大人の知的発達症(知的障害)について、知的発達症(知的障害)での 仕事上の困りごとや対処法まとめ【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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知的発達症(知的障害)のある方にとって、仕事の選び方や働く中での悩みや困りごとがある場合もあります。今回は知的発達症(知的障害)のある方に向いている仕事や仕事の探し方、困りごとや対処法など仕事に関する情報をまとめました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

知的発達症(知的障害)がある人の中で働いている人はどのくらいいる?

知的発達症(知的障害)とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能が低下しても、知的発達症(知的障害)とは言いません。

内閣府の「令和3版 障害者白書」によると、障害者の雇用者数は17年連続で増えており、 2020年に過去最高の雇用者数となっています。2020年6月1日現在の知的障害者の雇用者数は134,207.0人で、前年より5800人以上増えています。なおこの数値は「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」を0.5人とするなど法律上のカウント方法に基づいています。

2019年度のハローワークを通じた就職件数は、は2018年度を上回る件数となりました。ハローワークへの求職申込件数のうち知的発達症(知的障害)のある人の就職件数は前年度比1.5%減の21,899件、新規求職申込件数は前年度比2.4%増の34,225件となりました。
参考:令和3年障害者白書|内閣府
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r03hakusho/zenbun/h2_04_02_01.html

知的発達症(知的障害)のある人が向いている仕事は?向いていない仕事とは?

知的発達症(知的障害)のある人が向いている仕事

知的発達症(知的障害)のある人の仕事の向き・不向きは障害の程度や個性など個人差があります。単純作業が得意な方もいれば苦手な方もいて、個人の得意・不得意にも影響されます。例えば、職業訓練などを受けてパソコン入力が得意となった方は事務で働いたり、手先が器用という方は衣服を作るミシン業などに就職されたりと、業種や仕事内容もさまざま様々です。

たとえば、クリーニング業やパン・菓子など工場での製造に関する仕事、農作業や商品の分類・箱詰め、工場での組み立て・分解作業、清掃、販売店員など。知的発達症(知的障害)のある方の中には変更や変化が苦手な方もいるので、その場合同じ作業を繰り返す仕事に向いていると言えます。また、変化が苦手な方にとって転勤や人の入れ替わりが少ない環境も働きやすい環境となります。

知的発達症(知的障害)のある人が向いていない仕事

向いていない仕事に関しても得意・不得意など個人差があります。

会話を理解するのに時間がかかる方は営業が難しいかもしれませんし、計算や読み書きが苦手な方は経理職は難しいかもしれません。このことから飲食業や販売業も向いていないと思われるかもしれませんが、明るい性格を生かして接客される方もいらっしゃいますし、接客は難しい場合でもバックヤードで調理や清掃、商品管理などを担当されている方も多くいらっしゃいます。しかしながら、興味がない業務内容だとモチベーションを保つのが難しい可能性もあるので、まずは得意分野や好きなことを探して興味のある仕事を選ぶことも大切です。

知的発達症(知的障害)のある人の仕事の探し方

知的発達症(知的障害)のある人が仕事を探す場合、知的発達症(知的障害)のない人と同じ方法で探す方法もありますが、特に診断名のある人や療育手帳を取得している人は、公的な支援などを受けることも検討してみましょう。

■ハローワーク
障害のある方の専門の相談窓口があり、職員が求職申込みから就職後のアフターケアまで対応してくれますので、まずはハローワークの窓口で知的発達症(知的障害)があることを伝えてみてください。尚、障害者手帳の有無は問われませんので口頭でも可能ですが、相談内容によっては主治医の診断書などが必要となる場合もあります。

窓口でご自身の障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事で不安に感じていることなどの相談をすることができます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。
インターネットがあればハローワークの障害者専用検索で探すこともできますが、検索の仕方が分からない場合はハローワークに足を運んだ方が早いでしょう。
「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。
参考:若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146552.pdf
ハローワークは発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」という制度を設けています。ほかにも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の試行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。

就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職することもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、自治体や、自治体の指定を受けた事業者が、就労移行支援事業所を運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても支援を受けることができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。
また、就労移行支援事業所を探す際には、複数の事業所を掲載した検索サイトなども参考にすることができます。
参考:全国の就労移行支援事業所|LITALICO仕事ナビ
https://snabi.jp/ikou
就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。

その他、就職前に発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センターといった支援施設に行くこともあります。職業訓練や職場対応訓練を実施している施設も多く、興味がある職業の訓練を受けて職場を紹介してもらうという方法もおすすめです。
参考:障害者就業・生活支援センター|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146182.pdf
参考:発達障害者支援センター・一覧|発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1/
参考:障害者雇用対策|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html
■障害者雇用制度を利用する
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得している場合、いわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。

・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる
・障害者職場適応訓練を受けられる 
など、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。

ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからと言って必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。
参考:平成30年障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000533049.pdf
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