ASD(自閉スペクトラム症)の子どもへの接し方は?子育ての困難と対処法、ペアトレ・レスパイトの活用まで【専門家監修】
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにはどのように接するべきでしょうか?こだわりが多い、コミュニケーションが苦手、など様々な特性がある子どもの子育てにおいては不安に感じることも多いのではないでしょうか。この記事では、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもを育てる時に生じることの多い困りごとと、その対処法をご紹介します。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ASD(自閉スペクトラム症)とは
この記事で分かること
- ASD(自閉スペクトラム症)の2大特徴(社会的コミュニケーションの困難・反復行動)と、育て方や愛情不足が原因ではないという医学的事実
- 「短い言葉で伝える」「視覚的な情報を活用する」など、ASDの子どもがスムーズに行動できるための4つの基本的な接し方
- 感覚過敏やパニック、こだわりの強さといった「7つの代表的な困りごと」を緩和するための、具体的な環境調整と対処法
- 「感情的に怒らない」ためのコツと、ペアレントトレーニングやレスパイトケアなど、保護者自身の心と身体を守るための支援制度と相談先
以前は「自閉症」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。
ASD(自閉スペクトラム症)の根本的な治療方法は現在のところありませんが、周りの環境を整えたり、接し方を工夫したりすることで、症状や困りごとを緩和できる場合があります。ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの子育てにおいてもその特性に応じた工夫が必要です。
ASD(自閉スペクトラム症)とは?専門機関や診断基準を解説【専門家監修】
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもに接するときの4つの基本
1. ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、自分とは物事の感じ方が違うことを理解する
そのため、「子どもは、自分とは違う感じ方、受け取り方をしているかもしれない」ということを意識し理解することが重要です。「このくらい言わなくてもわかるだろう」「この程度の音なら我慢できるはず」と思わずに、子どもがどう感じているか、何に困っているかを想像して接するようにしましょう。
2. 本人がわかりやすい方法で具体的に
子どもにとってわかりやすい指示や対話の方法は一人ひとりの特性によって違います。わかりやすい指示の例を以下にご紹介します。
◇指示する前に注意を引く
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、興味のある活動に没頭しやすく、そうした活動をしているときに声をかけても指示が全く入らないこともあります。子どもに近づき視野に入って、こちらに注意を向けてから指示するようにしましょう。
◇短い言葉で具体的に指示する
「椅子に座って」「靴を履いて」など、短い言葉で具体的に伝えます。状況や理由などの説明をしたり、一度にあれこれ指示をしたりするとわかりにくくなってしまいます。シンプルなステップに分け、一つが終わってから次の指示をします。
◇視覚的な方法で説明する
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、耳で聞いた情報を理解することが苦手な傾向にあるため、絵や写真といった視覚的な情報を用いて伝えることで、理解しやすくなることが多いです。
言葉での指示や説明に加えて、絵や写真を補助的に使用すると、視覚的に理解しやすくなり、言葉でのコミュニケーションが苦手な子どもにとっても、何をして欲しいのかがわかりやすくなります。予定や約束ごとなども、絵にして伝えると、理解しやすくなります。
3. ほめることで「できる」を増やしていく
◇スモールステップで「できた」を増やす
苦手なことはいくつかのステップに分け、少しずつ教えていく方法が効果的です。必要な手順を細かく分解し、分かりやすい方法で一つひとつ説明します。一つができたら思いっきりほめたりごほうびをあげたりすることで、「できたら嬉しい」「自分にもできる」という成功体験をたくさん味わってもらうことがとても重要です。
◇のぞましい行動をほめる
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは相手の言葉の意図をくみ取ることが難しい場合があります。そのため叱るよりも、「してはいけない」ことはできるだけスルーし、「してほしい」ことをしたときにストレートな表現でほめるほうが効果的な場合もあります。うまくいったことや頑張ったことがあれば、どんな小さなことでも思い切りほめます。同じことでも何度もほめることで「よい行動」が印象づけられ、定着しやすくなります。
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4. 不安な気持ちに寄り添う
◇見通しを持たせて安心させる
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、これから何をするか予測できると安心して行動できることが多いため、先の見通しを立てられるように予告することが重要です。絵や写真など子どもが理解しやすい方法で、かつ子どもが安心できるタイミングで伝えるようにしましょう。伝えるタイミングは直前だとパニックの原因になりますし、早すぎると意味がなくなったり、他のことが手に付かなくなったりすることもあります。
