/qa/questions/27899
このように何らかの学習におけるつまずきや、何度やっても分からない・できない状態が続くことに違和感を抱き、検査を受けて診断された方が多いようです。

小学校1年生のときにLD・SLD(限局性学習症)と診断された方の体験談

「違和感を抱いたのは幼稚園年中のころ(中略)。本を読んでいると、段落を飛ばしてしまうことがよくありました。娘は本を読むことがあまり好きではなさそうだったので、私は早く読み終わるためにわざと段落を読み飛ばしているのかと思いました。娘に都度そのことを注意すると『文字が見えなくなる』と泣いて訴えるようになりました」。

読字障害を疑い、幼稚園の先生に相談するも気にしすぎと言われ、就学前健診も問題なく通常級へ就学。小学校1年生になっても読み書きに苦労する様子から、知能検査を受け、語彙力は高いが読む力がとても低いという結果を受けて療育に通うことにし、小学校では通級にも通い始めたとあります。
当時の症状として次のようなことが挙げられています。

・段落の消滅(前後の段落が見えなくなってしまい、次にどこを読めばいいのか分からなくなってしまうようでした)
・1~10の数字の理解が難しい
・カタカナやアルファベットが読みづらい、促音・撥音に戸惑う
・同じ記号(数字、文字、絵含む)が続くと読めない(同じものが続くと混ざって見え、文字は溶けて見えると言い、正しく読めませんでした。クラスのみんなで同じテーマで絵を描くと、全て同じ絵に見えてしまい、同じものがたくさん並んでいると、さらにクラスメートの複数の絵が全て溶けて見えてしまうと言っていました)
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LD・SLD(限局性学習症)はADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)などほかの発達障害と関係がある?

ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにおいては、行動面や情緒面の問題が注目されがちですが、同時に学習面で困難を感じていることがあります。その中には、読み書きや計算に困難を示すLD・SLD(限局性学習症)であることが、少なくありません。ADHD(注意欠如多動症)には30~40%、ASD(自閉スペクトラム症)には約26%の頻度でLD・SLD(限局性学習症)を併せ持っているという報告もあります。

また、文部科学省の報告によると、小中学校の普通学級に在籍し、知的発達の遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合は、8.8%となっています。そのうち、学習面と行動面ともに著しい困難を示すと回答された児童生徒の割合は2.3%で、これらの子どもたちはLD・SLD(限局性学習症)とADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などを併せ持っている可能性があります。その場合は、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの特性にも配慮して、学習上の支援を行っていくことが大切です。

ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの困りごとの背景にLD・SLD(限局性学習症)があることも

ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは、不注意や多動性、衝動性といった特性から、一斉指導では先生の話を聞けない、集中できず授業に参加できない、面倒な勉強から逃げるといった問題が生じます。また、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、コミュニケーションの苦手さから集団行動に参加しにくい、対人トラブルが多いなどの問題が生じ、集団での学習に困難さが伴います。どちらもそういった特性だけでも学習上の困難につながりますが、背景にLD・SLD(限局性学習症)があり、学習することがますます困難になっているというケースもあるのです。

ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)は、行動面の特性が強いために、周囲の大人が学習困難に気づいていないことがあります。「子どもの困難の背景にLD・SLD(限局性学習症)があるのかもしれない」という視点を持って子どもを見ることが大切です。
参考文献 :文部科学省初等中等教育特別支援教育課「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf

LD・SLD(限局性学習症)かもしれない……を放置すると?二次障害を防ぐために

LD・SLD(限局性学習症)のある子どもは知的発達に遅れがみられないため、周りには障害がはっきりと見えにくく、「勉強ができない子」「話を聞かない子」「協調性のない子」「なまけている」などと誤解されがちです。子ども自身は「どんなに頑張ってもどうせできない」「自分には能力がない」と自信がなくなり、勉強への意欲や自尊心が低下してしまうことがあります。

こうした失敗体験や自信のなさ、意欲の低下などから周りの友達から孤立し、学校に行きたくなくなってしまうなど、ほかの適応上の問題に発展してしまう可能性もあります。このようなLD・SLD(限局性学習症)の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことを一般的に「二次障害」と言います。また、LD・SLD(限局性学習症)はADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった別の障害が併存している可能性もあります。

このような症状や状態が現れた場合には、それらに対する対応や治療が必要となります。二次障害を引き起こさないためにも、LD・SLD(限局性学習症)の早期の発見と適切な支援が大切なのです。

また、家庭では、小さな成功体験の場をつくったり、よいところをほめたり、好きな遊びの時間をつくったりするなどして、子どもに自信をつけさせたり、精神的に開放される場をつくったりするとよいでしょう。
参考:文部科学省「特別支援教育について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1298171.htm
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