合理的配慮を実現するための合意形成プロセス

これまで見てきた通り、具体的な合理的配慮の内容は、配慮を必要とする本人と周りの人々や環境との関係によって多種多様です。お互いを尊重した対話と合意形成を進めていくことが何より大切です。
合理的配慮を実現するための合意形成プロセス
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具体的には、以下の4つのポイントを意識しながら合理的配慮を実施すると良いでしょう。

 1.本人や保護者・介助者から、必要な配慮に関する意思表明をすること
 2.学校や企業、行政などがどんな配慮ができるか検討し、本人と話し合うこと
 3.どんな場面でどんな配慮ができるか、お互いに合意したうえで実施すること
 4.配慮を実施したあとも、定期的にその内容や程度について見直し・改善をすること

「配慮」という言葉だけを聞くと、「してもらうもの」、「してあげるもの」というイメージを抱きがちです。ところが、「合理的配慮」の原語である、Reasonable Accommodation(リーズナブルアコモデーション)には「調整・便宜」という意味合いがあります。社会的障壁の解消をするために、事業所と障害のある当事者で対話を通じた形成をし、調整をしていくことが大切です。

教育における合理的配慮

教育現場における合理的配慮としては、学校などの教育機関は、以下の3つの観点、11の項目に留意して合理的配慮を進めていくことが求められています。

合理的配慮の観点(1)教育内容・方法
 (1)–1 教育内容
  (1)–1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
  (1)–1-2 学習内容の変更・調整
 (1)–2 教育方法
  (1)-2–1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮
  (1)-2–2 学習機会や体験の確保
  (1)–2–3 心理面・健康面の配慮

合理的配慮の観点(2)支援体制
 (2)–1 専門性のある指導体制の整備
 (2)–2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
 (2)-3 災害時の支援体制の整備

合理的配慮の観点(3)施設・整備
 (3)-1 校内環境のバリアフリー化
 (3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
 (3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮

実際に合理的配慮を進めていくにあたっては、子ども・保護者と学校で対話をし、合理的配慮の内容について合意形成をしていくことが大切です。また、学校側では、特別支援教育コーディネーターと呼ばれる職員が中核となり、その子どもの学級担任や、学年主任・教頭・校長といった管理職も巻き込みながら、「校内委員会」を開いて、合理的配慮の内容や方法について話し合うことが推奨されています。

ご家庭と学校の側で合意した合理的配慮の内容については、個別の教育支援計画などの文書に記載し、いつでもお互いが確認や見直しができるように共有すると良いでしょう。個別の教育支援計画に書いてある合理的配慮を根拠として使用することで、受験時に合理的配慮の意思表明をすることにもつながります。

就労における合理的配慮

働く場面における合理的配慮としては、事業者は、採用応募者や従業員に対して、以下の3つの観点から合理的配慮を行うことが求められます。

 1.採用/応募に関する配慮
  例) 募集内容を音声等で提供する、面接に就労移行支援などの支援機関職員等の同席を認める
 2.作業/職場環境への配慮
  例) 図示やメモで業務を分かりやすく整理する、サングラスやイヤホン着用を認める
 3.福利厚生/研修待遇などに関する配慮
  例) 出退勤時刻・休暇・休憩に関して、通院・体調に配慮する。研修に手話通訳を設ける。

働く場面や業務内容に応じて、具体的な配慮の内容は多種多様です。厚生労働省が職場における合理的配慮の指針を発表し、その中に具体例も掲載されているので参考にしてみてください。
■就労移行支援とは?
就労移行支援とは、ビジネスマナーやコミュニケーショントレーニングといった働くための基礎知識や能力を身に着ける職業訓練、職場探しや就職活動の支援など、就職まで一貫してサポートが受けられる福祉サービスです。

就職に不安をかかえている人向けに支援を行っており、就職活動をする際には、適切な合理的配慮の申し出ができるようなサポートもしています。必要に応じて、職員に面接同行をしてもらうことも可能です。

就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
参考:LITALICO仕事ナビ 全国の就労移行支援事業所
https://snabi.jp/ikou
参考: 厚生労働省、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」
https://goo.gl/0mfruJ
働く場面における合理的配慮を考える上で重要なポイントは、配慮を受ける本人が力を発揮し、活き活きと働き続けるためには何が必要か、を考えることです。障害のある人が適切な配慮を受けて活躍することができれば、一緒に働く人々や、雇用主である事業者にとっても働きやすい環境が実現するはずです。
次ページ「 誰もが過ごしやすい社会を目指して」

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