◇不安からくる行動を理解する
匂いを嗅いだり、くるくるまわったり、ジャンプを続けたり…。特徴的な行動やくせが見られることがありますが、その行動は不安や緊張をやわらげるためにしていることもあります。無理に止めるといっそう落ち着けなくなる場合もあります。危険な行動や人に大きな迷惑がかかる行動でなければ、ある程度は容認することも大切です。
また、年齢とともに、深呼吸、散歩、音楽を聴く、ヨガをするなど、不安に対する適切な対処法を教えていくとよいでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、何もすることがないと時間をもてあまして不安になることもあります。病院の待合室や電車の中などで手持ち無沙汰を解消できるよう、絵の描けるホワイトボードやパズルなど、好きな遊び、おもちゃを準備しておくと落ち着いて過ごせます。
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ASD(自閉スペクトラム症)の特性による7つの困難とその対処法
1. あいまいなことを理解するのが苦手
一般的に「当たり前」「常識」ととらえられていることを理解するのが難しい場合も多く、人の領域と自分の領域の境界線を理解することが苦手な場合、過度に接近してしまったり、反対に距離をとり過ぎたりしてしまうことがあります。
また、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、表情や態度から他者の気持ちを察知することが難しい傾向があります。そのため、「周りの空気を読んで言動を調整する」ことが難しく、静かにしなければならない場面で喋り続けてしまったり、怒られている最中でも面白いことがあれば笑ってしまったりすることもあります。
【対処法】
なによりも大切なのが、指示を分かりやすく伝えることです。慣用句や代名詞、冗談などを理解するのが困難に感じる場合が多いため、何をしてほしいか、どのように行動すべきかを明確に伝えましょう。
例えば、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、静かにしなければいけない公共の場で大きな声で喋り続けてしまうことがありますが、「図書館では静かに本を読みます」と具体的に言われた場合は指示に従うことができることが多いです。
また、命令形で指示を出されると、怒られているのではないかと感じ、不安に思う子もいます。たとえば「はやくお風呂に入りなさい」という言葉を提案的な意味合いで言ったとしても、本人は怒られているのだと感じてしまうこともあります。「5分後にはお風呂に入リましょう」などと、できるだけ本人に誤解を与えない言葉を使って会話をするように心がけましょう。
2. 物事に強いこだわりを持っている
【対処法】
「ルールは例外的には破られることもある」ということを理解してもらうためには、周囲の人のことを信頼できる環境が必要です。周囲の人との信頼関係を築くことで、「例外」の変化に対して安心して対応できるようにしていきましょう。
3. 感覚過敏がある
感覚過敏の症状はさまざまですが、よく見られる症状として、特定の音を嫌がったり、触られるのを嫌がったり、特定のにおいを過度に嫌がったり、逆に好んだりするなどが挙げられます。赤ちゃんの頃に抱っこを嫌がったり、手をつなぐと拒否したりする行動が見られる場合もありますが、このような行動は、触覚過敏によるものである可能性があります。また、1つの感覚だけでなく、複数の感覚が過敏なこともあります。
【対処法】
上記のような行動がみられた時には、感覚過敏である可能性があることをまず認識しましょう。その上で、適切な環境調整を行ったり、不快な刺激を回避するためのツールを用いたりするとよいでしょう。例えば聴覚過敏であればイヤーマフなどで音を遮断できるようにして、不快な刺激を減らしましょう。
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4. コミュニケーションを取ることを苦手に感じる
【対処法】
口頭でのコミュニケーションを苦手としている場合でも、素敵な表現を用いた文章や論理的な文章を書くことができる場合もあります。言葉にすることが苦手な子どもも多いので、絵カードや、ICT機器など、言葉の代替となる表現手段を用意するのもよいでしょう。
言葉をあまり発さないからと言って伝えたいことがないわけではありません。親が子どもの感情によくアンテナを張り、気持ちの変化などに気付いてあげるようにしましょう。
5. 突然パニックを起こしてしまう
【対処法】
パニックが起きたらおさまるまでしばらく見守りましょう。頭を壁に激しくぶつけるなど危険な行動が見られる場合は壁にクッションを当てるなどしてけがをしないようにします。
落ち着けるスペースなどがある場合は、そこに連れて行きます。しばらくして落ち着いたらおもちゃなど子どもの好きな物を出して、気分が切り替えられるようにします。
パニックを起こす時は、なにか原因があるかもしれません。落ち着いたら「なぜパニックになってしまったんだろう」と本人の気持ちを探り、日頃から本人をよく観察し、環境調整をするように心がけましょう。
6. 困っても自分で助けを求めることが困難
【対処法】
困ったことや、できないことがあったときに、子ども自身が自分でサインを出して助けを求められるようになることがとても大切です。まずは子どもに「いらいらする」「どうしたらいいのかわからない」「涙が出る」など、自分の感覚や感情がどのような状態であると「困っている状況」なのかを教えます。
そして困った状況になったら誰に助けを求めればいいかを教えます。「どうしたらいいのですか?」「わからないので教えてください」など、具体的にどのように言えばよいかも説明するとよいでしょう。
7. 時間的な見通しを持つのが苦手
【対処法】
◇時間を把握するためには?
