4. 対象である「障害者」とは誰を指すか?

ここまで、合理的配慮の基本的な考え方とその背景を確認してきました。では、合理的配慮を受けられる対象となる、「障害者」とは具体的にどんな人たちのことを指すのでしょうか?

障害者差別解消法における定義

「障害者差別解消法」の中では、以下のように定義されています。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。(同法 第一章 第二条 一、太字は筆者強調)
出典:http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65.html
ここでポイントとなるのは“障害及び社会的障壁”という文言です。個人の心身の機能障害だけでなく、社会の制度や環境が障壁となって、その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。

障害の「社会モデル」

たとえば、足が不自由な方が、駅で電車に乗ろうとしたとします。この時、自分一人では乗り越えられないような段差や階段ばかりでは自力で電車に乗ることができません。ですが、エスカレーターやエレベーターなどが十分に整っていれば、この人も自力で電車に乗ることができます。つまり、この人が「電車に乗る」上での障害は、本人の足の不自由さでなく、駅の環境整備が不十分であるために引き起こされているのです。

障害の「社会モデル」とは、このように、個人と社会の相互作用の中で障害が発生するという考え方です。この考え方のもとでは、「障害」を解消する手段は、投薬やリハビリといった医学的な手段だけでなく、合理的配慮をはじめとする、社会の側の工夫や改善も含まれます。

「障害者差別解消法」の中でも、“法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない”としており、様々な社会障壁によって障害がもたらされている方も、合理的配慮の対象であると考えられています。

医師の診断や障害者手帳が無いから配慮は必要ない、ということでもありませんし、同じ診断や手帳のある人には一律に同じ配慮をすればそれで良い、ということでもありません。障害のある方一人ひとりが、具体的にどんな困難を抱えているかということに注目し、必要な配慮を考えていくことが大切です。

5. 配慮が「合理的」であるとはどういうことか?

次に、合理的配慮という言葉の一部である、「合理的」とはいったいどういうことなのか、基本的な考え方をご紹介していきます。

「必要かつ適当」な配慮であること

まずひとつめは、障害のある方本人にとって、その配慮が「必要かつ適当」な程度や内容であるかという点が重要です。あくまで、障害のある方が主体的に自分の力を発揮していくことが目的なので、本人が必要としていないような過剰な配慮は合理的とは言えません。

たとえば、緘黙(かんもく)症状があって他人との会話が出来ないという子どもに対し、タブレットや筆談でコミュニケーションを取れるようにする、というのは合理的配慮と言えるでしょう。ですが、コミュニケーション以外の日常生活すべてにおいて、周りの大人が介助をして助けてあげる、というのは本人にとって過剰な配慮となってしまいます。また、本人が成長するにつれて緘黙が解消したとしたら、タブレットや筆談による配慮は不要になるかもしれません。

本人の状態や周りの環境の変化に応じて、

 ・その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか。
 ・その困りごとを解消するための適切な配慮は何か。

という2点を踏まえながら合理的配慮を検討・実施することが大切です。

「均衡を失」さず、「過度な負担」でないこと

ある人に配慮を行うことで、他の人たちの生活や活動が困難になるほどの影響が生じたり、あまりにも大きな負担を伴う場合は、「合理的」ではないとして、行政機関・事業者はその配慮を断ることができます。その配慮が「過度な負担」かどうかは、以下の観点を考慮しながら、行政機関や事業者が、個別の場合に応じて判断すべきとされています。
 
 ①事務・事業活動への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
 ②実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
 ③費用・負担の程度
 ④事務・事業規模
 ⑤財政・財務状況

ただし、「過重な負担」を理由として配慮を断る場合は、配慮を求めた本人にその理由を説明する義務があります。また、負担が少ない形で他の配慮が実現できないか検討することが望ましいとされています。

たとえば、足が不自由な子どものために、校舎にエレベーターを設置するのは予算がなくて難しい…という場合も少なくないでしょう。ですが、その子が学習する教室が1階になるようにクラス配置を工夫する、といった配慮なら可能かもしれません。お金や人手に限界があるなかでもどんな工夫ができるかを、常に考えることが重要です。

6. 合理的配慮を必要とする当事者の権利

合理的配慮を受けることは、障害のある当事者の方の権利です。ですが、必要な合理的配慮は人や場面によって異なるため、配慮を必要とする本人が個々の場面で意思表明をする必要があります。

行政機関の窓口、学校の先生や職場の上司・同僚、お店や公共交通機関の従業員や責任者などに対し、自分がどんな場面で何に困っていて、どんな配慮を必要としているか具体的に伝えることが大切です。

ただし、言葉が不自由であるなど、様々な理由で、障害のある本人が意思表明をすることが難しい場合もあります。その場合は、家族や介助者など、その人のコミュニケーションを支援する人が、本人のために意思表明をしてもかまいません。

また、家族や介助者がいない場合でも、本人が配慮を必要としていることが明白ならば、周りの人々から、必要な配慮についての提案や対話をすることが望ましいです。
次ページ「7. 合理的配慮をおこなう行政機関・事業者の義務や罰則」


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