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中には時間の感覚を理解することに困難さを持っている場合があります。ですから1日のスケジュールを見やすいところに貼り、何時に何をするのかを目で見て確認できるようにします。慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れてしまえば自分から行動することができるようになります。
時計が読める子どもには、時計を使い説明すると、本人も理解しやすくなります。個人差があるので本人が理解しやすい方法を選んでください。
◇夢中になるとやめることができない
夢中になっている時に何かをやめさせるのは難しいですが、何かを始める前に「始める時間」と「終わる時間」を決めておきましょう。そうすると終わりの時間がはっきりしていますので、やめさせる時にパニックになりづらくなります。視覚的に残り時間が表示されるタイマーなどを使うとよいでしょう。
◇睡眠障害を軽減させるには?
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中には睡眠障害が併存する場合もあります。生活リズムが崩れている場合、急に戻すことは家族や本人にも負担がかかってしまいますので、焦らずにゆっくり正常に戻していくことが大切です。昼間に沢山遊ばせる、体を使った遊びをするなどし、夜になったら眠たくなるように生活のリズムを整えていきましょう。
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ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもに接する際に注意するべきこと
こちらが感情的になると、いつもと違うできごとに不安を感じ、混乱させてしまい逆効果になってしまいます。何かを伝えたい時は、冷静に短い言葉で簡潔に伝えることを心がけましょう。できるだけ否定的な言葉は使わず、「○○してほしい」「○○しましょう」と言い換えるようにしましょう。
感情的に怒りたくなってしまうこともあるかと思いますが、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにとっては、どうして怒られているのかを理解することが難しく、パニックになってしまう場合もあります。ゆっくり感情的にならず説明すると、子どもにとっても理解しやすくなります。
◇好きな行動を始めたら途中で邪魔しない
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは1つのことに夢中になると、周りが見えず没頭する傾向があります。夢中になっている時に邪魔をしてしまうと、何が起こったか理解ができずにパニックになってしまいます。パニックになると落ち着くまでに時間がかかりますので、本人も周りの人も体力を消耗してしまいます。その行動をやめてほしい時は、やめる時間をあらかじめ子どもと決めておくか、終わったタイミングで注意するようにしましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもと接するときは、上記のようなことに少し気をつけるとお互いの負担を軽減することができるかもしれません。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの子育てに悩んだらサポートを
◇専門機関に相談する
地域の子育て支援センターや児童発達支援センター、児童相談所などでは、子どものことや子育てについて、気軽に相談ができます。必要があれば医療機関や療育施設などの専門家を紹介してもらえます。また児童精神科や小児神経科に相談したり、療育を受けることで、子どもの特性がわかり、対処法を教えてもらえることもあります。
◇親の会に参加する
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの家族を対象とした家族会やサポートグループが全国にあります。親の会は障害のある子どもを持つ親同士がつながり、障害について学んだり情報交換をしていく場所です。また、発達ナビのQ&Aコーナーやコミュニティでも、子育ての悩みを相談することができます。同じ経験をした人の話を聞いたり、具体的なアドバイスを聞いたりすれば、少しでも見通しがもてるようになるのではないでしょうか。誰かにつらい気持ちを話すだけでも、気持ちが楽になるかもしれません。
◇ペアレントトレーニングを受ける
ペアレントトレーニングとは、親が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、保護者向けのプログラムです。子どもをのばすほめ方、環境調整の仕方、指示の出し方、行動の教え方などを具体的に学べます。
◇レスパイトケアで意識的に休息をとる
がんばりすぎて、余裕がなくなっているときは、リフレッシュが必要です。育児を軽減するサポートを利用するなどして、自分の時間をつくりましょう。児童発達支援、放課後等デイサービスの中には預かり型の支援サービスもあります。また、障害児を受け入れているファミリーサポートもあります。一時的預かりのサービスを行っている地域もあります。地域の福祉相談窓口などで相談してみてください。
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まとめ
特に、パニックなどの行動が起こる背景には、何らかのパターンがあり、理由があることも多いです。その理由とパターンをしっかり把握し、適切に対処していくことができれば改善していくことができるかもしれません。
子育てをしていく中で、目指したいのは子どもに合ったかかわり方を見つけ、子どもが自立した生活ができるようにサポートをすることです。スモールステップで成功体験を積みながら、子どもの特性に親子で向き合っていきましょう。
話し始めると、一方的にたくさんしゃべり続けてしまう…そんなときの工夫は?
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